アマチュアの皆さんも好んで取り上げる、このアリア。
たくさんの歌手が録音を出していますが、ソプラノとしては古典的なこの歌手の歌い方、声が好きです。
最近のソプラノの録音では、最後のPiuをPPにする方が多いようです。
確かに表現的には適っていますが、技巧だけが前面に出ているようで、違和感を感じることがあります。

私はイタリア的な、開放的な声の使い方が好きなので、なにか強弱を強調して作り上げたような表現をあまり好みません。
歌曲歌手で有名な私の師匠のモラーヌでさえ、絶対にファルセットを使いませんでした。声の強弱と言うよりも、声質の違い、声の色の違いにこだわっている人でした。

録音を聴いて感動して、自分もやったみたい、こんな風に歌ってみたい、と思われるのは当然とは思いますが、初心者からそのような凝った表現は
発声的にもあまり上手く行かないし、むしろ有害なことがあるのです。
喉の使い方が判らないうちから、弱声にこだわることで、声門の閉鎖の仕方、響きの作り方がわからないまま進んで行くと、あとで取り返しがつかない結果になるでしょう。

息を楽に吐いて、自然なビブラートがロングトーンにかけられるようになってから、弱声というものが、どのように出来るか?
と考えるくらいで、ちっとも遅くありません。
まずは、声は解放的に使って歌えるようになってください。