SM
10月28日のプログラムを全曲通しました。声のテーマに関しては、ほぼ問題ない状態でした。
アーンの3曲、「クロリスに」は、テンポ設定は良いのですが、中間部以降でテンポが前のめりになって、落ち着きがないです。
この曲は、地面をしっかり踏みしめて最後まで歩き通す感じが良いので、さびに入って先へ先へと云ってしまうと、落ち着かない音楽になります。
2曲目「リラの木のロシニョル」これもテンポ設定は良いですが、歌のフレーズ感を作り出す歌詞の語感が弱いようです。
「春」は声のことやリズムのソルフェージュも解決して来たので、思い切ってテンポを上げました。
最後まで、一気呵成に歌い上げてください。
アリア「キジバトは逃げ去った」は、レシタティーヴォ部分のフレーズの間合いを充分取ること、ゆっくり言う所などを決めました。
アリア部は、高音に向かう盛り上がる所で、少しアッチェレ気味にすると良いです。
再現部の歌い方は、1番と換えて、明るく速めのテンポにして歌う方が、1番の暗さと対照的になって、良い印象を与えると思います。
日本歌曲、林光の「私が歌う理由」は、とても良い表現になりました。言葉が明快でその意味と声とのつながりが理解出来るようになりました。
「子猫」のコが口が開かないので、少しカに聞こえる点を注意です。
「ねがい」レッスンでは練習しませんでしたが、出だしのテンポと後半のテンポは意識して違えても良いでしょう。
出だしはおおむねゆっくり目にして、後半速くするなどです。あるいは、1番2番3番とそれぞれの内容に応じて換えてみるのも良いでしょう。
武満の「歌うだけ」は、地声を気にしないでしっかり声を出して歌うことです。
それから、フレーズの締めくくりは、しっかり伸ばしてブレスをなるべく短いタイミングで吸って、次のフレーズにつなぐように歌って下さい。
この曲に限らず、どの曲も基本はフレーズの終わりを短くしないことです。
AC
彼女も10月28日のプログラムの伴奏付き通しけいこでした。
グルックのオルフェのアリアは、高音チェンジ前で細く喉を締めないで太く拡げるように、と指示しました。
ベッリーニの二曲も、指示しませんでしたが、同じことです。
Vaga lunaは、テンポをかなりゆったりにしてもらいました。
発声としては、もっと軟口蓋を上げた、あくびの状態がブレスで確立してほしいです。これは、発声全般に指摘しておきます。
ミニヨンのアリアは、音楽の強弱と間合いをもっと楽譜に沿って、音楽が人を引き込む感動を、積極的に意識して表現してほしいことでした。
ミニヨンが語り歌う場面ですから、それを聴いている人が、思わずミニヨンに引き寄せられてしまうように、楽譜に書いてある強弱の差を明快に出して歌って下さい。
間合いも、大事です。C’est la C’est la que je voudrais vivreの繰り返す合間は、休符がないですが、音符の長さを少し長めに取って、間合いを取った方が良いでしょう。
また、この曲の最高音で、もっとも人を感動に引きこむ音程のC’est laのlaの発声にはこだわってください。
締まらない発声、喉が良く開いた発声です。
次のAimer amier et mourirのAiは、狭いEですが、ここは高音なので、喉を締めないように開けてください。
次のC’est la que je voudrais vivreは、切なく弱く、そして c’est la oui、c’est laのOuiは、明快に云って下さい。
声のチェンジがあるので、不安定なら下の声に換えても良いです。
日本歌曲の「野薔薇」は、ピアノのテンポ調整に時間がかかりましたが、声はとても良かったです。
喉が上がらないポジションで、きれいに響きが出せていました。案外、テンポが速ければ良いわけではなく、ゆっくり目の方がブレスの準備がし易いかもしれません。
「さくら横丁」は、彼女固有の声によってでも、教えたことを忠実に守って歌ってくれて、表現力のある歌になっていました。
最後の半音階のメリスマですが、ブレスが厳しいので、ブレスを入れてもらいました。
その分、ブレス前の「花でも見よ~」は充分伸ばしておいて、次のブレス後のメリスマは、ゆったり始めて徐々に速くなり、最後の3つくらいでRitして終わるようにして下さい。
要するにブレスを入れても表現が成り立つような歌にすれば良いことだと思います。
AS
発声練習の声は全体にスリムになってソプラノ傾向の声になりました。また高音のチェンジ後も、うまくチェンジして高音の発声に対応しつつある、という印象です。
曲はアーン2曲ととショーソンから3曲いずれも中声~低声用のキーですが、特にアーンの2曲は低すぎると思います。バスかアルトが歌うべきでしょう。
ただ、かなり低音でも歌える声を持っているので、絶対無理、と云うこともないです。
今回、フランス語の読み方や文法などをご自身で勉強して来られてことは大きいですが、また発音記号の読み方に勘違いや誤読が散見されました。
yとu の違いはくれぐれも間違えないようにしてください。
ユとウの違いです。後者は深く発音します。
また、前者は良く使うTuなどですが、要するに単語のスペルと、発音記号とを入れ替えて間違わないようにして下さい。
発音記号の場合はUがウになりますが、単語のスペルはUがyに読むことが多いのです。
それから、lune のように語尾にeが来る場合、例外はありますが、ほとんどの場合が読み方があいまいな「う」のような感じなります。
深い「ウ」ではなく、軽く浅いアに近い感じのうです。
これは、フランス語の発音にかなり出て来ますので、くれぐれもエと読まないように注意して下さい。
その他動詞の変化によっては、判らないものがありますので、実際の発音に当たってみてください。
現在ネットでも、発音が聴けるサイトがあったと思います。
それから、歌の場合の発音は、喋り言葉と違う場合が、フランス語でも多いです。
シャンソンと違ってクラシックの場合は、Rの発音以外は、絶対的な基準や指針が現在ないので、流派的な要素があるのかもしれませんし、昔の歌手と現在とでは違う場合もあるようです。
例えばLesの発音ですが、辞書では狭いエのeですが、歌の場合は狭くしない方が良いと思います。
普通くらいにエが良いです。
それからUn などのoeの鼻母音はEに統一してしまって下さい。要するに鼻母音は3種類で、A,o,eの3種類です。
これらのことは、フランス人でもどっちが正しいではなく、どちらも正しいのです。
歌と云っても、クラシックの声楽の場合、母音の種類をあまり多く分類するよりシンプルにした方が良いわけです。
それは、その方が声の通りが良かったり、判り易いことが多い、という先人の知恵ではないかと思います。
論理や理屈よりも、経験と実践が勝るのが演奏の世界だと思います。
HN
しばらく間が空きましたが、発声練習の声はリラックス出来て良い声でした。
ただ、まだ声のチェンジの課題があって、これが難しい所です。
あともう少し、と云う感じです。
ベッリーニからMa rendi pur contentoとMalinconiaで始めました。
これも今までと同様ですが、音程の跳躍で、2点E~Fあたりに飛ぶところでつまずきます。
力まない、少し引く、という対処も良いのですが、確立が五分五分という感じになってしまいます。
横で歌う所を見ていると、まだブレス時にお腹がついていないように見えました。
お腹を意識したブレスにしてもらうと、声が変わります。
要するに喉が安定するのです。
ブレス時に横隔膜が正しく働くと、喉頭が適度に下がって安定します。
このことが、高音発声になった時に大切になって来ますので、改めてお腹を意識したブレスを見直してみてください。
実際の歌では、音程が跳躍する際に、下顎を降ろさないで口の形を変えないようにして見たほうが、喉が安定するでしょう。
そのことは、特にグノーのAve Mariaで痛感しました。
やはりチェンジ後の2点Fiや、最高音近辺の2点Aですら、口先をあまり開けないで発声する方が、喉が上がらずに良い結果につながりました。
単に口を開けないというよりも、積極的に下顎を下唇で抑えつけて、動かないようにして発声することでした。
あるいは、顎の部分を少し引くようにして保持します。Nunc et in hora では、Nunc は、読めば判りますが、最高音のHoまでが、全部狭母音になります。これを逆に利用して、Nuncで鼻腔の響きを出しておけば、あとは口先を変えないで、下顎の状態を固定して、一気に2点AのHoraに入ってしまえば良いのです。