このスゼー氏、本当に美声ですね。
オリジナルより半音下げていますが、その事を微塵も感じさせない声の明るさとビロードのような手触りの声質。
ノーブルな歌唱スタイルと共に、容姿も美しい。

しかし、個人的な趣味を披瀝すれば、こういうタイプの歌手は苦手なんです。
私が男性だから、というせいだと思ってます。

似たような意味では、トーマス・ハンプソン氏も苦手です。
男性として良い声過ぎる・・・。
あるいは、トーマス・ハンプソンもスゼーもどこかアングロサクソンとかゲルマンとか、そういう声質を感じさせるのです。

歌曲を良く歌う歌手で、最近良いと思う人はあまりおらず、男性ならむしろオペラ歌手に眼が行きます。
特にイタリアやスペインなどラテン系のオペラ歌手が好きなようです。

これは、違った意味で男性的なんですね。
特にヴェルディバリトンは素晴らしい。

恐らく自分の趣味は、女性に人気がある男性歌手ではないと思います。

目がハートマークになって男性の歌声を聴くわけではないからです(笑)

それはさておき、美声は自分にはまったく縁がないことです。
私がカミーユ・モラーヌ師について、つくづく思ったのは、彼は美声とは言わないが、その発声の完璧さです。

共鳴腔を完璧に操っており、そのため発音も非常に正確で美しいし、響きがまろやかでありながら良く響く声を持っている。
それは、これまた完璧なブレスで発声が支えられているからです。

自分のような者が声楽を続けられたのは、この方との出会い無しにはあり得ません。
そういう意味では、発声を研究して来たことが、自分が声楽を続けて来た大きな理由です。

しかし、ここに来てその考えが少しずつ変わって来ました。
そのことは、また別の機会に書こうと思います。