発声練習の声がお腹から来ないで喉だけになっていた。
この辺り、まだまだ危ない所がある。
ブレスとブレス時の喉の準備を大切に。
腹式呼吸と喉の準備、どちらかだけを意識しても上手く行かない。
声楽の腹式呼吸は、喉の開きと対になっている。

お腹の筋肉を使うことと、喉のあくび状態である。
喉のあくび状態というのは、下あごを降ろさなくても中だけ意識すれば出来ると思う。

これがないと、声区の換声点で喉で押して締めた声になってしまうから要注意。
この感覚を忘れてしまうと、なかなか先に進めない。
この感覚に鋭敏になって欲しいところである。

最終的にレッスンを終えて思ったのは、息をまだ充分使いきれる発声になっていない点だろうか?
特に声を張ろうとすると、お腹で固まって頑張ってしまって、声を鳴らすだけで息を吐けなくなってしまうようである。
そのことは、ホフマン物語、アントニアのロマンスで思うことになる。

その前にアーンのChansons grisesから、最後のLa bonne chanson
戦前の邦人作家、信時潔の日本歌曲みたいだ。
だからきっとドイツリート風なんだろう。
譜読みが進んでいないようで、声が出なかったが、やや音域が低いか?
ただ、その後の2曲を聞くと彼女は低音が艶やかで味がある歌を歌える。
前述の喉の準備と腹式呼吸のブレスが確立すると、中低音が出せるようになるだろう。

Paysage tristeは、彼女の声、歌の良い面が良く表せる曲である。
民謡風、シャンソン風が混ざり合っていて、独特のポエムのあるアーンとしてのオリジナリティが感じられる曲である。
低音が滑らかに響いて、驚くほど表情に富んでいる。
落ちついたテンポだと、ブレスにも余裕が出て、良い声の準備が出来るのだろう。
なるべくノンビブラートで、旋律を一本に繋がった線として歌うように、細心の注意を払って欲しい。
声が揺れると、表情が消えてしまうからである。

次に歌ったL’heure exquiseも同じく。この同じ楽譜のキーだと低すぎるので、この曲だけ上げた。
最後のC’est l’heure exquiseは1ブレスで歌いきって欲しい。
こちらも同じくノンビブラートで綺麗に真っ直ぐにフレージング出来さえすれば、絶妙にアンニュイな味を見せてくれる。
彼女の歌声の持ち味は、大人な女性のアンニュイな味なのか!?と妙に感心。

最後にホフマン物語からアントニアのロマンス。
何度か通すうちに高音も滑らかにはなったが、どうも喉で押してしまい勝ちであった。
高音に上がるほど、ブレス時の喉のあくびを強めにすることで、声のポジションが上がらないから
そこから更に高音に向っても喉が上がらない、と思うが、どうも上がってしまって、最高音の2点Aは細く締まってしまう。

ここは喉の気道を太くする意識で、息を思い切り吐くことが出来ると、必然的に声も良い意味で太くしっかり出せると思う。
声はイメージもあるから、イメージ上では細いのかな?
もう少ししっかりと出してほしい所。
喉が上がらないように、一気に吐き出すように。
声を慣らそうと思うと、声帯がひっついで締まってしまうだろう。
ハミングなどで下から少しずつ上げて行って、喉の上がらない開いた高音を練習してみたいところである。

本人は楽しみで聴くのはオペラであることが多いようなので、オペラアリアに挑戦してみることは良いことだろう。
声のキャパシティを限界まで使って開発すれば、また新しい自身を開発することに繋がるだろうと思う。