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発声は中低音のハミングで馴らしてから、母音で高音までという順番。
母音はAだけとJaと2種類。
5度スケールや3度5度のアルペジョなど取り混ぜて。

最終的には3点Fまで確実に出来た。初めてだろうか?
それにしても、ムジカCでも3点Fを出せる人はいるが、軽々と出せるのは彼女だけと記憶している。
また軽々出せるとはいえ、いわゆるホイッスルボイスのそれではなく、ちゃんと当った声だから凄い。
将来性を感じる。

結論から言うと、理想は3点C以上の声でも共鳴のある響きを確実に得られるようになることだ。
声帯そのものが確実に出やすい喉なので、比較的に容易に極高音が出るタイプだと思うが、音程や響きと言う面では、これだけだと確実性と音楽性において少しマイナスかもしれない。
音程が正確であること、と良い響きであることは同義だから、喉だけではない共鳴をこれからは探して欲しい。

実際、2点bくらいまではそういう響きの傾向で出せているから、感覚、センスは既に持っているはずである。
共鳴については、口をあまり横に引き過ぎないことと、声を送る方向性を探してみること、だろうか?
口の開け具合と声を送る方向を色々変えてトライしてみて探して欲しい。
ただ、高音なので、一度に練習をやり過ぎないように、充分注意して!

曲はヴェルディのエルナーニから「エルナーによ一緒に逃げて!」を。
初めての曲と言うこともあり、まだ不安定だが全体に良く歌えていた。
やはり、中低音のピッチがやや低めになることが課題だろうか?

それは、この曲のヴェルディらしい切迫したヒロイックな音楽のせいでもあろう。
そういう音楽に惑わされないで、特に中低音域では、表現とは裏腹に声を明るく高く響かせることである。
ヒロイックな音楽の通りに無意識に歌ってしまうと、彼女の今の中低音の発声だと、伴奏の響きの中に潜り込んでしまう感じである。
低い音域ほど、高く。である。
発声的には鼻腔の共鳴を更に勉強したい。

また、しばしば出てくる細かいメリスマの形も、もう少し音程を確実に。
特に低音から最高音まで昇るスケールなど。低音は力まず音程を大切に、高音に昇るほど高く響きが広がるように。
3点Cが良く出てくるが、なおのことその響きにこだわって欲しい。
響きにこだわれるだけの素質があるから、である。
響きにこだわって美しい最高音を手にして欲しい。

ドニゼッティのRegnava nel silenzioは、大分譜読みは進んできたが、新しいカデンツなどにトライしたせいか、やや不消化な印象。
現時点ではカデンツの種類も大切だが、むしろ中途の修飾的な細かいメリスマ、大きな2オクターブ近くにまたがるメリスマなどの音程と
響きをくれぐれも大切にして欲しい。
高音域に渡るメリスマは、部分部分で切ってゆっくり練習して、響きと音程を正確に出すことから積みあげて行きたい。

後はモーツアルトのBatti battiを。
こちらは中低音域が、少し太さを感じさせるところがなかなか大人っぽくて良かった。
高音は何の問題もないし、彼女には役不足なくらい。

最後にベッリーニ「夢遊病の女」からAh! non credea mirarti
出だしのモチーフの響きは非常に良かった。惜しむらくは音程がわずか浮いてしまうこと。
恐らく響きを出そうとするあまりだろう。
この辺りの響きと音程の頃合が慣れて分かってくると、相当な歌が歌えるようになるだろう。