ベルナックとプーランクのコンビによる録音が大量に残っていて、それを聴けることは大いなる喜びです。
ベルナックの歌声は、好き嫌いがはっきり分かれますが、ツボにはまると彼が歌うプーランクの歌曲くらい、文学的装いに長けた演奏はないとすら言えるでしょう。
この録画の最後の曲「すすり泣き」(5分26秒から始まります)を聞けば、その意味が解ると思います。
素晴らしいと思います。
そして、それ以上に作者でもあるプーランクのピアノ伴奏が素晴らしい。
言葉でうまく説明できないが、普通のクラシカルなピアノ奏法とは一線を画するタッチとペダリングによる伴奏音楽がなければ、
このような文学的な装いは不可能だったでしょう。
素晴らしいのです。
演奏の表現から感じられる、諧謔と余裕と美への希求がひしひしと伝わってくる、と思うのです。
技術の上達というのは、美的希求なくしては空しいものだと思う所以です。