かなり下手なピアノ弾き語りで恐縮ですが、わたしがこの歌の冒頭をどう歌いたいか?という面を知ってもらいたく、あえてご紹介しました。
一般公開できるような演奏ではないですが、理解してほしかった。。。
声楽家の立場から申しますと、伴奏の音楽は歌のメロディと対になって音楽が成立してほしい、ということになります。
ピアノ伴奏はピアノ伴奏、声楽は声楽、1+1=2ではなく、0.5+0.5=1ということを言いたいのです。
歌曲の伴奏は、必ずしもお互いがイーブンである必要はないですが合わさって1、つまり合わさって完成ということです。
このためには、目の前にある音楽をどう理解するか?理解できているか?ということに尽きるのです。
音楽の演奏というのは、数式のように単純に答えが出るわけではなく、かなり幅のあるものだと思います。
いろいろな可能性があるので、自分が得意な部分だけではなく違った側面を想像しなければなりません。
そのためには、いろいろなジャンルの音楽を聴いてみる経験を重ねることが必要ではないでしょうか?
声楽家なら器楽演奏を聴いてみる。
特に弦楽器やリードを使う管楽器。
なぜなら、声帯の発音原理と似ている面があるからです。
一方、ピアニストならオーケストラをお勧めしたい。
なぜなら、両手を使った広い音域を、かなりな厚みのある和音や対位旋律を演奏することが出来るからです。
また音色的にはモノトーンのピアノであっても、ちょっとしたタッチやリズム感の感じ方の違いで、あたかも楽器のような音色を想起させることが出来るからです。
そのためには、楽譜を表面的に捉えているだけでは到底無理です。
かつて来日されていた、フランスの作曲家ピュイグロジェ女史が伴奏を弾いた歌曲演奏に何度か接しましたが、
それはピアノという楽器を使ったオーケストラでした。
あのフォーレの可愛らしいReve d’amourの前奏が、オーケストラのような重みを以て始まったのに驚き、目から鱗が落ちました。
それまでの自分が、いかに固定観念に囚われていたか、ということを思い知らされたのでした。
そう、固定観念なのです。
音楽の演奏というのは自由なものなのです。
かつて大変世話になった声楽の師匠に言われた言葉がいまだに忘れられません。
「僕たちは音符の番人ではないんだ!」