MT

今日は伴奏合わせ。プーランクのTel jour tel nuit、6曲とも良く歌えている。
強いて言えば、彼の場合強弱の弱のスタンダードがやや低いかな。
もう少し全体に声を響かせることを積極的に考える音楽にした方が良い、
テンポがそういうことで変わってくるだろう。

Bonne journeeは、バスの刻みに注意。
静かな部屋でちくたくと時計の針が刻む音が表す静寂感と、そこに居る主人公の秘密めいた幸福感をイメージして!

前述の声のPの表現で弱すぎないように、特に、Une herbe pauvreなど。
逆に、高音のFの表現は、やや力みすぎの感もある。
バランスを大切に!

Le pontは、最終的にどんな音楽にしたいのか?
この詩における、アポリネールの眼差しはどこに向けられているのかな?
あるいはその眼差しは怒りなのか、悲しみなのか、慈しみなのか?
それは、プーランクが音楽に答えを書いていると思う。
あまり一所懸命になり過ぎないで、流れるように。

SM

今日は伴奏合わせだったが、非常に良い出来であった。
どの曲もだが、何より集中力が良く、音楽を声を大切に扱っている姿勢が、とても良かった。
デュパルク、高音は怖がらずに出す方が未だ良い。音程を怖がって抑えるとかえって、中途半端ンになる恐れがある。

ドビュッシー非常に良い。音程も自然に決められるようで、聴いていて安心。
中低音も良い。発音も概ね良いと思う。
Fの発音はいつも注意して欲しい。

マスネのエロディアードも、音楽の構成がしっかりして、表現として安定した。
ピアノの伴奏がその構成を確実なものにしている。
今日は細かい手直しをしたが、もうこれくらできれば後は本人の集中力でいかようにでもなるだろう。
私としても、彼女に教えられるべきこと、理解してもらえることはすべて教えたつもり。
この段階でここまで出来たので、こちらとしては一安心である。

TT

今日も安定した歌唱で、通しを何度か。
Lucrezia Borgiaのアリアは、伴奏音楽は活き活きとして欲しい。
滑らかで控えめな音楽だが、タッチは眠くならないように。

最後の2点bはなるべく伸ばして、良い声を聞かせて欲しい。
非常に滑らかで美しい高音で、感心するくらいであるから勿体無いではないか?

この曲に限らず、長期的な発声の課題としては、アとエの母音がやや浅くなること。
特に中音域で目立つ。OAEという順番で、響きを統一すると良い。
だが、今はあまり気にしないで欲しい。

モーツアルトのIl repastoreも、良く勉強したと思う。
後は、本番への集中力だけを高めるべく、これからを過ごしていただきたい。
あまり拘ると、度ツボにはまって、かえって良いものも悪くしてしまうだろう。
変にファナティックに本番に臨むよりも、リラックスして、楽しく気持ちの良い本番を迎えよう。その方が彼女らしい透明な明るい歌を歌えると思う。気楽にどうぞ!

WH

ドナウディのO del mio dolce ardorは、とても良い。
声もシリアスな声だし、綺麗なビブラートが気持ちよい。
時折高音で当らない声になる点は注意。
ピアノも、彼女の歌を助長、あるいは助けるように、弾き急がないことを大切に。
また、逆に彼女の歌の足を引っ張らないように。特に出だしの伴奏の刻みは、流れるようにお願いしたい。

ドニゼッティのIl barcaioloは、後一歩!
懸案の中間部のカデンツに注意。
再現部の音程の問題よりも、むしろ最高音2点bの声である。
そして、その前の2点Gの声もである。

どうも下顎で力みすぎではないかな。この後歌ったDorettaのアリアもそうだが、下顎を前に出して喉を開こうとする傾向が慢性化していて、そのために綺麗に当らなければならない高音の声の響きが、開きすぎてしまう。
この曲の場合、それが悪い方に行く。
それは、ブレスが足りないせいもあって、声が引っ込んでしかも細くなってしまう。
ここだけは要注意!再現部の音程は大丈夫!落ち着いて安心して出て欲しい。

Dorettaのアリアは、前半のFolleなどの高音のMezzavoceは、逆に喉を良く開いてよいのだが、
ここ一番欲しい声量、前に出た響きが物足りないのは、これも前述の下顎を出す高音発声のせい。
しかも、そのままフレーズを降りてしまうから中音域まで音程が♭になり勝ちなのは、要注意。
基本的に下顎をあまり前に出す発声は好ましくないが、今の時点では、出来上がっている高音のMezzavoceは良いだろう。
下顎は後ろに引くように使うことや、もっと上顎を開ける意識も大切にして欲しい。
でも、基本的には良く歌えているから、後少し!何とか頑張って欲しい!

FT

前回に引き続き、彼なりの努力で見つけた声のポイントが、発声の安定を導いたようで、こちらも一安心。
喉が上がってどうにもならなくなることはこれで回避出来たと思う。

だが先生としては、今まで教えたことが無駄になったとは思えない。笑
最終的には歌う彼が良いポイントを見つけてくれたことが一番嬉しい。
まだ喉の負担の大きい歌い方だが、それでも喉は随分と開いてきたと思う。

どの曲も特に指摘すべき問題点はないが、低音はきちんと喉の開いた腹からの声を出すべきだろう。高音の発声との兼ね合いがあるが、それも恐らく感覚的に彼がバランスできるだろう。

Tostiは、活き活きとした快活な音楽であることを忘れないように。