声楽は、身体を楽器にする、などと良く言います。
言葉つらでは、判る気がしますが、実際は、なかなか分かりにくいものです。

なぜ判り難いか?
声とか歌うということが、声楽をやる以前にかなり日常的な行為になっていて
身体を楽器にするという意味が、体感的に判り難くなってしまっている、ということではないでしょうか。

フルートでも良いし、トランペットでも良いでしょう。
一度でも触ったことがある人なら判りますが、簡単に音が出ないでしょう?
音を出すだけで、とても習熟が必要です。

声楽も実は同じくらい、難しい面があることを、理解してほしいです。

さて、楽器としての声楽の特徴を、他の楽器に置き換えると何でしょうか?

これは一概に言えませんが、弦楽器、バイオリンやビオラ、チェロなどと比較するのは良くありますが、
また、管楽器も良いのではないか?と最近よく思うのです。

特に木管楽器に多い、リードを使った楽器です。

リードというのは、大体が竹で出来た振動体を息で鳴らして響きを作り、胴体で共鳴させて音程を作る楽器ですね。
リード楽器を一度でも触ったことがあると判りますが、リード部分を鳴らすのにはとても訓練が要ります。
力んでも駄目だし、弱くても駄目。ちょうど良い頃合いがあるわけです。
その頃合いが判ると、するすると上手く行きます。

ここまで行くと「木管楽器なんて買うだけで金がかかるじゃん!声楽やってんのに、これ以上金掛けられないよ」!と思うでしょう?

そう思う方は、一度葉っぱで音を鳴らして遊ぶ、葉笛を練習してみてください。
これ、とても難しいですが、うまく行くととても良く響くし、結構メロディーが奏でられて楽しいですよ。
という、私、実は音を鳴らすのが精いっぱいでメロディを吹けるようになるあではやったことがありませんが!

これはお遊びですが、小学校のころに吹いたブロックフレーテでも良いから吹いて音を出してみてください。

音を出す、ということの意味がとても新鮮に感じられると思います。

声もまったく同じですよ。新鮮な気持ちで良い声を出しましょう、その声を探しましょう!

楽器の音色を探すように・・・

 

声楽は、このリードに当たる部分、声帯の扱い方、震動のさせかた、と極言しても良いでしょう。
このことに、習熟するためには、息の使う量、力加減、そしてリードに当たる部分の響きを出すことに、大きく関わる、喉の開き、
軟口蓋の上げ方、そしてそれらを理想的に扱うための姿勢、そして姿勢が呼吸を上手く導き出すことにも関係します。

それらを駆使しながらも、また声の響きに敏感になることがとても重要ですね。

なんとなく練習して、なんとなく歌って、歌えたら出来た~!なら簡単で良いのですが、それだけでは本当の良い響きは生まれません。
良い響きを生み出すためには、日々、このリードに当たる声帯の響かせ方を探さなければなりません。
それは、何年やっていようと、未完成であるならば、完成するまで探さなければならないのです。

何年もやっていると、もういい加減いいだろう、と思いますが、何年やっても、出来ないものは出来ないし、良くないものは良くないのです。
お稽古ごとというのは、こういう厳しい現実に向き合って、我慢して耐えて、その先に本当の素晴らしい世界が開けるものです。

最後に厳しいことを書きましたが、書いている本人も出来る範囲で日々良い響きとは何か?声楽に必要な歌声ってなんだろう?って考えながら
生徒たちを教えて、自分の練習を続けています。
上手くなったから、どうなるわけということも、もうないのですが、関わった以上とことん追求するのがライフワークと思ってやってますよ。
皆さんも、少しずつで良いですから、一生かけて素晴らしい声の響き、歌声を追及してください。