TK
今日も発声練習はやらずに、いきなり歌に入った。
一度通してみたけど、フランス語の読みは大体悪くないし、音程も大体取れているが、ピアノと合わせるのが難しい面があった。
もちろん、こちらの下手なピアノのせいもがあるが、一回きっちりリズムの構造を把握した方が良いと思って、その辺を教えた。
4/4あるいは3/4のリズムで構成されるが、4分音符が1拍で譜読みしないで、8分音符にして、1小節8拍あるいは6拍で取ったほうが解りやすいと思う。
3連符6連符などの連符が多用されているから、偶数リズムと奇数リズムの折り合いを一応理解しておいてもらいたかった。
結果的には冒頭に作者がSans rigueur de rythme(リズムは厳格でなく)と書いている通り、きっちりとピアノと合わせる意図はなくても良い。
ただ、連符にしても偶数リズムにしても、言葉の抑揚、シラブルのリズム感を尊重して書いている結果そうなっている、ということは頭に入れておいて欲しい。
それらのことが解らない以上は、楽譜のリズムに従うことが、逆にフランス語のシラブルのリズム感を理解することにつながるからである。
大人になっちゃうと、身体だけで身に付けるのはとても難しい面があるのだ。
いずれにしても、CDなどで旋律を何となく覚えて歌うことだけではなく、楽譜から読み取って左の脳みそで論理的に理解しておくと、交通事故に合ったときに整理整頓がしやすいのである。
すなわち、ピアニストと合わせた時にである。
また、自分で作品を書くときに、そういった理論が美に繋がる構造みたいなことを、知識として知っておくことも引き出しの数が多くなって良いと思う。
後はフォーレのイブの歌から、CrepusculeやRoses ardentesを一通り歌った。
月の光も歌った。
彼女の声は、特に中高音が細く集まってきている。音程も良い。
最後に教えたのは、ブレス。
身体はリラックス出来ているが、まだ胸で吸う傾向が強い。
そのため、上半身を少し前傾姿勢にして、腰から背中にかけてブレスを入れるように練習してもらった。
昨日のYYさんでも成功したが、今日は彼女にはやらなかった、おへそからブレスを入れるというやり方も彼女には良いだろう。
ブレスを少し意識して練習してみて欲しい。
FA
レッスンを終えて、このノートを書きながらつらつら思ったのは、彼女の今までのレッスンは、ともかく声を出すこと、そのために身体を使って、最大限に声を出して行こうということと、声の底辺である中低音の響きを出す、ということだった。
そして現在、それは充分に目的は達成できたと思う。
後は、得られた息の力や勢いを、どうしたらもっと良い声の響きに変えていくことが出来るか?
という喉や口腔の使い方による共鳴を導き出していく方法論にあるのではないだろうか?
発声はハミングなど取り混ぜながら、20分くらい時間をかけただろうか。
中低音のチェンジ前までがとても良い響きになってきたので、そこから上の声区に変わっていく辺りの発声で声の力みだけが出てしまうのがとても惜しく、何とかそこを覚えてもらいたかった。
少なくとも1点C~2点Cの1オクターブは響きとしても良い響きが出せるようになってきている。
後は、そこから完全に喉自体がチェンジする2点Fくらいまでのグレーゾーンの発声におけるテクニックだろう。
口の開き方と喉の深さや浅さなどを、声の響きと音程によって柔軟に対処出来ること。
その目的は喉だけで出す声ではなく、共鳴のある響きを作るためにであるということ。
2点C~Eくらいの音域は、あまり喉を深くしないで、リラックスすることと、後々曲でやって成功したが
舌先を少し前に出すような、あるいは舌先に力を入れるようにすることで、共鳴しやすい喉の状態になるようである。
例えば、1点A→2点Dくらいの音域で、音程を上がる時などに、上の響きに入る時に、喉を深くするだけではなくて、
舌先に少し力を入れて、むしろそのせいで喉が少し上がるような感じにするのである。
そうすると、喉が開きすぎないで、あたかも共鳴に相応しい喉の筒っぽ状態になる、というイメージだろうか?
共鳴を出すためには、筒っぽは太すぎてもスカスカになるし、細すぎると締まる。声の響き共鳴と相談して、その頃合を決めるのである。
最善の共鳴ポイントを作るために、舌の力の入れ具合は利用できるだろう。
ちなみに、誤解を招きやすいのは「舌根の力み」という表現なのだろう。
硬くしては絶対にいけない、というよりも、硬くなる意味があってそれが良い響きに繋がるのであれば、硬くても結果的には良いと思う。
彼女の場合は、結果的に舌根が硬い状態の時には、大抵が2点C~E辺りで、声を出し過ぎるときなのである。
喉が硬直しているために、声帯は確かによく振動しているが、喉頭が締まっていて、やや♭で硬直した響きになる。
この硬直はなくしたほうが良いということ。
なくすために、敢えて力を抜きなさい、喉を浅くしなさい、という指示につながると思ってもらいたいのだ。
バッハのマタイ受難曲からアルトのアリアErbarme dichを持ってきた。
母音で練習、特に母音をイにして、響を高く、かつ柔らかく。
そこから母音をアにして、練習。最後に歌詞をつけた。
母音ではフレージングを意識すると良いだろう。クレッシェンド~デクレッシェンド。
前述の舌の使い方は子音を使うことと関係してくる。歌いながらの一瞬一瞬の神経で、声の響きは良くも悪くもなる。
口の開き具合も開けたほうが良いか?開け過ぎないか?
この曲は彼女には中高音、2点C~Eの発声の対処にはうってつけの曲となるだろう。
アルトそのものの声はイメージしなくて良いと思う。
それから、声の出し過ぎに注意。彼女にこんなことを言うのもある意味で進歩の証だけど、8割くらいに感じて歌うのが声の響きを出すのに良い。特に2点C~Eの間で力む傾向なので、この音域こそ8割くらいを充分意識して欲しい。
最後にメシアンの3Melodiesから、Pourqoi?
とても美しい作品で、難解でなく、かつメシアンらしい神秘的で官能的な響きが楽しめる曲だ。
とても上手い選曲で、彼女の一番良い声が出しやすい音域である。
選曲も歌の上達には大切だし、コンサートのプログラミングには大切だが、やはり何と言っても発声は大切である。
今日は、完全に彼女の発声の課題の的が絞られたので、これを次回以降の目標にしたい。出来れば本番でも出来るようにしたい。