総評

今回は、10月28日と11月18日に4名ずつで行うジョイントコンサートを控えていたせいもあり、出演者は少なめでしたが、結果的にちょうど良い長さでした。お客様にとっても飽きない長さだったのではないでしょうか?このところ定着している昼夜二部のコンサートは、おおむね昼の部がレッスンに来出して3年くらいの方が多いですが、前回に引き続いて成長の跡が著しいです。特に、3年ほど経っている5名の生徒さんたちは、それぞれの課題を乗り越えて成長の跡を残してくれました。入って数カ月の3名の方は、いずれも本番経験が少ないですが、こちらの心配をよそに、予想以上の健闘を見せてくれました。総じて、アマチュアらしいけれんみのないステージで、爽やかで後味の良いコンサートを作ってくれました。ありがとうございました。そして皆さんおめでとうございました。

出演者イニシャル UM FY ST EM ADY AS ON IA

 

UM
今年の4月にソプラノのアリアを持って来られてレッスンを始めたのですが、チェンジ以降の処理が難しくイタリア歌曲で勉強を進めました。
今回のプログラムの2曲目が発声で心配がありましたが、結果的に成功したと思います。1曲目から力まないで歌い出したことが良かったです。緊張すると余計に力を入れ大声になってしまうものですが、クールに対処できていたことが高音発声の結果につながったと思います。
この状態を維持して着実に訓練を続けて行けば、アマチュア声楽家として良いレベルに到達できると思います。おめでとうございました。

プログラム:イタリア古典歌曲集より「心親しき森よ」「恋する蝶のように」「すでに太陽はガンジス川から」
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FY  
彼女も4月からレッスンを始めましたが、本番直前まで声の扱いに迷いがありました。喉を押さないノーブルな声ですが、高音のチェンジが難しく、2点Gを過ぎると立ち往生することが続いていました。
しかし、発表会直前からふっきれたか、中音域でも声量が出るようになりました。そのまま本番に来てくれました。高音も綺麗にフレーズが出せるようになっていました。日数的に短期間でプログラムのレッスンをしたので、完全暗譜は難しい課題だったと思います。なるべく普段から、暗譜を目指して譜読みや、練習をして行くと良いでしょう。おめでとうございました。

プログラム:カッチーニ「アマリッリ」モーツァルト オペラ「ドン・ジョバンニ」よりツェルリーナのアリア「ぶってよ、マゼット」
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ST 今年3月からレッスンを始めました。今回の発表会、第一印象は身体の芯が真っすぐでぶれない姿勢と、その結果の丁寧な歌い方でした。姿勢、発声法を決めて、きちっと歌っているために、音楽が崩れないのが美点です。緊張のせいか、出だしの響きがやや弱かったですが、歌うに連れて調子を戻していたと思います。
ただ、ピアノ伴奏のテンポがやや速めだったのが惜しまれました。ブレスがまだ浅いようなので、テンポの流れが一方的に速くなるとお腹が使えなくなると感じました。今後は、高音の発声だけを捉えないで、中低音の発声の延長として高音発声を考えることで、発声のきっかけがまた見つかるかもしれません。おめでとうございました。

プログラム:イタリア古典歌曲集より「お前を賛える栄光のために」「ああ私のやさしい熱情が」「貴女への愛を捨てることは」
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EM
今回3回目ですが、本番に少し慣れてきたのでしょう。初めて出た頃のとても緊張していた様子がなくなったと感じました。
そのため、安心して3曲を聴き通せました。レッスン時とリハーサルでピアノとのアンサンブルが、一部心配が残りましたが、本番は問題なく通過出来ました。レッスンでいつも聴ける、声量のある美声を本番でもその通り披露できたと思います。
リハーサルで不安定になった高音発声も成功しましたし、本人も満足の出来だったのではないでしょうか。ドイツリートが好きな方ですから、今後は歌詞発音と母音発声の関係を訓練して、更に歌詞の語りに意識を向けた歌を歌えるよう努力してください。おめでとうございました。

プログラム:シューマン「リーダークライス」より「異郷にて」「間奏曲」「森の対話」
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ADY
数年通って苦労して勉強してくださった発声が、ようやく改善されて来て、響きが前に出るようになって来ました。
歌い慣れた曲、好きな曲ほど、自分の発声の癖が出るのでしょう。新たにフランス歌曲を選んだのも、好結果につながったのかもしれません。課題としては、狭母音、特にUなどの喉だけを開けやすい母音ほど、喉を開けようとしないで鼻腔を意識出来るようになって下さい。
喉を開けることだけが大切ということはありません。むしろ喉を締め気味にした方が、響きが出ることもあります。発声を柔軟に捉えて、結果を大事にしてください。おめでとうございました。

プログラム:フォーレ「イスファハンの薔薇」「月の光」プッチーニ オペラ「ラ・ボエーム」よりミミのアリア「あなたの愛の呼ぶ声に」

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AS
ショーソンの2曲、なかでも最後の「リラの花咲く頃」がもっとも良かったです。
歌詞の内容が音楽と共に直截に伝わってくる好演でした。フォーレはもう少し声の洗練とレガートな歌唱が欲しいと感じました。
これは時間がかかることなので仕方がありません。ただ、結果的には音楽の良く伝わる好演でした。このように、彼女は本番の成功率が高いです。
人を前にすると能力を発揮するという点で、ステージプレイヤーに向いているのでしょう。声楽は、ある程度のレベルに達すれば、発声の課題があってもそれを乗り越えたパフォーマンスが成立するところがあります。特に歌曲にはそういう側面があります。
その意味でも歌曲の心のこもった歌を歌う部分に才能を感じます。勿論、発声の課題を乗り越えながら、歌曲の親密な音楽世界を開拓して云って頂きたいと思います。
おめでとうございました。

プログラム:フォーレ「祈りながら」ショーソン「蜂雀」「リラの花咲くころ」 TOP

ON
2曲とも、思い切り歌う歌いっぷりがとても好印象を残しました。やや、中音域で頑張り過ぎてしまったせいか、最高音の響きが薄くなった感もありますが、2点hの高音をあれだけ息を伸ばして歌えれば文句は出ないでしょう。
今の発声フォームで、この広い音域を普通の声量で歌えているわけですから、充分と思いますが、発声を変えようとすると相当ストレスだと思います。
今後はレパートリーを変えてみることや、高音発声だけではない歌曲ものなどに挑戦することで、自然に良い意味での発声フォームの変化が起こるのではと思います。素晴らしいピアニストを傍に抱えておられるわけですから、もっとレパートリーを拡げてみてください。おめでとうございました。

プログラム:ナポリ民謡クルティス作曲 帰れソレントへ プッチーニ作曲 オペラ「トゥーランドット」より「誰も寝てはならぬ」
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IA
久しぶりに出てくれました。6年前と変わらない柔らかく艶やかな声で美しいフランス歌曲の醍醐味を堪能させてもらいました。本人の弁によると緊張して、上ずって・・と云われていましたが、云われないと判らないレベルで、まったく問題を感じませんでした。
ただ、そう言われて感じたことのは、歌う時に顔があちこち動く癖、あるいは左を向いて歌う癖、などどこかに肉体的なストレスを感じて歌っているのかもしれません。
我慢して真っすぐ立って、動かないで歌う、ということも挑戦して見ることで、声と身体の関係が見えて来ると思います。そして、そのことで音楽が変わるきっかけになるでしょう。今後の課題としてみてください。おめでとうございました。

プログラム:シャブリエ「幸福な島」ドビュッシー「麦の花」アーン「星なき夜に」フォーレ「ネル」デュパルク「悲しい歌」
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