久しぶりにバリトンらしいバリトン氏にプーランクの歌曲を教えるのは、大変勉強になりますし、面白いです。
特にこの「アポリネールの4つの詩」は、プーランクの真骨頂を表す佳作だと思っています。
どの曲もバカバカしいような大衆性の毛皮の下に、プーランクの審美眼がきらりと光っていて、いかにも20世紀の芸術の夜明けの時代を感じさせるものがあります。
20世紀の、という意味は、ドビュッシーやラヴェルとは全く異質な、むしろサティが考えていたシンプルで良い意味の大衆性をまとった芸術です。
テンポ設定の妙で、音楽がずいぶん変化を見せます。
キャバレーやカフェコンセールの芸人の歌うシャンソン風な音楽が、プーランク自身のシューベルト礼賛となんの矛盾もなく同居していると思うのは私だけではないと思います。
きっとあと100年もすれば、このプーランクの歌曲は、現代のシューベルトの歌曲と同等の位置を占める、と確信しています。