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発声練習は、下降形で始めた後、上向形でドミソ、ドドソミド、そしてドレミファソという具合に練習しました。
発声練習を見ていると、喉を上げないように姿勢と顎の降ろし具合に注意しながら響きは上に導く、という工夫をしている様子が良く見て取れました。
ただ発声練習で出来つつあることが、実際の歌唱では思う通りにはなっていないようです。
それは特に下顎の使い方ですが、引き過ぎていること、動かさないことにこだわり過ぎていることの2点です。
結果的に、固まってしまっているように見えます。
確かに練習方法として、下顎を降ろさないで発音することの効果はあります。
下顎を降ろさないで我慢する代わりに、軟口蓋を上げることで響き(息)の通り道が出来て、す~っと楽に歌える感覚を養うことにあります。
もしかすると、そういうイメージ自体が違うものになってしまっているかもしれません。
軟口蓋を上げて息の通り道が出来た感覚の声と言うのは、声帯が少し開いた柔らかい声です。
100%声になるのではなく、90%にします。
息も自然に抜けるために、声の密度は少し落ちますが、非常に歌い易く音程が良くなると思います。
最終的にはもっと密な声の響きでの歌い方は出来ますが、息の流れと声との自然な関係を体得するには、この方法が一番良いと思っています。
最初からスピントな響きで完全に歌おうとすると、どうしても無理な喉の使い方になってしまうからです。
また、出来たとしても喉が温まっていないと、上手く行きません。
1曲目のシューベルト「冬の旅」から「幻覚」は、1点Cから始まる音域の声が不安定なため、音程も全体に♭気味に感じました。
結論から云えば、声のポジションが高すぎて、不安定になっています。
響きを高くとか、軟口蓋を上げるということは、元の声の出方がまずあった上で、そうあるべき、という意味に取ってください。
元の声の出方は、喉が楽に上がらないポジションで出ます。
みぞおちあたりから声が出だす感覚、あるいはこの音域ならば、喉が上がらないようにEinで始まる最初の1点Cは、Aの母音を良く下顎を降ろすように発音すべきでしょう。
ただ、下顎を良く降ろすことと同時に、あるいはそれ以前に、ブレスの時点で軟口蓋が良く上がっているかどうか?が大事です。
そして、声の出し始めを、喉ではなく、軟口蓋辺りからで始める意識も大切です。
このことは、他の曲でもありましたが、いきなり喉を合わせる、という感覚ではなく、声を出し始める刹那に、一瞬息が先に出て、昇った息が軟口蓋辺りから声になる、というイメージで出だすと上手く行くでしょう。
これは決して息漏れを意識して出すということではなく、声の出始め、アインザッツを雑音なしに、あるいは音程の迷いなしに綺麗に行うための、イメージトレーニングととらえてください。
そのことの例として、練習したのは、2曲目の「幻の太陽」の、中間で出て来るAch meine sonnenのAch でGですね。
ここで喉で押してしまうために、音がぶらさがってしまいます。
息を吐く練習をしました。
息を軟口蓋に強めに当てると、気道が開いていれば、共鳴感のある空気の音がします。
この時の状態を覚えておいて、そのまま声を出します。
声を出す瞬間、息が喉から出て軟口蓋に到達した瞬間に声になる、というイメージで歌いだしてもらいました。
声の響きばかりに意識を集中させるあまり、喉を締めてしまい、結果的に声の出し始めが上手く行かない、と云うことが多いのですが、
こういう場合には、息を微妙に吐いてから軟口蓋辺りで声が出だす、というちょっとした時間差イメージを意識すると上手く行く場合があります。
最後に歌った「辻音楽師」
ジプシー的な音楽に乗った不吉な予告のようなイメージ。
少し奇をてらっているかもしれませんが、もう少し声をべったりと歌う方法もありかな、と思います。
ビブラートの無い、真っすぐな声で子音を強調しないで、メロディラインだけがどろどろと続くような、不吉な雰囲気を、あえて全面に押し出すのです。
普通に、あるいは正統的な歌い方がどこにあるのか?私は正解というものを知りませんが、音楽が持っている雰囲気を直截に歌にした方が良い曲だと思います。