TH

彼女の歌声は、優しく軽い歌声で音程感も良く、基本的に好感が持てますが、オペラアリアとなると、もう一歩感情の強さのようなものが欲しくなります。
椿姫のAddio del passato は哀しい唄ですが、きっぱりと歌わないと、舞台としての成立は弱いと感じられました。
それは、歌声のオーラということです。

発声を考える前に歌を歌う心の強さは、相当意識したほうが良いでしょう。
哀しい曲だからといって、そのまま消極的な気分で歌うとどうでしょう?
歌を歌う事とか、ステージでの行為というのは、表現が何であれハイテンションが必要になります。
この曲のような悲しい静かな始まりの曲であっても、
特に、高音域ではなく、5線の音域での響きと声量が課題だと思われます。

短調のメロディの部分は、暗くならないで逆にピッチを高く歌うことで、流れの良いフレーズになります。
そして、長調に転調したところで、ピッチの良い声にプラスして胸の声を付加するように重心を下げて、声量を盛り上げます。

出だしの短調のメロディも、はっきり歌う方が良いでしょう。

ドヴォルジャークの「ルサルカ」「月に寄せる歌」
こちらは、ゆっくりのテンポでしたが、そのせいか?拍節感がかなりアバウトになって、ルバートでもないし何とも言えないぐずぐずした雰囲気になってしまいました。
テンポは8分音符108と書いてあったので、その通りでやってもらいました。
本人はかなり速く感じたと思いますが、聴いている方はとてもすっきりした音楽的なものだったです。

ゆっくりのテンポで歌うためには、もっと声を太くたっぷりした響きになるべきでしょう。
声量も含めて、相当に響く中低音の声が必要です。

現状の持ち声であれば、明るく高い響きで軽やかに歌う方が、ホールでも良く響いて気持ちの良い演奏になると思われます。

GH

伴奏つきのレッスンでした。
発声の声は、とても調子がよく深みのある良い声でした。

曲は、トスティのNon t’amo piuから始めました。
途中、特に2番になると、3連符の扱いで、伴奏と合わない部分があったりして、ソルフェージュの見直しをしました。
暗譜を焦らないで、まず譜読みをしっかりしてください。
その上で、暗譜という順番です。

ソルフェージュにおいてもっとも大切なことは、リズムです。
これは、発声に大きな影響があるからです。
暗譜もしっかり出来ないでうろ覚えだと、声に力が出ません。
リズムの確認と暗譜をしっかりやっておいてください。

ヴェルディの「トロヴァトーレ」「君が微笑み」大変良く歌えていますが、高音発声が多いためか?喉が高い声で、テノールのような歌声になっています。
もう少し喉奥を良く広げることで、バリトンらしい深く重い声を目指せるだけ目指してください。

カデンツの音程は、正確に丁寧に歌ってください。

SKM

少し間が開きましたが、発声が元に戻ってしまいました。

音程の良く通りの良い声ですが、鼻腔に響かせる意識というのか、ソロボーカルの特にメゾソプラノやアルトとしては、前に出過ぎて平たい響きになっていました。
もう少し深みのある、いわゆる「腹の付いた声」を目指してほしいところです。

特にソロヴォーカルになると、声質、声の存在感というものが非常に重要です。
単に音程が良くて明るければOKとはならないのです。

今までも教えたように、喉をリラックスさせて声の響きを前に集める意識を捨ててください。
むしろ声の響きがみぞおちからおでこにかけての、縦に幅広いイメージを持ってください。

一番簡単なことは、下あごを降ろして口を縦に開ける発声を覚えることです。
それから、声を前に押し出す意識を持たないことです。

これらの意識の持ち方だけで、歌声は深みのある声に変化します。
声量は落ちませんし、声も決して奥に引っ込んだ暗い声にはなりません。

結局、高く前に、という余計な意識の持ちすぎで、鼻にかかったキンキンした近鳴り声になってしまうでしょう。

Ombra mai fuでは、出だしのOmの響きに気を付けて、声を出だしてください。
子音がない母音で始まるので声の出し始めに気を使います。
ここは、あえてッオ~というように、少し声帯狭窄を意識しても良いでしょう。
その分、喉仏を深くしてください。

このOmbora mai fuの声さえ上手く行けば、後の2曲、Lascia ch’io piangaとPlaisir d’amourは、うまく行くと思いました。