1年ぶりのルーテル市ヶ谷センターでの発表会。アトリエムジカCでは、今まで何回も使ったホールですが、改めて良いホールという感を強く持ちました。

歌曲を歌って広過ぎず、オペラアリアを歌って狭過ぎない。ピアノ伴奏の声楽コンサートには、うってつけのホールだと思います。
声量の無い方からある方まで、相応に楽しめるホールです。

発表会として振り返れば、今回ほど長く続けて来た方の安定した演奏が光ったことはありません。本番経験の多さは、結果に表われるものであるとの意を強くしました。指導する者としては、指導の難しさをひしひしと感じた発表会となりました。

それは、発声の問題と歌心の問題という2つの要素です。2つの要素は不可分であり切り離せない、といういわば当たり前のことが改めて課題となりました。

たかが声楽、されど声楽。もっと気楽にやれば良いだろうとも思うのですが、みなさんの熱意に動かされて一所懸命やってしまいます。
ともあれ、皆さんの発表会参加と熱演に、心からの拍手と感謝の意を表します。おめでとうございました。
各出演者の写真をクリックすると、その動画演奏が開きます。

各出演者の感想(イニシャル)
OS SE WN ST TSS ASY EK ON OM GH

OS

ohiカルメンの2曲「ハバネラ」と「セギディッリャ」を歌ってもらいました。
恵まれた良い持ち声で、演技への気配りや表情、姿勢などステージ映えのする方です。発声はまだ改善の余地があると思いました。
歌詞を歌う中で、細かい音符の声の響きに留意されると、よりクラシカルでレガートな歌唱になります。
正しくしっかりした子音発音と母音発声との関連をより追求し、訓練していくことで、それが可能になると思います。

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SE
saitoイタリア古典歌曲集のNel cor piu non mi sento
かなり気合の入った歌声で、良かったです。
教えたとおりの歌声による表現が実現出来て、こちらも目論見の正しさを確認出来て良かったです。「初恋」も良い集中の歌声でしたが、こちらもNel cor piu non mi sentoくらいに、声を張るところは張っても良いなと感じました。また、次の「見上げてごらん、夜の星を」
こちらは、以前からレッスンを続けてきましたが、発声についてほとんど言う気が起きないくらい、本人の歌う集中力の良さが光っていました。というのも、機械的な発声の理屈を言うと、その集中が壊れてしまうと思えたからです。今回本番を聞いてみて、これくらいのホールの大きさになると、やはり声のテクニックは覚えたほうが、本人の意図する音楽がより発揮されたのではないか?と思いました。

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WN

watanabeフォーレの2曲「5月」と「河のほとりで」とショーソン「はち雀」を歌ってもらいました。
歌いだしは、緊張と喉の冷えがあったのか、やや響きが出ない感じでしたが、歌うにつれて調子を戻し、1曲目のうちで調子を出せました。
あとは、いつもの彼女の調子で、よく歌えていましたので、安心して、3曲の音楽を楽しむことが出来ました。
200名のホールでも過不足なく音楽を伝える、声のテクニックと歌唱力があると思います。
課題は、口を開けて発声できるようになること。レッスンでも教えてきましたが、口が開かないのは喉の扱い方に関係があるのです。
歌いだしで声がかすれやすいのは、この口を開けないで響きを出そう、という無意識の発声による影響がある、と思います。
歌いながら口を開けていく、という一点を今後はより意識してください。

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ST

shimazakiリハーサルでは、ホールの大きさに気圧されたか?息の流れない発声になっていたため、息を流すことを確認。その甲斐あって本番は、息が流れる音程感の良い歌声になり、良かったです。モーツアルトの「フィガロの結婚」から「スザンナのアリア」とRidente la calmaを歌ってくれました。2曲とも長期にわたってレッスンをしていたので、落ち着いた演奏でしたが、発声的に、喉を下げようとする無意識が働いたようで、響きが喉深く入り込んでしまいました。歌いながら、いつも舌に意識を戻してみてください。舌が固まっているのが感じられると思います。その時に、舌先を少し出すような舌足らずな発音をしてみると、改善するのではないでしょうか。更に本番を数多く経験して行くことで、自然に出来るようになると思います。

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TSS

toshimaショーソンの「はち雀」と、ホフマン物語の「オランピアのシャンソン」を歌ってくれました。後者は、お子さんが手伝ってくれて、ネジまきをやってくれて、楽しいステージとなりました。
今回のステージ全体の印象としては、中高音~換声点にかけて、声の響きが前に出てきており、良く響いていました。
低音域は声が前に出てこないですが、不安定な印象はありませんでした。オランピアのシャンソンも、レッスンでは最高音が力んでしまい音程が決まらなかったですが、本番は良かったです。声のイメージを持っている方なので、練習を積み重ねて本番を重ねる毎に更に良くなって行くでしょう。

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ASY

ashizawaグノーの「セレナーデ」「アヴェ・マリア」そして中田喜直の「ねむの花」を歌ってくれました。高めに響く良い声が印象的な3曲でした。
歌い方としては一点だけ惜しいのが、歌いだしの癖。必ずと言っていいほど、1曲目の歌いだしが弱気な感じになること。
思い切って出す、ということ、今後は心がけてください。それだけで、歌の印象がかなり変わりますので。
声が乗ってくると、どんどん良い声が出て行くので、この点、歌い出しだけに十分集中することを心がけてください。

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EK

egawaヨハン・シュトラウス二世の「春の唄」
良く響く声で、安定した歌声と柔軟ん音楽性が発露出来た、立派な演奏でした。
高音も全体に綺麗に決まって、この曲の楽しさや美しさが充分に楽しめました。
強いて課題を挙げるとすれば、最高音域で時々響きがつぶれてしまうように感じられることです。
もう少し口を開けて発声が出来ると、この点が改善されると思います。

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ON

ohnoトスティ「セレナータ」レハール「きみはわが心のすべて」を歌いました。
音程声質共に、過不足のない歌声により、テノールで有名な2曲を披露してくれました。気持ちよくストレスの感じられない歌声で、客席で聞いても爽快な歌声が良かったです。強いて課題を挙げれば、もう少し響きの共鳴が感じられる歌声になればベストという感じがしました。
換声点近辺(4点E~F)で、気道から喉あたりでの声の共鳴が感じられましたが、これは力んでいるのか?この音域で、もうすこし上あごから上に高く響かせることが出来ると良いでしょう。結果的に更に上の高音の響きが輝かしいものになるのではないでしょうか。
次のOMさんの「椿姫」の影唄は、とても効果的でした。声がステージ奥上の大理石に反射したことで、客席後方に良く届いていました。

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OM

onikiドビュッシー「月の光」ヴェルディ「椿姫」から「そは彼の人か、花から花へ」を歌ってくれました。リハーサルで、「月の光」の歌いだしの声の響きが薄くなってしまう点を指摘しましたが、本番は「月の光」の声の響きは、芯が入って前に良く響く好結果が出ました。これが功を奏して、最後まで発声はレッスン時のレベルを保って好調でした。
また、レッスン中から好調だった最高音域の発声は、本番でもレッスン時と変わらぬ素晴らしい結果を出せました。
音程の良さとビブラートのついた高音域は、華麗な「椿姫」らしさを、良く出せたと思います。大変良かったです。
課題としては中低音域での語感のある歌いまわしでしょうか。これは、子音発音もふくめた朗読練習によって良くなりますので、今後は、朗読練習もやることをお薦めします。

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GH

gotoh山田耕筰「この道」各節のニュアンスの違い、レッスンで苦労した感嘆詞「あ~あ!そうだよ」の扱い。いずれも、本番が一番良い出来となりました。ここが彼のちょうど換声点になるようです。
今後の高音発声への足がかりになりますので、今回の出来を忘れないようにお願いします。
「椿姫」「プロヴァンスの海と陸」自然さが身上となった歌唱でした。
何の衒いもない歌で、この歌の持つ意味、美しさが自然に伝わってくる出来でした。
モーツアルト「フィガロの結婚」伯爵のアリアは、日本語で歌う良さが良く反映されていました。
レシタティーヴォの言葉の意味の伝わり方、演劇的な面はもっともっと出してもおかしくないくらいです。

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