KM

今日も興味深くあっという間に1時間が過ぎてしまうレッスンだった。
彼女と一緒にそのユニットの録音を聴いて、彼女の声の課題を探して、それをテーマとして発声練習と、実際の歌のフレーズの一部を練習。

声がやはりお腹からしっかり出せていないことが最大の課題であった。
マイクで歌ってもマイクでなくても、それは同じことなのだ。
彼女の作る曲は6~70年代ウエストコースト風で、バックが結構ギンギンに鳴らして来るサウンドだった。
またアンサンブルのグルーヴ感も要求されるのだが、彼女自身がそれに声で応え切れない面が見られた。
なんといっても、表現意欲が声に反映されるためのお腹からの声の出し方が先決だろうと思った。

まずは1点E~2点Eの1オクターブだけで、しっかり声を出す練習。
ハミングで始めようと思ったが、あまりに喉から上だけになったので、お腹からしっかり出すことを練習した。

色々やったが、やはり上半身を少し前屈みに倒して、腰に息を入れて歌う際にそこを膨らますようにするのが、一番効果的であった。

彼女に限らずだが、女の子感の強い女性(女性的な女性)は、概して立った姿勢が腰高であり、ウエストが細いのは美容的には良いのだが、逆に言えばウエストを使わない生活からくる姿勢であり、筋肉になっているのだろう。

腰を入れる、あるいは落とす立ち方もあるが、歌う場合は、腰を視点にして前屈みが一番分かりやすいと思う。

そうやって、腰に力を入れて息を強く吐くように、声にしてみる。
喉が締まると喉がやられるから、なるべく最初は口を開き気味にした方が危険が無い。
そうやって、発声をやると、低い成分の混じったしっかりした声が出てくる。

ドレミでもドミソでもドレミファソでも、大事なのはフレーズの最後まで息を吐ききるようにすること。
すなわち、腰の膨らみを最後まで続けることである。

その後は普通に立ってやってみるが、まだしっかりしないので、今度は胸に当てる意識で出してみる。
これも、必然的に腰と声が繋がってくる。

お腹を使うことが出来てから、ハミングをやって母音に変換をやったが、どうしても下の引張りが強いため、声がこもってしまう。
それでは、ということで、今度は口をあまり開けないために、指をくわえてやってみたら、響きが鼻腔に入るようになってきた。
実際は鼻腔に入ったわけではなく、声帯が尖がって響くようになった、というべきだろう。
声帯全体を分厚く使うための、腰からの歌い方と、声帯の先端まで使うための口をあまり開けない歌い方のミックスである。

これでかなり明るい中低音~中高音の声になった。
後は、2点Fまでこの出し方で声が裏返らないように、腰で頑張る、口を開いて喉を上げない、あるいは顎を引く、などの方法で
練習した。

声はある程度一回のレッスンでしっかり出せるようになったが、後は実際の曲での応用である。
歌の入り、アタックが微妙に遅れること、これは前述の身体を使った発声のポイントが確立することである。
それが出来ていると、自在に入るタイミングがコントロール出来るだろう。
ともかく練習としてはメトロノームでなるべく細かいリズムにして、アタックのタイミングを練習することも良いだろう。

また、声だが、彼女特有の歌い方の癖自体が、声を直ぐに抜いてしまう面も否めない。
このことも、練習で直して行きたい。
シラブル一つ一つを丁寧にきちっと声を身体から出して行く練習をするために、最初はユックリのテンポで始めて
徐々に早くしていくことも良いだろう。

彼女から質問があった高音から降りると声がひっくり返るということ。
これは多分締まった高音で低音に降りると、その高音の喉のままで出してしまうために、低音がスカってしまうことではないだろうか?
基本的に彼女の言う音域の高音であれば、今日の出し方でしっかり出せるから、開いた喉でしっかり腰からの声が出せていれば、
そのまま腰をささえられていれば、自然にあるべき低音の声に戻れるはずである。

ただ出しにくいのはある、と思う。
低音の場合は、ブレスが間に入るのであれば、お腹を元に緩めることが効果的。
緩めることで、喉の緊張も解ける。
また、ブレスでは高く入れないこと。

また、ブレスを入れないのであれば、声を低音に落とす意識ではなく、逆に口より高く鼻腔に響きを入れるようにすると
スムーズに低音に移行できるだろう。

というようなことをほぼ1時間のレッスンで話したり実際にやってみたりしたのだった。
今回の彼女はかなり真剣で、何とか本物の声を手に入れたいという気概に満ちていたのでこちらも教えやすかったし、教え甲斐があった。
自分の趣味や感覚に慢心しないで、新しい世界を手に入れる、何とかしたい、という彼女の真剣さにこちらも打たれた。
今回こそ彼女が何とか目標を達成できるようにお手伝いしたい、と思った。