発声ではお腹を手でしっかり締めて、そこに支えを感じて声を出してみることをやった。それだけで単純にしっかりと声が出るようになる。単純にしっかりと声を出す、ということだけでも今の彼女にはとても大切なことだ。
後は舌先が奥に引っ込まないように、常に前に出しておくような意識は持っておいて損はないだろうと思う。
発音がもこもこしなくなって、明快になるからである。
曲は彼女が選んだ小林秀雄の「日記帳」と、中田喜直6つの子供の歌から「風の子供」
前者はピアノを弾くのが上手くなかったせいもあったが、最初は何を歌っているのかさっぱり分からなかった。
この曲はテンポに緩急の差があって、中間部は激しいテンポの速さが特徴。
その前後をおだやかな歌が囲んでいるというスタイル。
その違いをはっきり出して欲しい。
後者は、発声云々とか楽譜の読み方云々よりも、イメージだろうか。
子供になって、子供が紙芝居をやっているつもりで、下手でもはっきりと楽しんで歌うイメージを大切にして欲しい。
途中ピアニッシモの高音が出てくるが、力まないで返した声のつもりでやると、綺麗な高音が出る。
これを通して歌う時にも、即座に出来るように身に付けられると、声のイメージがかなり良くなるだろう。
彼女の場合発声の技術も間接的にあるけれども、それ以前に恥ずかしさをもっとかなぐり捨てて
やることを覚えると劇的に良くなると思う。
その第一歩として、歌詞を大きな声で朗読することである。
それも表情をつけられるだけ付けて、読むこと。
それが出来れば、歌は自ずと変わるだろうと思う。
発声のディテールはそれが出来てから始まるといっても過言ではないと思った。
おのさん
彼女は本当に良くなった。
まだまだ問題点はあるのだが、とにもかくにもよくここまで歌えるようになった、と感慨深い。
今日は軽く発声をやってから(これで済むところも変わった証拠)イタリア古典のSe tu m’amiと
Vergin tutto amorを練習した。
発声練習は、ハミングから母音という練習が主になったが、やはりNyuという狭母音で鼻腔への響きを導くことが少し良かったようである。
それぞれ同じテーマになった面は、いずれも中高音という音域。
彼女は必要以上に声を押してしまうが、押す必要がないという、ただそれだけのこと。
ただそれだけ、と簡単なようだが、ここまで来るのに1年は楽にかかっているということ。
それでも、彼女の進歩は劇的に良い方なのである。
それは器楽をすでにこなしている、音楽的な感覚、経験知もあるのだろう。
後もう少しのようで、難しいのは中音域の音程感と響き。
微妙に♭になってしまうのは、まだまだ喉で当てる感覚が強いのだろう。
舌根あたり、顎の下を歌っている時触ると、相当に硬くしている。
それは、子音の発音とは関係なく、母音発声ですでにそうなっているから、相当力んでいると思う。
彼女のも言っていたが、息をためて強く当てるためにそうなるのだろう。
なるべくこの舌根の力を抜くことと、発声のポイントを軟口蓋から上で行うこと。
外側から分かる場所で言えば、もっと頬を使うことと、目を見開く筋肉を良く使うことである。
それ以外、喉から舌根はなるべく力まないことである。
それらのことを潰して行けば、出来るようになるまでに既に彼女の感覚は磨かれている。
後もう少しだから、この点をクリアしていこう!