IAさん

今日は最後の伴奏合わせ。

Debussyのプログラム、1曲目はAimons nous et dormons
後半でやや歌手との音量バランスが悪かった点と、テンポが前のめりになる点。
フォルテなどの後のディミニュエンドは、思った以上にかなりはっきり、相当落としてちょうど良いくらいである。

この曲に限らず、テンポはディミニュエンドすれば、その分自然に落ちるという自然さがあると更に良い。
この曲は遅くはないが、さっさかさっさか行くという感じでもないと思う。
田舎の小道をノンビリ、しかし確実に歩いていく気持ちよさ、流れ方を大切に。
のんびりした軽快さが良いと思う。

Nuit d’etoileは、全体に声が若くてまるで20歳のお嬢さんのようだった。
これはこれで、良いなと思ったが、レッスン前の会話でが声の不調を訴えていた、その意味がこれでようやく分かった。
声の出だしで、ポジションが高くなり過ぎていたのである。
要するに基本的に喉が高くなってしまっていた。

例えれば野球のバッター。
いつもバットでジャストミートするポイントがほんの少しだけずれたため、いつもはヒットになる球が、ファウルになったりフライになってアウトになるようなものである。

ブレス時点で、もう少し喉を開く意識を持つことは大切だが、音程の感じ方もあるだろう。
歌に入る前の前奏を聞く場合に、低音の響きに注目することも良い。
どうしても高い方に耳が行き易いので、そうなると喉も高くなる可能性はある。
高音の練習のしすぎもあるかもしれない。

そうやって再度この曲を練習すると、いつもの彼女のふくよかな中低音の響きに戻った。
それで、高音を歌っても決して問題は出ない。
元々彼女は高音の声区に入ると喉が自然に高めになる傾向なので、中低音はメゾの声質でちょうど良いのである。

Greenは、テンポもバランスも問題なかったが、歌手さんの希望で、メリハリをもっと付けることになった。
確かに、出だしのテーマのテンポと再現部のテンポは差がはっきりあるべきだろう。
また、この曲特有のRitとA tempoの交互のメリハリもはっきりする。

高音はあまり押さえようとしない方が良いだろう。
抑えるために、喉が高くなって、更に息が弱いために、喉っぽい(カスると言う意味で)響きになってしまう。

最後にマラルメのApparition
ピアノのテンポ感、タッチ、共に良かった。
歌は、最高音域が前回聞いたときより良くなっていた。上に抜けた感じで見事である。
むしろ最後の2ページに出てくる、メッザヴォーチェ2点A前後の響きが、やはり弱声を出したくてカスッってしまう。

声を抑えようとするために、逆に喉が上がってしまう。
喉を上がらないようにすると、今度は当たってしまう。
が、最初から理想を追わないでまずきちっとした声から確実にした方が良いと思う。
その上で、感覚的に柔らかくしていく、という練習の順序が良いと思う。

TKさん

発声練習では、最初は普通の母音アで始めたが、声は良く出ていて力強かった。
ただ、口先を開きすぎで、奥が開いていない感じもあったので、ウの母音でドミソから初めて、ドレミファソ、という具合に中音域から中高音域を練習した。

ウにすると、自然に喉が開いて、響きが共鳴する状態になりやすい。
2点Fisまではこの方法で綺麗に出せるようになっている。
後はここから上だが、怖がらないで思い切り出した方が、多分上手く出せるようになるだろう。
こちらはあまり焦らないで少しずつ伸ばして行きたい。

後は中低音で、響きが集まらないのでハミングを練習したが、かえって調子が悪いようだったので、程ほどにして、早速曲を歌うことに切り替えた。
フォーレのAu bord de l’eauから。

最初はブレスがやや苦しい面もあり、消化不良な印象だった。
思い切ってテンポを早くしたことと、それ以前に、理屈ぬきで歌うこと、声を素朴に出すこと(自身の音楽的な衝動に素直に従って)
だけを大切にしてもらった。
理屈で、ブレスはこうやってこう入れて、そのためにはこういう姿勢で、お腹をこう使って、喉は開いて、、、などと
やりだすと、混乱するし、素朴に音楽を感じている大切な部分が麻痺してしまうだろう。

そうやって歌ってもらうと、声に力が漲り、歌う勢いも出てくる。
Entendre au pied du saule ou l’eau murmureで、しっかりした低音の響きが聞かれた。
概ね良い歌になっているのだが、本人が必要以上にブレスが伸びないことを気にしすぎるようであった。
最初から声のことを気にし過ぎると、悪循環に陥ってしまう。
長いフレーズではブレスが伸びないと思って、思い切って声を出さないから、余計ブレスが伸びない、という面もあるのだ。

歌は後先考えずに、行っちゃえ!という思い切りも大切である。

その後で、前回少しだけ練習したTristesseをやろうと思ったら、何だか気が遠くなりそうだ!というので止めにした。笑
気持ちは良く分かる。
じっくり取り組んでもらいたい。良い歌だ。

それで、次に歌ったL’absentが、お気に入り中のお気に入りだけあって、とても良かった。
良かったという意味は、歌としてポエムが成立していることが番良いという意味である。
詩の出だし、Sentier ou l’herbe sa balance,valons coteaux,,
だったかな?これだけで、なんともいえない悲しみが噴出してきた。

Enfant qui pleures-tu? “Mon pere!”
Femme, qui pleures-tu? “L’absent!”
Ou donc est-il alle? “Dans l’ombre!”

なんだか泣けてしまう詩だし、この初期の時代のフォーレの音楽は直截に響いてくる。

本来持っている能力が素朴に歌うことを通して更に目覚めてくることを信じて、その人の集中力とモチヴェーションを、高められるようにしたいきたいものだ。