SY

フォーレの「一番優しい道」から。
ソルフェージュと発音は、特に問題ありませんでした。
テンポが二分音符で58なので、1小節単位2拍子で軽やかに歩く感じを持つと良いでしょう。
それから基本的には4小節単位のフレーズなので、一息で歌うように心がけてください。
音程の良い声で、とてもきれいな声で歌えていました。

「夕べ」
基本的には問題ない演奏レベルですが、細かい手直しをしました。
より洗練された演奏を目指すためです。
出だしのVoiciは、実際はVwaという発音記号ですが、歌の場合強調する必要があるので、Vowaと歌うくらいでちょうど良いです。問題はカタカナでヴ

ォワと意識しないことだけです。

途中のMa soeur,entends tu pasのpasでのクレッシェンドはあまり強調しない方が良いです。
あと、中間部のEt que mon ame は、Pでそっと入ってください。

「月の光」
出だしのVotre ame est の低音1点Fの響きが暗く通らない点、なるべく明るく響かせるよう、お願いしました。
それから、冒頭のメロディで特徴的でしたが、音程が2点Cに上がる際に、声の響きが平たい声に変わるのが、気になりました。
たとえば、Votre ame est unと言う時にameからestに以降の際、跳躍するestの響きが平たい声に変わること。
あるいは、その後のQue vont charmant のvontに上がるところなどです。
こういう声質に敏感になってください。
要はフレーズの滑らかさ、音質の滑らかさが、声楽の一つの特徴、と考えてもらって良いと思います。

同様に、一番最後のフレーズ、Parmi les marbreの高音の部分も、力んで強い声にならない方が、この場合は表現に適っていると思います。
また、最後のMarbreの1点Fですが、低音の響きに落とさないで、その前に発声する高音の響きのままで処理することが大事です。
ここは、強調したり声量は出す必要がない、音楽表現だからです。

「墓地にて」
とても良く歌えています。中間部のドラマティックな表現が、かなりはっきり感情が出ていて良かったです。
所々、リズムの勘違いがあったのを治しましたが、後はとても良かったと思います。

TN

シューベルト「至福」

「君は我が憩い」この曲から始めました。
音楽的にとても良い集中で、この曲らしい静けさと美しさが良く表現出来ていたと思います。
声もきれいなメッザヴォーチェになっていると思います。素晴らしい演奏でした。

「至福」ドイツ語のRの発音について質問がありました。
Rの発音はドイツ語であれフランス語であれ、イタリア語のようにRは巻き舌が基本です。
のどひこで発音するのはフランス語と同じくポップスです。
また、Rを言わないように感じるのは、単に巻き舌がほとんどないだけであって、Lとは違う舌の位置で止まることだと思います。
Lの場合は、子音発音の後に微妙に有声化するのだと思います。

有節歌曲は3番までですが、どう表現を変えるのか?
書いてある歌詞に従って、歌う人が感じるものを、テンポの設定で遅いか速いか?に還元するしかない、と思います。
強いて言えば、有節歌曲は最後の節で遅くなるスタイルが多いように思います。

最後に、O mio babbino caroを練習しました。
1時間のレッスンで感じたのは、彼女の歌声は安定していますし、メッザヴォーチェが綺麗に出来ます。
ただ、少し声がくぐもって感じるため、母音をIとEで練習して見ました。
喉を開けようとすることよりも、声帯を閉じること、明るい前に出る声の響きの原型を作る意識を持ってもらいました。
開けることと、声帯を閉じる意識は、感覚的に逆の事をしなければならないものです。
いわば、開けることに慣れていると、少し締める感覚でしょうか。

この練習で高音がかなり変わったと思う響きになりました。
あとは、本人がどんな感覚を持ったか?そのことで、これからの結果が変わってくると思います。

MT

プーランク歌曲集「マックス・ジャコブの5つの詩」

譜読みの表面的な難易度と、フランス語の素早い発音が要求されるテンポ処理等々、難易度の高い曲を、良くまとめて来ました。
伴奏合わせでしたが、一度も止まらずに通せたのは見事であり、ピアニストさんともども良く練習してくれたと喜んでます。

その上で、歌声ですが、発声云々以前に、もっと感情的に明快に声を強調することを意識してください。
云い方を変えれば、演技をもっと出す方が良いということです。

それは、詩の意味から感じられることだと思いますが、詩の意味はプーランクが書いた音楽で感じる範囲で良いことだと思います。
いずれにしても、音楽の中にある演技性を良く感じて、その面を強調するように歌うべきと思います。

楽譜から見た場合、全体にヴォーカルパートには強弱記号や指示がない場合がありますが、音楽に書いてあることを感じて、自由に出すべきと思います。
1曲目のフォルテは男らしさのようなもの。2曲目や4曲目などは、音楽から感じて歌う表情Espressivoな表現を充分に出して下さい。
3曲目、5曲目は音楽に従っていれば、自然に出せると思いますが、その代りに言葉の語感の力強さを極端に出さないと、面白みが出ないと思います。

全体に発音では動詞、形容詞の語尾の狭いeの響きが開いて広くなってしまうことが多いです
良く狭いeを口の端を横に引いて発音する人がいますが、これは×です。
唇を少し突き出すようにしておいて、上唇を上に少しだけかぶせると良い感じになります。

そして全体に子音発音が弱いです。
言葉の意味や語感と関係しますが、まずは発語自体を強くはっきりとすることの方が先決、と思います。
恐らくそこから、声の表現の強さや、明快さが自然に浮き彫りになって来るからです。
発声上の問題はその後で、解決すれば良いと思います。

ST

「姿を隠さないでほしい」
とても良くなりました。声の響きが通るようになり、音程感が良くなりました。
歌いこみも良くされていたようで、歌声に積極性が感じられるようになりました。
後で、アリアの練習で指摘したように、息が自然に吐けるような発声が意識出来ると、響きにビブラートが自然に付いて来て、更に良くなると思います。
特に長い音符の際に、少し意識してみてください。

ドン・ジョヴァンニのドンナ・アンナのアリア「そんなことはおっしゃらないで」は、レシタティーヴォの後半で、音程が♭気味になるところがありま

した。この辺りも、声に意識が行き過ぎて息を出さない発声になっていないでしょうか?
響きだ気に集中すると、いつの間にか息を止めたような発声になるので、注意が必要です。

これをやるきっかけを得る練習方法として、歌う前に歌詞発音(朗読)をリズムに合わせてやってみます。
この朗読の際に、母音発音で息を軟口蓋に当てるように音を出してやると、歌う時に息を吐きだす感覚が身につきます。

特にアリアの後半、最後の1ページくらいで、喉が締まってくるので、この喉を楽にして、息を吐く感覚も取り入れると、良いかと思います。
もちろん、これは最初から高音発声ではやらない方が良いです。
チェンジ前くらいのところから始めてみてください。

予想以上に歌いこみが進んで声の進化も速いので、このような発声方法にもトライしてみてください。
あまり調子が良くないようであれば、無理にやる必要はないです。