2017年4月26日声楽レッスン

SA

発声練習を母音のI出始めると、中低音で驚くほど良い声が出ます。
改めて、彼女の中低音の声の良さを感じたので、改めてメゾソプラノの発声を考えてみました。

いままでも、中高音の換声点までの発声において、高く集めようとしないでむしろ低く胸に響かせる方法を推挙していました。

というのも、彼女の中高音発声だと、鼻根に集めすぎるイメージが強く、音程幅が極端に狭く上ずる傾向が強かったのです。

いくら音程が下がらないのが良い、としても、そもそも音程感が感じられないメロディでは意味がないと思うわけです。
♭な声が良いわけではないが、♯が良いとも言えません。

正しい音程、ということを問題にする前に、正しい発声が前提なのです。

正しい発声というのは、呼気と声帯の関係が良い状態にあること。
そのためには、歌声に向いた正しい腹式呼吸と声のアタック(声の出し始め)の方法にあります。

今回は呼吸法は教えず、声のアタックを中心にしました。

単純に胸から出すように声を出し始めてもらいました。

これは、彼女の場合は地声と換声した声との切り替えがスムーズなので、あえて低音発声においても胸を意識してもらった方が、安定するからでした。

デュポンの「暖炉」というヴェルレーヌの詩による歌曲です。
明快にメゾ領域の音域なので、むしろたっぷりとした中低音の響きを狙いました。

これが大成功で、高音域でも低音域と同じ発想で出そうとすれば、自然に喉が締まらない共鳴のある響きが出せていました。

さて、次の中田喜直の「さくら横丁」
いかにも、ソプラノ向きのように思い勝ちのこの曲ですが、そういうイメージではなく、自分の声で歌うという意味で、
あえて暗めのメゾソプラノの声で歌うには、どうすれば良いか?

これはテンポを少し遅めに、ゆったりした音楽を作ることで上手く行きます。

メゾらしい声質でも全く問題ないどころか、むしろ深みのある女声の美しさや色気を感じることが出来ました。

何でもかでも明るく元気にキンキンしているのが良いわけではありません。

課題は、最後の「花でも見よう~」の最後の半音階の下降形のメリスマです。
音程が途中で下がる傾向がありますので、下腹部をしっかり支えて、呼気を落さないように気を付けることを指示しました。

声楽発声について、レッスン後に話しました。

クラシックの声楽、というものは、楽器を模倣したものである、という私の考え方です。

模倣と言ってもリアルな模倣ではなく楽器的な声の扱い、楽器が持つキャラクターを声が真似るという様な意味合いです、

このデュポンの「暖炉」などは、音域がフルートには適さないため、フルートではないでしょう、と。
木管楽器ではない、となると、弦楽器かな、と。
響の質からいえば、ヴィオラでしょうか。

どうして弦楽器なのか?
それは、出だしのアウフタクトが4点hで、弦楽器で弾くとなると、この低い4点hをしっかり響かせてフレーズに入ると思うわけです。

そういう楽器だったらどういう風にメロディを奏でるか?どういうスタイルで演奏するか?と想像してみると、発声も含めて案外分かって来ることが多いと思います。

単純に演劇的な手法、イメージを作って歌ってしまうと、少々滑稽なことになりかねない面があるのは、この声楽の特徴であるかもしれません。