MT
ギター弾き語りによる、ダウランドのマドリガル。
注意点で一番気をつけて欲しいのがイの母音。
彼の場合、調音点の問題なのか、イだけが響きが変わって浅く響いてしまう。
その響きは平たく、薄い印象があるので、目立ってしまう。
鼻腔共鳴だけが先走ってしまう感じなので、喉を良く開くように唇を突き出すようにした発音を覚えて欲しい。
後は、これも発音だが、英語だと語尾に子音が来る閉母音が多いが、語尾の子音は、次の単語の語頭の子音になるべく付けるようにして処理した方が、母音が伸びて歌としてレガートだし、発音としても、単語単位で切れないために、朗読の流れにも合うわけである。
後は歌詞を直截に表現する意志を強く持って歌うこと。
このことは、歌詞をどう朗読するか?どう語るか?という歌う以前のイメージが大切なので、やはり語り、朗読の練習は必須であろう。
当然意味を良く把握した上でである。
概ねテンポが速すぎたり、声が軽すぎることが散見されたが、これも歌詞と音楽の関係をもう一度良く照らし合わせて、テンポのイメージを充分作って練り直せば、断然良くなると思う。
次回を期待したい。
HA
発声練習は声を温める程度に、高音も3点Dくらいまで昇ってみた。
3点Cを超えると、意外なほど軽やかな声の響きに変化するのが彼女の声の特徴。
コロラチューラを目指せる喉だと思う。
その分、2点G~bの間が重くなり過ぎないように注意が必要だろう。
かなり高いが3点Cの声から下に下りていって、響きを確認すれば、軽い出し方がわかると思う。
高音側の響きで下の響きをある程度規定する方法は有効だ。
イタリア古典からChi vuol la zingarella
良くさらえている。言葉さばきも軽やかで素早さが気持ちよい。
前半の低音域の声が、喉を掘らないでもう少し高く集まればほとんど言うことは無い。
低音は、下顎を動かさないで発音、発声する方法を練習すると、響きが高く前に集まるだろう。
モーツアルトのモテットからExsultate,jubilateを。
譜読みが未完成で、特に16分音符で長く続くメリスマの部分が難しい。
これは、1拍単位(16分音符4つ)単位で、丁寧に響きを確認、音程を確立して、少しずつテンポを速くして行くように
練習が必要だろう。
急がば回れで、このメリスマだけは丁寧に確実に練習すれば、ものになると思う。
次にツェルリーナのVedrai carino
これはとても良く出来ていた。彼女には合っている曲だと思う。
最後に同じくドン・ジョヴァンニのドンナ・エルヴィラのMi tradi qulle l’alma ingrataを練習した。
まだ譜読みが未完成で、特に最後の盛り上がりが難しい。
夜の女王にも似た、半音階的なコード進行で難しいのだろう。
ここ一番、練習で馴れてもらいたい。
SM
発声練習の声は安定している。
高音も2点bまでは締まらず、音程も乗って、細く綺麗な高音域になった。
低音も、コツがつかめて安定している。
このところ続けて勉強しているフォーレ「月の光」
歌唱の際のリズムを勘違いしやすいので、楽譜にリズムの区分けを線で書いてもらった。
実際にそれを見ながら歌ってもらうと、リズムが正確に処理出来るようになった。
リズム区分を書き入れたものを、目で見ながら歌うことで、良い集中力が増したのだと思う。
その分、声が抑制されていたが、それが逆に良い抑制に繋がっていたのである。
楽譜に書き込んでいるところを見ていると、素早く書き込めるから読譜の認識力は高いのだ。
では、なぜ実際に歌うと間違えるのか?
恐らく声を出す集中力に、エネルギーが一極集中してしまっているのではないか?
改めて、楽譜に書き込んだものを目で見て歌うことで、エネルギーが、良い意味で分散したと考えられないだろうか?
やはり何事もバランスなのではないかと思った。
フォーレChanson d’amour
今度は、声が少し口先になってしまった。
一番最初のフレーズは、声を押さえないでしっかり出した方が良いと思う。
最後のフレーズだけはPPをしっかり意識して欲しい。
ルイーズは、後もう一歩。
ブレスをしっかり意識して、テンポが早過ぎないで、歌い進めるように。
特に前半のロングトーン部分は、あまり早くし過ぎないで、落ち着いて処理するように。
きちんと、やり直すと、とても良くなった。
後は、このテンポで定着出来れば良いと思う。
最後の高音のPPはとても上手く出来た。
AC
デュパルクの「旅への誘い」は、こちらが指示したことはほとんどきっちり勉強してくれていた。注意点は、やはり低音のピッチである。少しこもって暗くなると、ピッチが低いので、和音の中に埋もれてしまう。5度上を出す声をイメージして出すと、丁度良い明るいピッチになるだろう。
「哀しい唄」は、出だしの声、やはりピッチである。高く明るく。
そして表現としては、説明的にならず淡々と、というイメージ。
具体的には真っ直ぐなフレーズ感、ノンビブラートな声である。
DansのDの子音とピッチが綺麗にはまった出だしの声の入りを大切に。
最後のDans tes yeux alors je boirai,Tant de baiser et de tendresseのフレーズは力強く!
ドビュッシーのマラルメの詩による「静思」は、実に難しい曲だが、すんなりと譜読みをしてきたのには驚き。
こちらのピアノ伴奏の準備が出来ておらず、困るくらいであった。
この手のサウンドに対する感覚は鋭いので、今後も更に伸ばして行きたい。
最後にドビュッシーの「噴水」
これも中音域、ピアノの伴奏がきちんとしていないので、悪かったが、ピッチはやはり高く明るく取って欲しい。和音の上に乗るように、である。
また、冒頭のTes beaux yeuxの入り。Tの子音はドンピシャに入ると、聞こえないか、遅れてしまう。
微妙に早めにTの子音を出すことで、母音の響きがドンピシャになる、と考えるべきである。
フレーズの入りは、声を抑え過ぎないで、ある程度の強さでアタック出来れば、上記のことは自然に処理できるだろう。
MM
モーツアルト「イドメネオ」のアリア。
最初は、2点Cから上の声が、裏返って支えの無い声になってしまった。
先ずはこれを極力なくすること、である。
この発声については、今まで何度もやって来ているので理解していると思う。
顎を出さず、また下顎を降ろし過ぎないようにし、上顎だけでアーティキュレーションしてみると良いだろう。
そして発声云々の前に、曲調と内容から察して、歌の表現意図を良く理解することであろう。
自ずと声にそれが出てくれば、発声につながると思う。
音楽には明快にヒロイックな調子があるわけだから、それを直接に歌声に出すべきである。
平井康三郎の歌曲「うぬぼれ鏡」
曲のコンセプトがウィットに富んだ曲で、明快にソプラノの声を要求しているイメージがある。
彼女には難しさがあるが、それも勉強になるだろう。
途中「うふ!」と言葉で言う箇所があるが、これは真剣に言わないと、面白くない。
声の扱いとしては、日本語のせいもあるが、喉を深くしないで明るい響きを狙った方が良さそうである。
特に最初のあ~で始まる2点Dの響きなども、思ったより喉を浅く、むしろ高い響きを狙ってちょうど良い感じ。
最後の最高音の2点hは予想以上に抜けた良い声が出せていた。
この声だけを聴くと、完全なソプラノの声も想像できる。
更に高い3点Cくらいの声から、下に降りて声を作っていく方法も、今後は試したいと思った。