夜の部は、満員御礼が出るくらいで、奏者も熱が入ったでしょう。
とても良いコンサートになりました。
長年やっていた生徒が良い結果、雰囲気で出来たのが大成功で嬉しかった。
また、ベテランの方々も良く勉強してコンサートに臨んで結果を出したのが、良いコンサートを作った原因です。
昼に続いて夜は新しい伴奏者がそれぞれ素晴らしい持ち味を出してくれて、演奏に花を添えてくれました。
今回は、ぜひ、伴奏者のことにも触れさせてください。
ふじいさんは、姿勢の良いピアノでシューマンの薄光の射す美しい音楽を描写していました。
きちっとしたタッチ、整合性のある和音の響き具合、フレーズの立体感、音楽は几帳面で芯のある真っ直ぐなもので清々しいほどでした。いそがいさんとの合わせも3回のレッスンで良くアンサンブルしてくれました。
すずきさんは、今回のよださんの大成功を引き出した大きな原因を作りましたね。
豪快なピアノだと思います。特にターンキポーンキのリズム感は素晴らしかった。
ねむの木の神秘的な音楽も素晴らしかった。全体に安心できる伴奏で、よださんとの息が
ぴったりでした。
さかいださんのピアノは棘がなくて、それでいてしっかりと作者の音楽を表せていると思いました。
柔らかいタッチ、滑らかで無駄のないフレージングがあります。
声楽家に余計な心配や苛立ちを与えないプロフェッショナルなものです。
安心して任せられる良い仕事をする伴奏者ですね。
さいとうさんのピアノは工夫が凝らされたピアノでした。
ドイツ的というのか質実剛健な音楽だったと思います。
魔王の緊張感、テンションは大したものだ、と感心しました。
結果的なことですが、はやしださんとの合わせの回数がもう一回あれば、更に良かったのだと思いました。
なとりさんのプーランクは素晴らしかったです。
彼女のピアノは明快にスタイルが感じられるものでした。
早いパッセージになったときの勢いと、テンションの高さが魅力的でした。
基礎的なテクニックは素晴らしいものがありますので、歌手との合わせの経験を更に積んでいただければ鬼に金棒と思いました。
ふくまさんは、今回の本番はとても素晴らしかった。
確実性とテンションの高さが今までになく良かったです。
回数が多くて人数が多いので、テンションを保つのが大変だけど、これからも頑張ってください。
確実に身に着いて行くと思います。
短いとはいえ、プーランクの歌曲集をまとめて歌うのは大変だったと思います。
プーランクの歌曲というのは、時間にすると短いけど世界が濃密ですね。重い。
レッスンでは発声のことを数ヶ月続けたわけだけど、一番良かったのは中低音域が上ずらないで出せるようになっていたこと。
La reine du coeurとLes anges musiciensがとても良かった。ただ最後のLune d’avrilは惜しかったな。
早めの曲は発声の難しさ、発音の難しさがあったけど、いっそのこともっと早くしても良いと感じました。
そのことで、曲集全体の緊張感がもっと増したと思いました。
発声は未解決の部分が残っているので、やや響きが不安定な部分がありました。
お腹のブレス、そして喉の準備、体の支え。
見た目的には首から上、顔が少し不安定だったのがそのまま響きの不安定に繋がったと思います。
首をしっかり支えて顔がぐらぐらしないで、お腹でブレス、という身体全体の使い方、体のしっかり感を覚えて欲しいです。
それと下顎で発音しないこと。
ところで彼女の暖色系の民族衣装風コーディネートはこの曲集にぴったりで良かった。
とてもフランス的なセンスで強く印象に残りました。
これからもピアノと歌を両方続けてください。
恐らく理想的な音楽生活になるでしょう。
素晴らしかったですね。
彼のあれほどの集中力。
日本語の内容がまったく無駄なく音楽と表情に表れていた。
感心しました。
彼の心情なのか、彼の持っている何かにぴったりとはまったのでしょう。
レッスンで教えていた発声、特に中低音域の喉に潜る発声は未解決だけど、そんな小さいことはどうでも良い、と思わせる程の音楽的な集中力、純粋な姿勢が冴え渡っていました。
他に言うべきことがありません。
おめでとうございます。ブラボーでした!
今回の美点をこれからの核にしてください。
彼女は本当に心から明るい。
ステージに出てくると、何かふわっと明るい光が射すようなものを持っています。
大輪の花というのはないですが、慎ましいけども周りを照らしてくれるものがありますね。
声は本当に健康的な喉です。このところあまり発声のことを言わないで自由にやってもらいました。
歌に対する素直な自然なものを、彼女が集中できる自然さを大切にして欲しかったからです。
そういう意味で今回のプログラムは大成功だったと思います。
もしかして彼女には不満があるかもしれないけど、それで良いのです。
とにかく安心して全曲聴けましたし、プッチーニの重いアリアも立派に歌いきりました。
思わず手に汗を握る感覚も覚えたから、アリアとしても成功でした。
これから少しずつ自由に出してきた声を、コントロールすることを覚えて行きたいなと思いました。
ベッリーニやドニゼッティの歌曲、或いは宗教曲も良いでしょう。
これからの彼女には更に期待が高まります。
段々難しくなってくると思うけど、嫌にならないで末永く続けてほしいと思っています。
本番は驚くほど堂々と自信すら感じさせるぐらい、落ち着いて見えましたし、実際落ち着いた歌唱でした。
心配なところがまったくなかったし、シューマンの美しい歌曲の片鱗が良く出せていました。
少ないレッスン回数と合わせて、新しい伴奏者だったこと、など、このところ続けて本番にかけた曲とはいえ本当に良く歌えました。
声はこの曲集の性格もありますが、明らかにメゾ系になりますね。
これから少しメゾを意識して練習していったら良い結果になるのではないかな、と思いました。
どうでしょう?結局今回くらいの落ち着きや集中力を出して歌うためには、どれくらいの勉強と経験が必要か?
そのことを改めて思い起こして、これからの糧と目標、あるいは勉強の指針にしてほしいです。
そのために、もう一度選曲を良く考えなければいけないな、と指導する側としては痛感しました。
元々良い声を持っている人です。
これからも末永く続けてください。
今回とにかくぎりぎりになって、このオペレッタをこちらで選んで彼女に与えて、彼女は見事に答えてくれて、これ以上ないくらい嬉しかった。
慣れないフランス語、ちょっとひねりのある旋律、そして本番の動き。
コーラスとのアンサンブル。
全体を通して歌うことを急いでやったために、ほとんど発声のことは手付かずだったけど、逆にそれが良かったのか?
本番では、その声が一番良い状態で出せました。
恐らく普通の歌曲を棒立ちで歌うのよりも楽だったのではないかな?
ある意味でリラックス出来たのだと思いました。
逆に言えば歌曲も同じ気持ちで、自由にシチュエーションを考えて歌えれば上手く行くと思います。
いかに、歌の意味が大切か?ということではないですか。
声のことだけになってしまうことで、上がってコチコチになってしまうのでしょう。
これはこちら側の反省も含めて感じたことでした。
そして彼女には、清純な初心な雰囲気は大切にして欲しいですね。
これからも、積極的に挑戦してください。
きっと変わっていく自分が見付かると思います。
レッスンでは落ち着いて練習して、バリトンらしさが出てきたけど、ハイテンションになって本番で歌うと、やはりテノールらしさが
時として顔を出して来ました。
私自身もそうなので、良く分かるのだけど、バリトンの難しさはその辺にあります。
テンションが高すぎると、喉が上がるのですね。
テンションを押さえ込んで、適度な所で悠々と、ゆったりと歌う感覚を持たないといけません。
これからは様子を見て、選曲を色々考えることも大切なのだと思いました。
演奏としては冬の旅2曲は安心して聴けて、何も言うことは有りません。
特に「道しるべ」の懸案だった高音が綺麗にチェンジして上手く入って、これはブラボーでした。
「魔王」は出だしが素晴らしかった。
ただ、ちょっとしたことでピアニストとの間合いが悪くなってしまいましたね。
歌手はとても繊細な存在ですから、ピアニストとの間合いが持てないと一気に崩れます。
特にこういう曲は、気をつけないといけませんね。
その辺り、今回伴奏が初めての方であったこと、彼女の個性、合わせの回数など、様々な要素が絡んできます。
そういう意味で、私の責任を感じました。
逆に言えば、歌に関してあまりナーバスに考えずにこれからも楽しんで、気楽にやって欲しいです。
一言。とても良かったです。
総合的な印象です。
一番好かったのが、「祈りながら」「秋」も「捨てられた花」も安心して聞けました。
鋭い、強い中高音も思い切り出せて、胸がスカットした。
最後の「我らの愛」は少しはらはらして見ていました。
心の中で頑張れ!と思い、ついつい私の手がフレージングしていました。笑
単純素朴に、とつとつとフォーレの初期の歌曲を歌ってもらったけど、時間をかけて熟成させると彼女は良いものを出してくれるのだなと教える側としては、今更ながら気づきました。
急いではいけないのですね。
今回はいつもの不安そうな表情が影を潜めて、むしろ素敵な雰囲気でフォーレの地味だけどシックで味わい深い世界を出してくれました。
元々美声の持ち主だけど、メゾということで訓練して、良い結果が出せました。
高音もきっちりメゾらしい太味のある良い高音が出せて大成功でした。
本当に良く勉強してくれました。
これからも急がず焦らず、確実にやって行きましょう。
ところでスタイリストさんがメークしたとのこと。やはりそういうビジュアルな面も大切ですね。
本人自身も気分が変わったのが分かる、というくらいだそうです。
総合芸術ですね。
本番ではその素晴らしい極高音は安定して出せていました。
まるで鳥のさえずりのようで、改めて惚れ惚れと聞かせてもらいました。
可愛いお人形さん、人工的なフィギュアが歌いだすような不思議な感じが、コロラチューラのある種の魅力なのでしょう。
ただ、レッスン時にしばしば見せてくれた、切れ味鋭い勢いが少し弱っていたような感じがしました。
ちょっとした声のひっくり返りみたいなものが気になったのでしょうか。
さすがに高音ですから、ちょっとしたことでナーバスになるのも無理からぬことだと思います。
譜面を見ることは、ぎりぎりになって決めましたが、その辺りで中途半端にならなかったか?
あるいは、上がってしまったかな?
モーツアルトの中低音がなかなか良い響きになっていたのが、今後の彼女の中低音活性化への扉になるかな?
と感じさせてくれました。
コロラチューラの部分と、中音域の充実を図っていくのはとても難しい仕事だけど、難しければ難しいだけ
何とかしていきたいな、と指導欲は出ますね。
彼女も本当に良く頑張る人ですね。
プーランクのわけの分からない、と嘆いていた作品を見事に表現にまで高めて本番に臨んでくれました。
私の教えた短い歴史の中では、プーランクの小さな歌曲をこれほどに歌えた人を見たことがありません。
努力家だけど、いつどこでどうやって練習するのか?しているのか?があまり分からない人で、不思議でもあります。
こちらも難しいものを与えると、それに喰らい付いて来るのです。
普通プーランクなんかの難しいものを与えると嫌がるものだけど、彼女の良いところは分からなくても何でもやってみようという
挑戦の心ですね。
何でも貪欲に自分のものにしょう、どんなものでも絶対に自分にとって良いものだ、という確信があるか、のようです。
教えるものとして、そのことを生徒から感じれば、それを意気に感じない指導者がいるでしょうか?
指導とか何とか言っても、とどのつまりは歌手との「共同作業」だと思っています。私は。
彼女の成功があるとすれば、きっとそれが上手く行っているということでしょう。
アリアのIl veille pres de moiの高音2点bの声は今まで聞いた彼女の最高の声でした。
オペラのアリアの醍醐味ここにありですね。
好かったです。おめでとう。