一つ目は、メッサジェのオペレッタ「ムッシュー・ボーケール」「の中の一曲。
フランスのオペレッタは日本では全くマイナーですが、これくらいフランスらしい作品群もありません。
単純素朴で、温かみがある。とても庶民的な音楽です。
私は、こういう気取らないのが大好きです。
声楽をやる方には耳を傾けてほしいのが、歌手さんの発音。
録音で聴く限りは、ちょっとしつこいくらいの発音が、このようなテアトルものでは、必須!という典型みたいな発音ぶりです。
これくらいやらないと、良く判らないのです。
メロディーを何となく綺麗に歌っても、実際はフガフガしてしまう。
彼女の歌う発音を聴いていれば、例えば狭いAuとかOuなどの発音が、狭く発音されているから、言葉が判る、という意味が判って頂けるでしょうか?
声の響きが通るのだから、良く開けたほうが良い、という考えは間違っているということが、良く判る例だと思います。
それぞれの言葉による歌のご専門の先生方がいるからあえて他の言語のことは言いませんが、お願いだからこの狭母音と開母音の違いを出す必要は判って欲しいと思います。
次は、ドビュッシーの自作自演です。グラナダの夕べ
最初聞いた時、あれこれは!ロールピアノではない本物の録音が出て来たのか?
というくらい、良く出来た演奏でしたが、やはりロールピアノの一種の
ウェルテミニョンという、自動再生のピアノです。
これは、19世紀末に開発されたものらしく、ドニゼッティやショパンのもあるらしいですね。
もちろん、演奏のひな型はドビュッシーです。
これはロールピアノよりも、オリジナルの演奏の再現性が高いようです。
実際に聞いていて、本当に本人が弾いた生録音だと思ったくらいです。
楽譜を見ながら聴いていて気がついたことは、とても自然なルバートが構築されて、
物理的な音の遠近が感じられることでした。
遠くから聞こえてきた、グラナダの音楽のイメージが、近づいて来て、また遠くに去って行く様子が、本当に見事に表現されていると思います。