NK
高めの音域になると、声を飲み込むように歌う傾向があるので、声をもっと前に吐き出すために、息を口から吐くようにと教えました。
口から息を出して良いのですか?という疑問がありましたが、喉が開かない発声という点を治そうと思うとこのやり方が、喉が開く傾向があるわけです。
つまり、息がより流れる歌声、ということです。
彼女は声を当てる方向が原因と思われているようですが、当てる方向の違いは声色の変化であって、声の勢いや流れという歌声自体の解放感につながるのは喉の開きの問題です。
声を特定の場所に当てる発声には意味がありますが、それ以前に喉を良い脱力に持ち込むためには、いわゆる「喉を開ける」が必須だと思います。
換声点近辺から高音の発声で喉を開けることは、ソロでも合唱でも共通のことなのです。
イタリア古典のSe tu m’amiでは、この喉を開ける発声と、中低音では鼻腔を開くこと、を重視しました。
鼻腔を開くように発声することは、ちょっと指摘して意識してもらえば直ぐに実行できるレベルでした。
難しいのは喉を開ける方だと思います。
多分、これを阻害する原因は、声を当てるということに意識が強く行くからでしょう。
結局、喉をリラックスさせる、ということに還元されるわけです。
これは合唱とかソロとかいうジャンルの違いではなく、もっと基本的な領域のことになります。
ソルフェージュ的には、非常によく勉強されていて、コンコーネでも曲でも譜読みは良く出来た状態になって持ってきます。
この9か月ほどで、喉を痛めていた発声からすっかり解放され、本来持っている良い声が中低音で出だして来ました。
喉を開けることが判るようになると、歌声はより開放的になり歌っていても楽になるでしょう。
もう少しのことなので頑張ってほしいと思います。
SKM
久しぶりのレッスンになりましたが、約1時間で声はほぼ元通りに戻れたと思いますし、更に良い声への可能性を強く感じることも出来ました。
彼女の場合は、Pops時のこれまでの癖か母音のAになると声の共鳴が喉側の気道で太い共鳴が出てしまう点が、一つの課題です。
このことの意味は、胸声=悪ではなくて、胸声であっても落ちた響きではない高い響きであれば、問題はないのです。
胸声の出方に課題があるとご理解ください。
ただ一般的に言えば、胸声が強いと高音発声への連絡が難しくなり、胸声~裏声という形で大きな段差が出る点が、声楽的には×なのです。
練習方法は、ハミングをしますが、太く出すと×なので、口を閉じて奥歯を噛みしめてやります。
これは、ハミングの響きを細く高くするためです。
目の辺りに細く意識して前に出すようにしてください。
この出し方が出来たら、その響きを落とさないように気を付けて、下あごを降ろして口を開けたハミングで練習します。
そして口を開けたハミングから母音に換える練習となります。
この時点では結論としては、声帯が少し開いた状態が良い声に結びつきやすい状況ではあります。
もう少し開かないようにするために、子音を付けて練習します。
最初はMでmamama、そして次にBをつけてbababaという具合に、破裂音を使うのがコツです。
これらの練習法をあれこれ繋ぎながら、良いポイントを見つけていきますが、楽しい気分で歌う、という感情を利用することも大事です。
発声、というとつい真面目にやるわけですが、もっとにこやかに、楽しい声で、というだけでも、高く明るい響きが生まれてくるものです。
発声練習におよそ30分ほどかけて、ほぼ良い状態になりましたので、コンコーネの7番を練習しました。
ほぼ問題なく良い声で歌えていますが、特に気を付けてほしいのは、フレーズの中の最高音に上がる時に声を抜かないようにすることです。
高音に上がるほど、響きを増していく感覚を持ってください。
全体に母音のAになると、どうしても低い個所の共鳴が出そうになりますが、胸声は抑えているので良いですが、声質が暗くなります。
そこで、今度は母音のEを応用してみると、これが素晴らしく良い響きが出てきます。
この後、この母音のEをことごとく応用して、Amarilliを練習しました。
Ah primil pettoの箇所、Ahを出す時に、母音のAですから舌根で喉を押さえつけないように、母音のEの感覚を良く思い出してください。
舌奥が盛り上がる感じ、と覚えると良いでしょう。
最後のAmarilliからは、より裏声感覚を強くすると良いですが、裏声だけだと声の支えのないフニャフニャになりますので、下腹部に力を入れると良いです。
このことから、どうも全体に腹筋の使い方が弱いために、胸声ではない声楽発声時の響きの弱さに関係するような気がしました。