横隔膜は下げよう下げようと思うと、確かに胸の余計な力が入らなくなるので、中低音はしっかり出やすいが、中高音から高音にかけて息のコントロールが出来ない発声になりやすい。
歌う息をコントロールする状態と言うのは、必ず足場が必要になります。
たとえば階段を上るのでも歩くのでも、一歩ずつ足を上げるのは片足の踏ん張りが足場として必要だからです。
足場を感じるための基本は下腹部。
いわゆる丹田と呼ばれる場所。
ここがだら~っと緩んでいない、適度な緊張がある状態でブレスをすること。
このブレスをすると、実は体感的には横隔膜が少し上がる感じがする。
これが誤解の元だが横隔膜が上がっているのではなく、横隔膜とかかわる斜腹筋が収縮するため、横隔膜が上がった感じを持つだけで、横隔膜は収縮するから問題ない。
どうして胃の当たりから腰にかけて膨らむのか?というと、それは横隔膜が収縮して肺が拡張するために、結果的に内蔵が押し出されるから。
もちろんブレスで胸に余計な力が入らない方が良いが、適度に胸郭も開く方が良いだろう。
そういうブレスをすると、結果的に胃のあたりから腰にかけて少し膨らむはず。
そして歌うときにこの膨らみが更に少し膨らむように歌えるはず。
この膨らみは膨らまそうと意識するのではなく、前述の足場と息の関係が正しく働いていれば、歌い始めで自然に膨らむ形になる。
特に高音発声で力を必要とする時に膨らむはず。
しかし息が無くなって来ると、横隔膜が元に戻る力が強くなり、結果的に膨らもうとする斜腹筋も収縮してお腹は凹んで行くはず。
これを逆に見れば、息が無くなりだす状態で高音発声をすることに無理があることが理解できるだろう。
大事なことは歌い出しで息もれなく発声できるような喉のポジションが取れているかどうか?
その上で上記のような声と息との関係が成立すると、自然と息の伸びる発声になる。
このためには、慣れるまで弱声で歌う癖をつけないで、ふつうに良く出す発声を基本にすること。
喉が高いか低いか?も結局関係してくるが、喉の位置を意識すべきは、ブレス時から声の出し始めにかけてだけである。
上記の腹部を使ったブレスが出来れば、喉は息を吸うときに自然に下がる。
そして特に中低音で気を付けるべきは、軟口蓋の発声を意識することで息もれの無い発声になっていること。
これは特に女性の場合に大事。
ところで、どうしてブレス時に胸郭も少し開く方が良いか?というと、胸筋が働きやすくなり結果的に高音発声がしやすい姿勢の基本になるからだ。
逆に胸筋を余計に働かさなければ、声帯の伸展が緩くなるため、中低音はより出やすくなると考えられるのである。
バスの人が低い位置でブレスをしたがるのは、そういう意味があるはず。
逆にテノールやソプラノが胸を良く開いたり、あるいは背中を開くのは、肩甲骨筋や胸筋を良く働かせることで、声帯伸展の力をより推し進めるためではないだろうか?