HT

今日は発声を少し高音に寄って練習してみた。
無理そうで無理でもないのが、彼の高音域。
高音に特化した発声練習を発想したのも、彼の軽い中低音の声からである。

恐らくもっと喉を開放的に、リラックスして使えれば高音はもっと伸びると思うが、
どうも下に押し下げて出そうという力みが強いために、声帯が合わない感じ。
そうだ、母音をエにしてみると、案外良いかもしれない、と思ったのも終わったあとである。

彼の声質は意外と重くなく、喉を高く合わせても大丈夫な感じである。

さて、今日はフィガロの「もう飛ぶまいぞ!この蝶々」から。
普通に低音をしっかり出そうとすると、響きが潜ってもがもがして聞こえない声になるから、
5度かむしろ、オクターブ上を出すくらい高い声を出すポジションで力まないで歌う方が良いだろう。
その方が演技的になるし、キャラクターが出てくると思う。

次にウエストサイドのMaria
これは、以前から変わらないが、最初の低音域の声の発声と、後半の高音である。
低音は、「もう飛ぶまいぞ」の低音と同じく扱えば、難しくは無いが、高音はちと厳しい。
どうしても下に力んでしまうからである。
そのために、喉が合わなくなってかすかすの声になってしまう。

無理ならいっそのこと、声量は強くなくてもファルセットで歌ったほうが、余ほどナイーブで良い。
それで出来るなら、本番も可であるとは思うが。。。

同じくミュージカルでロイドウェバーのWishing you were somehow againを歌った。
これは本来女性役だと思うが、ホセ・カレーラスが歌っているらしい。
良いメロディだと思うが、それだけに声質と歌唱力がとても問われてしまい難しい。
また、これも低音から高音まで幅が広く、声楽的な力量、粗がもろに目立ってしまう。

愛の妙薬の「人知れぬ涙」は、キーを落とせばずっと安定した歌で、ある程度安心して聞けるだろう。

結局最後にシューベルトの「老人の歌」を聴いてみて、シューベルトで統一するのが一番堅実で、声の安定があることで、合意。
発表会とはいえ、声楽レッスンの発表会でお客さんに不安を与えてはいけないだろう。
こちら側としても、本人が出来るだけの精進の成果を発表会では望みたい。

それにピアノ音楽としても品質が高いし、せっかくの会場である。
出来るだけの彼の精一杯の良い声と、良いピアノ音楽をお客様に聴いていただくことが、一番理にかなっている、と思うのである。

本人が歌いたいものを歌うことに合意するのはやぶさかではないが、それも程度であるし、何より何のためのレッスンか?ということであるから。