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フォーレの歌曲6曲、伴奏付きでレッスンとなった。
1曲目は前回勉強を始めた、L’aurore
1870年作のもっとも初期の作品だが、驚くほどのフォーレ世界の完成度の高さ。

ブレスから発声にいたるところの、準備。
子音の扱いも関係あるが、概ね浅い。
またフレーズ中の母音の響きも概ね浅くなってしまった。

綺麗な声質だし、音程も良いし、何となく聴けば何となく悪くないのだけど、いわゆるお腹からの声にならないし
母音の響きが全体に浅く軽い。

また、音符の扱いと言葉の扱いとの折り合いが、まだ出来ていないので、何となく音符を歌っているだけに聞こえることも、悪い意味での軽さに関係しているだろう。
そういう意味で、フランス歌曲の基本的なことを勉強するにはうってつけの曲ではないか?

次のPoem d’un jourのRencontreは、声は安定しているが、テンポが速すぎて歌詞を伝えようとする意図がまるでない演奏になってしまって、あまりに平板になりすぎた。
まずは、ピアニストさんに4拍子の基本をきっちり押さえてもらうこと。
その上で、歌詞をもっとはっきり歌う意図だけでも持って歌ってみよう。

3曲目のHymne
こちらは、テンポが遅すぎた。
あるいは、Allegretto vivoとある、Vivoがピアニストさんにはもっと感じて欲しいし、勿論歌手さんも、もっともっと感じて欲しい。
要するに単純にもっとロマンティックに歌い上げて欲しい。
発声の面で低音の難しさ、それは地声にならずに、深さと開きを持った発声を心がけること。

だが、どうも発声ことや何やかにやで、神経質になってしまったようだ。
朗らかに、楽しく、単純に、そしてその感じることをお腹から身体中で歌って表現して欲しい。

4曲目は後期のArpege
こちらは、最初テンポが遅すぎ。
神経質になってしまったので、テンポでどんどん持って行きたかった。
細かいことに拘らないで、どんどん歌い進むこと。情熱的な歌である。

5曲目にMandoline
こちらは早すぎ。
Rencontreのパターンに似ていたと言うべきか。
言葉で教えると、ますます神経質になって声が出なくなる、と思ったので、私が歌って範を示した。

不思議なもので、歌って聞かせたら、出なかった彼女の声が出るようになってきた。

最後にGreenを。
こちらも、良く言えば真面目なきちんとした演奏だが、悪く言うと何を歌いたいのか判らない歌になってしまった。
これも歌って見せた。
どうやら、自分の意図に反して、私はかなり崩して歌うように思われたらしいが、それでも、驚くほど良い意味でロマンティックな内容を伝える歌になってくれた。

極論かもしれないし、ある種の人たちからは嫌われるかもしれないが、例え音符の扱いが崩れたとしても、それでも、歌の根本である、伝えたい意図が伝わる演奏をしてくれたなら、どんなに素敵なGreenになるだろうか、と思った。

昔、M先生に良く言われた「ぼくたちは音符の番人ではないよ」と言う言葉を思い出した。