ゲオルギュー
http://youtu.be/lNKXnxL0yTc
フレーニ
http://youtu.be/CEK6qGa8z9Y
ぼくが音大に入って、初めてオペラのアリアらしいアリアを聴いた最初がこの曲。
どこか懐かしい、手が届きそうなくらいの古い時代を思わせるノスタルジックなサウンドに思えた。
この曲が?と思われる方は多いだろう。
その辺りのことを書いてみたい。
ぼくが音大に入った頃は1970年代も終わる頃。
改めてエリック・サティの音楽が見直され出した頃で、20世紀初頭の大衆的な音楽の雰囲気が伝わりだしていた。
渋谷にはパルコがすでにあって、確かこのころだと思うけど、パルコのCMに「カサブランカ」という1940年代のアメリカのモノクロ映画の1シーンを背景に、サントラのAs time goes byのインストが使われていて、否応なくこれからの新しい時代がポストモダンである事を、感じさせてくれたものだった。(もちろん、その時はポストモダンなどと云う言葉を知らなかったが)
http://youtu.be/Wo2Lof_5dy4
ぼくにとってのポストモダンというのは、80年代のバブル文化などとは無縁の、むしろ過去にこそ美のモデルはある、というような気分であった。
しかもその過去というのは、近代以前ではなく、産業革命が一段落した、20世紀前後の時代の雰囲気を、懐かしく思う気分だった。
一般的なクラシック音楽愛好家にしてみれば、20世紀初頭は懐かしいと言うより、新しいのだろうけど、ぼくにとっては懐かしい時代なのだ。
日本で云えば明治後期から大正にかけて、永井荷風や、谷崎潤一郎が、日本の過去の美意識に目覚めて、作品を作っていたのと同じように。
そういえば、大正ロマンの竹久夢二は「どうして自分は江戸時代に生まれなかったのか?」と嘆いていたとか?
それからうん十年(笑)どうもこの曲を教えていても、あのノスタルジーを思いだすことなく、教える身になっていたけれど、改めて、いろいろな動画を見て、あの時の印象を思い出すことが出来た。
その意味では、ゲオルギューの歌い廻しは素晴らしい。声の質を柔らかくして、メロディラインに微妙に修飾を付けたような歌い回しが古雅な感じで素敵。
パリの旧い地下鉄入り口で有名な、ギマールのアール・ヌヴォーのデザインのような、装飾の美、それも東洋に影響を受けたような雰囲気が漂っている。
それに比して、フレーニの声はやはりイタリアのあくなく声の美の追求を思わせる歌声。
鋭さ、明るさ、ソプラノの声が要求される響きをこれでもか!とばかりに聞かせてくれる。
フェラーリのエキゾーストノートがテノールサウンドに比して語られるけど、ソプラノも同じ嗜好を持っていると思わせるのが、イタリア的声の美意識だと思う。
世代は違うが、どちらも素晴らしいソプラノ歌手だ。
ムゼッタのワルツに想う
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