AY
伴奏あわせで、いきなり1回目は少し危なっかしさがありはしたが、無難にVoi che s’apeteを歌ってくれた。
ブレスが浅いような喉が高いような、ちょっと踏ん張りが効かなさそうな感じがしたが、どっこい持ち応えた所に、彼女の成長が感じられた。
そして、歌うに連れて声は調子を増して、スザンナのアリアを歌う頃にはもうまったく心配なしの状態になった。
それで、今日はケルビーノのアリアは、テンポに対して歌が遅れないように、ということから始まったと思う。
これは恐らく声が温まってないので調子が出ないせいもあっただろう。
4分音符=64くらいで、歌は絶対にピアノに後れを取らないように。テンポは声に左右されるので声を気にしすぎないことである。
声も大事だが乗りも大事なので。
スザンナのアリアは、色々やったと思う。
ピアノのテンポ感が大事だが、音楽は子供っぽくならないで、ゴンドラのような気持ちの良い揺れ、みたいなものだろうか。
色気というか。
このアリア、非常に演技力のある音楽で、単純なようでいて実はそこに演技をさせる隙間を作ってある凄い音楽なのだ。
歌に関しては、最後の高音に至るフレーズの短いブレスの間合いを何度か練習したことと、レシタティーヴォであった。
レシタティーヴォは歌声なのだが、歌っている集中よりは演技を意識した方が良いと思う。
要するに抽象的な音楽よりも、言葉の意味そのものにイマジネーションの集中を置くことである。
歌そのものは、もう声をいじる必要がないと感じた。
それは、もちろん完成したと言う意味ではない。
いまいじって、かえってドツボにはまって本番に悪くしても意味が無いからである。
まあ、それくら調子は良いからこれを維持して欲しい。
それよりも、スザンナのアリアの時は、特にレシタティーヴォの間奏や、アリアの前の前奏などでは、実際のオペラの舞台演技をイメージして歌って欲しい。
それは、見た目の振り付けをする、という意味ではなく、頭でその風景をイメージしているだけで、歌手の間奏中の表情がとても良くなるからである。