高音発声が難しい方が歌っている姿を真横で観察していると、あごを少し前に出し、あごから肩にかけて踏んばるように息を吸う様子が見て取れました。
これは、ほぼ胸呼吸に近いと思われます。
胸で息を吸おうとする時、どうしても、あごを少し前に出したくならないでしょうか?
あるいは、口を開けて舌根に力を入れ、押し下げたくならないでしょうか?
そして胸骨を思い切り伸ばそうとするために、肩に力が入るのではないでしょうか?
このように呼吸の方法によって、力を使う筋肉の部位が決まります。
声楽に必要な腹式呼吸の場合、必要な姿勢の取り方があるのではないでしょうか?
腹式だからお腹を、とか胸を上げないで、という一律的な決め方をするのではなく、身体全体の姿勢を決めること。
そのことによって、自ずと声楽に良い呼吸が決まるのではないでしょうか?
この姿勢の取り方で大事なポイントは、上腹部が縦に伸びている姿勢であり、また腰から後頭部にかけて、ぴんと伸びた姿勢です。
腰から後頭部まで伸びている上体になるためには、首の後ろが立てによく伸びた上体でもあります。
このことで、結果的にあごを引いた顔の姿勢になるはずです。
胸呼吸に慣れた身体を修正するためには、強制的にこの姿勢を矯正することによって、声楽発声に有用な部位を働かせるような身体にするという考え方が出来ると思います。
もちろん、矯正するためですから、ある期間は辛い状態になりますが、慣れると自然に出来るようになるでしょう。
息を吸うだけであれば、胸郭を開くだけの胸中心の呼吸で悪いことはないですが、声楽発声で必要な呼気のコントロールがしにくいことと、
喉の使い方に無理が出ることが、デメリットになる理由です。