発声は少し時間をかけた。
鼻腔共鳴の練習。
口を開けないで鼻腔に響きを通すように。
これは上手く出来るようであった。

低音の練習で地声から練習。
地声でも声帯をわずか開いて柔らかく処理することで、上の声区とつながり易い声になる。
まだ、しっかり合さってしまうので声がミックス出来ない状態である。
これが上手く行くと、低音は劇的に出るようになる、はずだが、なかなか理屈どおりには行かない。
相当な本人の意識がないと難しい。
ただ、使わないと発展はないので、積極的に使って欲しい。

曲はパーセルの歌曲から、Music for a while
最初、通した声はどうも喉のポイントが高い。
顎で下げるというより、姿勢やブレスポイントら来ることに加えて、言葉の発音語感も関係することではないだろうか。
これは彼女に限らずだが。。
日本的な感性で外国語を扱えば、自然とその語感と語感が関係してくる発声の声が規定されてくる。

だから、発声だけを捕らえないでパーセルならその英語の発音の語感、それも日本人の耳に馴染む音ではない
本来の英語の発音の響きを良く想起して欲しい。
そういう観点を持って発声に努めれば、自ずと自然な響きになる、面もある。

ブレスの問題もあるだろう。
声の出だしをもっと低く、いわゆるお腹、横隔膜から呼気が始まるから、声の出だしもみぞおち辺りに意識すると良いだろう。
そのために、ブレスをその位置に意識して入れることが大切になってくる。
これが腹式呼吸が声楽に意味がある理由の一つである。

最後にI attempt from love’s sickness
こちらもほとんどが発音と発声の関係を探ることになっただろうか。
特に子音の発音は、次に来る母音の発声に深く関係がある。
音程を決める要素でもある点に注意。
To flyのFlの二重子音は、単に無声子音なのではなく、Fを発音する時点で喉の準備をするのである。
この子音の発音感覚がなくて、なんとなくだと、処理も遅れるし発声の声のポイントにも関係してくる。

結局こうやって書いていて分かってくることは、発声は音楽的な音の高低、それは音楽的な感情の問題であるし
これに関係する歌詞の発音は、そういう音楽的な要素と絡み合っているわけである。
音楽を理解する、ことは、その歌詞を理解することとも同じなわけで、歌詞の発音の問題はそこに在る音楽の発生と同義である、とも言えるだろう。
逆に言えば歌詞の感情が音楽を規定している場合が大きいからである。

高い声を出すのに、音符に書いてあるから出すのだけど、その原因は歌詞やその歌詞に音楽を付けた人の解釈である。
だからプレイヤーは譜面どおりに歌うとしても、その原因をわかって歌えば、自ずとそういう発声になる、というのが
理想ではないか?
勿論基礎的なレベルとは違う側面もあるが、原因と結果は、作品を扱うためには、大切な要素として知るべきだし
知る努力がないと、本当の演奏にはつながらないだろう。

理屈としても理解する必要はその直感的な要素にも大きな影響を与えるだろうということ。
歌詞の発音、そして声楽的な声の発声はそれぞれが別個に存在するのではなく、一体であるということ。
ということは、扱う歌詞の外国語理解の深浅は、やはり演奏に与える影響が大きい、と言えるのではないか?

ちょっと長くなってしまったが、これは彼女だけのことではなく、歌うものに共通した大切なことであると思うので敢えて書かせていただいた。
いつも生徒から学ばせてもらっている。

ふかやさん

今日は発声練習で良い感触を得られた。
実際の曲でも非常に良い声が聞こえてきた。

やはり顎を引いた姿勢は有効だ。
彼の場合特にそうである。
喉に力を入れて喉から声を出し始めるために、喉にもろに負担がかかる発声になってしまう。

姿勢もさることながら、大きいのは声の出し始め、ドイツ語で言うアインザッツが喉で意識してしまうことが
一番大きいのである。
これは、喉が開いていれば問題なく出来るのだが、喉が開いた状態ということ自体が、難しいからである。

喉は息が通るところで、声の出始めは頭で出始める、という感覚を持てれば、特に高音の頭声は飛躍的に上手くなるだろう。
そのためには、かなりな低音からその意識を持つべきである。
ただし、それがあまりに、喉が上がってしまうと意味がない。
そのために、顎を締めて喉が上がらない姿勢を必要とするのである。

トスティのAncoraを。
発声練習が功を奏して、出だしから非常に良い声が聴けるようになった。
恐らく彼の発声では初めてではないか?というくらい良い声である。
低い声は、無理なく響くし、高音に至るまでスムーズであった。

ただし、高音が続くと、途端に喉から発声してしまう傾向が出る。
そのために、結局1点Gが二回続けて発声できなくなるのである。
歌う様子を見ていると、声のチェンジと関係がある1点F辺りのアタックで、既にして喉声になっている。
早めに声を鼻腔に入れて頭声を準備していないと、いきなり高音だけを頭声、というわけには行かない。
勢いというものがあるから。

最後にRidonami la calmaを練習。
こちらは、譜読み段階は一応合格点を。

いずれにしても、今回のレッスンで見つけたとっかかりを大切にして、発声を磐石なものにして行きたい。

わきくろまるさん

発声練習から少し気になっていたが、モーツアルトの伯爵夫人Dove sonoでは、あれあれ!?
というくらい、浅い発声になってしまっていた。
難しいところだが、確かに舌根で団子声を作るのは良くないが、それにしても声のポイントが高すぎる。
多分、高音の練習ばかりやっていたのだろう。
練習するのは良いのだが、好きなことばかりやっていては駄目だ。
バランスを考えて欲しい。

顎の上がらない姿勢も注意して、喉が自然に開くウの母音などもやってみたが、意外なほど高いポイントの声になる。
どうも呼吸、特にブレスの入るポイント、身体の使い方も関係があるのだろう。
単に深いブレスをもう少し意識してみることでも、かなり変わるのではないだろうか。
ブレスの取り方は次回にでももう一度良く練習してみたい。

また単なる発声の技術だけではなく、、声に対するイメージをもう一度見直してみることである。
高いところばかり見ないで、もう少し落ち着いた中音域の良い声のイメージである。
ふくよかで、深さがあって、聞いていて気持ちの良い母性的な声である。
彼女はそういう声を持っていたはずであるのだが。。
特に伯爵夫人は、キャピキャピしていない、ノーブルな貴族の奥方な訳で、気をつけてもらいたい。

後は、リズムには要注意。リズム読みをもっと徹底して正確に。

最後にドニゼッティのLa zingaraを。
前半部分は勢いで気持ちよく歌えている。リズム感も良い。

後半の舟歌風のリズム、メロディになってからは、細かい音符のパッサージュを特訓した。
特に変化記号、♯やナチュラルなどの付いている音は要注意である。
狭い音域を細かく動くパッサージュは、響きを同じ場所で処理する意識がないと、ちょっとした変化で落ちてしまう。
また、中低音ほど良く響きを顔面に集めて処理しないと、これも音程が正しいつもりが落ちてしまうから要注意。

彼女もやや歌い急ぐ傾向がなきにしもあらず、なので、特にリズムの把握は急がないで落ち着いてじっくりと取り組む癖を大切にして欲しい。
このドニゼッティの小品は女性の持つ2つの側面を上手く表していて美しい。
いずれお客様にはぜひとも聞いて頂きたいと思うので、じっくりと取り組んで欲しいと思う。