いつもそうだけど、彼も危なげのない芸風で安定している。
変わったのは声が良く出るようになったこと。
元々無理はなかったが、この半年でソロらしい声の表現が定着してきた。
喉も意外と丈夫で出せば出すほど良くなってくる。
強いて言えば、中低音がテノールの発声だと当然出しにくいのだが、それを無理に出すと難がある。
ここは押さないで、軽く留めておいたほうが良い。
これから、少しずつ鼻腔共鳴を覚えて、綺麗なピッチの良い中低音が出せれば鬼に金棒だ。
ドビュッシーの4曲最後の伴奏合わせ。
「噴水」は危なげない。きっちり歌えている。
強いて言えば、言葉のレガートがまだ身に着いていないのが気になるといえば気になる。てにをはが良すぎる、という印象になってしまう。
曖昧に歌えということではなく、口先、唇や下顎の使い方に工夫が必要になってくるのだ。
これは、一朝一夕では覚えられないので、これからの課題として欲しい。
出だしは、ピアノのテンポに構わずに、自分でさっさと行くべきである。
そのさっさと進む基準も、実は言葉を語る意識と関係があるので、語学力と関係してくる。
「巷に雨が降る如く」
こちらは、ピアノのテンポを少し速めてもらった。
歌は確かに男らしく、といったがやや勢い込みが強いかな。。
でも良いと思う。これを聴いていてモーツアルトを歌うと良いなとイメージした。
タミーノなどぴったりだろう。
中間部、Quoiとtrahizonはやや切り過ぎだと思うが、好みだろうか。
「それはやるせない心地」
こちらピアノの前奏がやっと良くなった。
C’est touts les frissons des boisは早過ぎないように。
中間部の高音は、大きなフレーズを心がけて欲しい。
高音は張る必要はないし、張らないほうが綺麗だ。
最後の高音は素晴らしく良い。
「マンドリン」はとても良いが、最後のラララの低音は押さないほうが良い。
そして最後の終わりはディミニュエンドで軽く細く。
あめくさん
中低音の発声も地声に戻したり、色々やったがどうやら安定してきて無理なく響きが出るようになってきた。
ただ本番で力むとすぐに地声なってしまうし、逆に上がると細くなって口先だけになってしまうだろう。
喉で押さないけども、ゆったりと胸を意識するリラックスも同時に必要になる。
そして口を良くあけることをいつもいつも忘れないように。
ともすると、小さな口先で歌ってしまうために、中低音が痩せてしまうし、逆に高音は喉が締まってしまうわけだ。
シブレットの3曲。
「シブレット登場」最初のHaHaHaは何度も言うように、口をちゃんと開けましょう。
アに聞こえて欲しい。
彼女の場合は、逆にもっとてにおはがはっきりしても良いくらいだろう。
フランス語にはフランス語の語感があるので、これはこれから少しずつ覚えて欲しい。
声は彼女自身が良く分かっていると思うが、声を出すポイントが高くなって、喉だけにならないように。
身体、特に胸からお腹にかけて低いリラックスした体の状態をいつも心がけてほしい。
彼女は譜読みも早いし、勘も良いし、言葉の読みを覚えが早い。
後は声に対する集中力だけだ。
ちょっとしたことなのだが、それを失って喉だけで歌ってしまうと印象がとても違うから。
「私の名はシブレット」
こちらも上手く歌えるようになったが、途中テンポを落として、再度A tempoとなるところ。
テンポを遅くする仕方が手ぬるい。
もっとはっきりと出すこと、そのことで、その後のテンポを一気に戻すところに
ニュアンスが出るだろう。
こういうメリハリをはっきり出すことが大切。
もっといえば、そこにはそういうことをする意味があることを歌詞を読んでイメージして欲しい。
結局作家か書いている指示というのは、意味があって、それらの意味は抽象的ではなく具体的であることが多いのだ。
結局喉が温まったせいもあるが、「それが彼の郊外」が一番良かった。
今までで最高の出来。
声が良かった。バランスのとれた身体に付いた声だった。
響きを高くしすぎなかったので、リラックスした喉で身体に響く歌声だった。
テンポもグッド!
後は暗譜頑張って!
ふかやさん
今日は少し低音の発声も加味して、1点Gくらいまでの発声をした。
どうもお腹のついてない声を出す。
それから、相変わらず下顎と舌が硬く、中にこもった声を出してしまう。
これは中音域が顕著だ。
お腹のついた声ではないので、逆に高音は出しやすいだろうが、これも喉そのもので
一気に出してしまうので、これまた喉が持たないだろうと思われる。
実際トスティの「4月」を聴いても、出しやすい中高音でどか~んと威勢良く当てるので少々心配だ。
それでも調子が良ければそれでも高音の肝心のところまで行き着くが、何度か練習するとアウトである。
中長期的に見れば、どの声域になるにしても、喉の使い方だけはきちんと覚えておくべきだろう。
難しいこと抜きにして、適度な当て具合というのを覚えるべきである。
今は出し過ぎか抜いてしまうかどちらかになってしまう。
息をたくさん使っても喉の当りの少ない出し方もあるし、逆に息をたくさん使わないで一発でかつーんと当てる使い方もあるだろう。
お腹を使うことと、喉の使い方を覚えること。
声の出し始めはお腹から動きがあってその後に声が出る、ということをゆっくりやってみて欲しい。
あるいは息だけを吐くことから、息を吐くことで声が出る、というタイミングを学習することも必要だろう。
後は吐いた息を喉の使い方で、どう変えていくかという、喉の使い方だ。
これらのことは1年以上結構教えたつもりだが、どうも定着していないのが残念だ。
ともあれ、基礎は大切だ。
歌のほうはトスティ「4月」で高音が上手く行けば、後は現時点ではまったく問題ない。
途中切って歌っていたところを繋いだ方が感じが出るくらい。
椿姫の「プロヴァンスの海と陸」はテンポ早過ぎないように。
ピアニストさん、くれぐれも軽くなり過ぎないように。
こちらも喉で思い切り頑張っているが、それでもそれほど高くないのでリスクは少ないだろう。
代々木ムジカーザはとても響くから頑張りすぎないで、ほどほどで丁度良いと思う。
わきくろまる
軽く発声練習をしてから、早速伴奏合わせとなった。
下降形で始めてからイの母音で始めて見た。
今日はやや高音の喉の締り具合があったようだが、気にせずに伴奏合わせに入った。
ベッリーニMa rendi pur contentoは出だし1ページがとても良かった。
後半が少し乱れてしまった。
最後の高音を出す所を横で見ていたら、お腹を硬くしてそこで踏ん張るだけで出していた。
これでは、息が伸びないと思った。
お腹は硬く硬直して踏ん張るのではなく、息を吐くことで声が伸びる、あるいはクレッシェンド出来る事を思い出して欲しい。
声を当てたら後はお腹を中に入れていくようにして、積極的に息を吐くようにすることである。
そして、吐き切る寸前に、最後の細かいフレーズをおまけみたいにさっさと言えば良い、という感じ。
要するに息の配分を考えて、けちらないでしっかり出す所は出し、必要のないところは適当に、そして早く歌う、という感じだろうか。
そういう配分とスピードの調節が分かって出来るようになることで、ブレスは思いのほか伸びるものだ。
Vivoのイは閉じないで開くことで喉を締めないように。
プッチーニSola perduta abbandonataは、今日は少し乱れたが声は安定して歌えている。
ピアノとのアンサンブルをかなり練習した。
特にテンポが速くなるところから。
歌手はかなりな強声だし、女性だから音域も高い。
ピアニストさん適当に弾いているととても聴いてもらえない。
特にこの早くなる部分は、和音の16分音符と3連符の交差するリズム形。
リズムの形が分かるように打鍵しないと、何をやっているのか、どこを歌っているのか不安になるだろう。
特に16分音符の粒のリズムをきっちり聞こえるように出すことで、音楽が良く分かるようになる。
歌手の歌だけではなく、演奏全体に及ぼす大きな問題である。
伴奏というのは歌手の陰に隠れて、支えるといえば聞こえが良いが、もし支えるというのであれば、
支えるだけのものをしっかり「出す」ということをしなければ、本当の意味で支えたことにならないだろう。
隠れているのは、要するに聞こえないだけになってしまう。むしろ足を引っ張ってしまうことになりかねない。
くれぐれも細部のリズムをないがしろにしないでほしい。
それから歌手のロングントーンに入るところの合わせのタイミングも。
Think of me はテンポ、歌ともに丁度良い頃合。最後のカデンツも元気一杯歌えて楽しそうであった。
彼女の良いところは、一所懸命歌っても楽しそうに見えるところである。
つくづく得なキャラクターだなと思った。