ISS

フォーレの「静けさに」そしてシューマンの「ひそかな涙」2曲とも、基本的に綺麗に歌えていました。

今回のレッスンは、伴奏合わせでアンサンブルのことが中心となりました。

「静かな涙」はテンポ感の内でも、静かに進む力が必要です。
このような連打音の伴奏は、均一に弾くよりも、和音の変化に応じてダイナミックが変化するので、呼応するようにテンポの揺れがある方が良いです、
その基準として、クレッシェンドは進んで行くし、ディミニュエンドは減衰する感じでしょう。

声は、最高音が不安定だったので、Schmerzの冒頭の四重子音の出し方を決めました。
Schmの前3つ発音時点で音程を出すように、いわば響きが少しつくくらい。
これを素早く一気に行うことで、声帯が上手く閉じてきれいな高音が出せるようになります。
全体的には、強弱の付けかた、バランスは良く設計されていたと思います。

フォーレの「静けさに」は、たゆたうようなゆったりしたテンポ感が大切です。
ということは、このアルペジョの伴奏形は、特に冒頭では転がらないようにしたほうが良いでしょう。
基本的に楽譜に<の記号やcerescの表示が出てくるまでは、正しくIn tempoであるべきです。
中間部になって、徐々にこのアルペジョの音型が進行形になって、速くなり、最後に再現部に入って、元に戻ります。

TSS

伴奏合わせでした。

モーツアルト「寂しい森の中で」
フォーレ「我らの愛」
グノー「ロミオとジュリエット」よりジュリエットのアリア「私は生きたいの」
小林秀雄「日記帳」

1曲目から3曲目に向けて、声が頭声に偏って、芯のない声で歌うため、不要なビブラートが細かくついてしまいました。

彼女の場合頭声と胸声のミックスがまだ分かっておらず、中高音域の発声で高く集めると、声がほとんど頭声だけになってしまいます。
これが支えのない声になるため、声が揺れてしまう、という理屈でしょう。

胸声か?頭声か?ではなく、混ぜるというイメージを持ってください。
あるいは、胸声を混ぜる感覚が嫌いなのであれば、もっと共鳴するような口の開け方を探してください。
単に鼻根に集めるだけでは、無理なのです。

口奥の使い方、それは単に喉を開くではなく、場合によっては喉を締める感じもあるでしょうし、軟口蓋も使うでしょう。
そうやって、細い所を息を通すことで響きが増すような、母音発声を導くこと。
そのための子音発音の方法等々、研究の余地があり過ぎるくらいあると思います。

また、「日記帳」でも顕著に出ますが、中低音の響きがまだ不十分です。
もっと鼻腔に集めるようにして、出さないと声が通らないです。
このためには、喉を開けないで喉を締めるようにして、軟口蓋から細い管を通すように発声して、声に支えを感じられるまでになれば、成功と言えるでしょう。

今回の試演会には間に合わないと思いますが、発声の課題は安易に考えてはいないと思いますが、想像以上に難しいことを分かってください。

HT

伴奏合わせでした。
イタリア古典歌曲集からPer la gloria d’adorarvi
これは、大変良く歌えていました。
強いて言えば、Pで表現すると、息もれの多い声になって、不安定になることに注意です。
Pの声ほど、良く集めて滑らかに歌うようにしてください。

モーツアルトのAn Chloe
これも良く歌えていますが、惜しいことに高音発声が未解決な部分が残ります。
声を明快にチェンジさせる発想を持ったほうが良いでしょう。
この場合のチェンジとは、HTさんが一番よく響く出し方を変える、という意味です。
一瞬のブレスの時に、声の当て所を軟口蓋から、喉下に一気に変えてしまうのです。

イタリア古典から「ああ夜よ、神秘の女神よ」
この曲では低音発声が課題になりました。
特に下のbの声がなかなか出しにくそうです。
この低音発声が上手く行かない理由が、どうも軟口蓋発声の影響らしいということが分かりました。

喉頭の引き上げばかりが働くために、声帯の緩みが出ないために低音が出にくいのだと思います。
しかし、高音が出るかというと、これも難しいです。
恐らく、換声しにくいのです。
喉頭前部を上げないように、声を前に前に出すような発声を、少しやって見ました。
いわゆる「生な」声の出し方です。
舌を前に出して、舌が奥に入らないようにしてみます。
この方法で、少し生声を戻すことを経過的に練習して行くと、低音も出るようになり、結果的に高音への換声が出来るようになるのではないか?
と思います。

試演会は、余計なことは考えずに、今まで通りで思い切って自由に歌ってください。

TM

発声練習は、頭声の練習と声に芯を付けるやり方。

頭声を作るのは、彼女の場合は、いわばファルセット的な響きを得ることが目的です。
声帯を重く使うことを一時的になくすために、わざと開かせるために舌を口から出した状態で、息で声を出すようにしました。
この方法で、やっと声帯の開いた発声が出来ました。
これで1オクターブ半くらい練習をしてから、今度は声に芯を付けます。
ただし、下あごを降ろして胸声が強くつかないように、口を半開きくらいで鼻腔に集めるような中音域の声を目指しました。

これがきっかけになって、今回のレッスンの発声の目的は達成できました。
完全にビブラートが消えるのではなく、自然にビブラートがつくが、換声点から上の発声でも音程感の明快な声であることが基準となります。
声の響きだけを追うのではなく、

コンコーネOp25の3番を練習しました。
発声練習の成果が出て、音程感のきれいな頭声発声の成分の多い、軽やかな声になりました。

その後、トスティのセレナータ。
発音に伴って口をばくばく動かすことが、イタリア語の歌をカタカナ的な歌声にしてしまっています。
声は良く出ますが、やはり胸声傾向の声になることは否めません。

最低限、一単語を一つの口の形で決めて歌う様な歌い方を身に着けると、声も軽やかになります。
そのためには、舌をもっと歌声に参加させる必要があります。
下あごが発音に参加することを、なるべく抑制して練習してみます。
良くやるのが、指を歯でくわえて、歌ってみる方法です。

次回、この方法も含めて、この下あごの動きを抑制した発音・発声を練習してみたいと思います。