TM

今日は、ヘンデルのAh mio corから。
中低音が大分安定してきて、良い声質になってきた。
だが、この曲は誰しもがついついがなって、歌ってしまうのだが、彼女もそこまで行かないけどちょっと頑張ってしまうために、喉が締まった響きになった。
本人は多分出している感じがすると思うけど、思いのほかその響きは飛ばない。

最初にここに来た時から彼女の発声の問題として感じていたのは、声を前に、とか声の響きを集める、ということが行き過ぎていることで、締まった響きになっていることであった。

色々今までやって来た結果、まず中低音で、徹底して開いた息を使った発声を覚えることではないか?ということを考えてやってきて、そのことでとりあえず中低音が安定して良い声になってきたことが今の最大の収穫であった。

その上で、未だに強く残っている声を集めよう、前に出そうと言う意識から少し離れて、もっと
声帯を開いて、息を発声に関与させることで、共鳴を導き出そうということ。
これが今の彼女の最大のテーマだと思うし、それが上手く行きつつある、という実感がある。

この発声のメリットは、歌っていながら、声が明快に息のコントロールで響きになっていることが実感できることである。
この場合の響きとは、実際に声帯で振動する基音、息とその基音が混ざっている音、そしてその音が口腔内の開き具合で産み出される共鳴、の3つの要素だと思う。

歌声を息でコントロール出来ていることが、実感出来るからフレージングという感覚が生まれるし、響きの微妙は膨らみ具合もコントロール出来る。

また、そういうコントロールの問題以前に、声楽の響きの作り方のとても基礎的なことである、と私は確信した。
そんなことが実行出来るようになったのも、彼女の著しい成長の証だと思う。

例えば今日何をやったか?というと、息だけで口の開け方、喉の開き具合や、軟口蓋の上げ具合を変えることで、息が口腔内に当たった時に出る「ハ~」という共鳴の音を便りにして、
それを実際の声でも応用してみる、ということが、一番効果的だった。
具体的には、口の開け方として横開きにしないこと。極力口を縦に開けることである。
頬をへこませる意識で口の開き具合を常に意識して欲しい。

この開け方で軟口蓋を上げるためには、上唇を上にめくれ上げるような開け方である。
ライオンが大きな口を開けるように。
そうやって、実際の響きを勘案しながら、声の最良の響き、共鳴ポイントを探していくことである。

グルックのオペラのオルフェのアリアも、低音のせいもあるが、鳴らそうとしてしまうために、響きが締まって痩せてしまう。
鳴らそうとするのではなく、息の柱を出すように、あるいは息のオブラートで声の芯を包み込むように柔らかく中低音を扱うことで
響きとして美しいし、落ち着いた響きだし、共鳴効果が生まれて良く響くのである。

2点C以上になると、ついつい細くしてしまいたくなるが、そこに至る中低音の響きの太さのまま出そう、とすれば
必然的に喉を更に開けるだろうし、喉が上がらないはずである。
そういう中高音を狙って欲しい。

そんな風に中低音中心の曲を2曲歌った上で、最後に歌ってもらったO mio babbino caroが、今までの彼女では考えられないくらい
柔らかくて美しい高音の響きだったことが印象に残った。
良い高音の基礎は、決して耳に突き刺さる潰れた声ではないはず。
中低音からオクターブ上がっても、喉が変わらないリラックスした高音が可能になってきたのは、大きな収穫であった。

AM

発声練習は1点Aくらいから下降形で昇り降り。
中低音の以前のすかすかした響きは、基本的には変わらないとしても、声に芯がついてきたし、
口の開け方を教えれば、喉を深くすることも覚えて実現出来るので、高音にアドバンテージがある彼女であれば
もう充分使える中低音の声になってきた。

彼女の場合は、高音で喉を開くよりも、むしろ中低音で開くことを意識した方が、中低音は響く。
また、今日は特に発声練習で高音域の練習をしたが、高音域は開く以前に、舌根で喉を押し下げる癖を
取る事が課題だ、と感じた。

それは特に母音をアにすると傾向が強くなる。
特に2点Aを過ぎると、母音がアだと途端に響きが出なくなる。
この場合響きというよりも、声帯の振動そのものが出せなくなる感じといえば良いだろう。

思ったのは、母音をエにすれば、嫌でも舌根が下がらないからエにしてみようということ。
これが思ったより上手く行って、無理をしなかったが3点C以上行けそうな感じであった。
2点bくらいまでで止めておいた。

元々持っている喉が高音向けの喉なので、ちょっとしたコツを覚えれば、コロラチューラになれる素質はあるだろう。
ただし、コロラチューラの実際の歌を歌えるようになるためには、相当な意識を持たないと難しい。
譜読みも難しいし、実際にそういう声を出して歌うことが好きであること、そのことを苦にしないで自分で充分に練習できることに尽きる。

曲は新しいTu mancavi tormentarmiを練習。
リズム、音程が難しいので母音だけの練習から歌詞を付けて、という順番になった。
時間がかかっても良いので、特にリズムには充分気をつけて欲しい。
どちらかと言えば、音程は間違えていても、リズムを間違えると、後々直すのに大変なのである。

最後にStar vicinoを。
大分良く歌えているが、所々高音域での声の響きなどを調整して終わった。
大分中低音も使えるようになったので、後は譜読みをどんどんして馴れて欲しい。
色々な曲に当って行くことで、譜読みの実力も付くだろうし、音楽的な対応も身に付いていくだろう。