声の出し始めや息を吸うときに、あくびをした時のように、と昔から良く言われてきました。
これは日本だけではなく、諸外国でも言われることです。
フランスに留学した際にも、先生に良く言われたものです。Baillerと言います。イタリアではSbadiglio

あくびだけを取れば「は~ぁ~」という暗くこもった、だが良くは響く声を連想するでしょう。
しかし、それをそのまま声楽発声に取り入れると、いわゆる” 団子声 ”と呼ばれる、声量はあるがこもったエッジの立たないもっこりとした声質になることが多いです。
これは、あくびをすることの意味を正しく理解していないことに起因するでしょう。

あくびをする意味をかいつまんで書くと、発声に必要な声帯の伸展を促すこと、つまり弦楽器で言えば弦を張るような意味です。
低音にしても高音にしても、弦が正しく張られていなければ、良い音質で良い音程を出せないでしょう。
歌声も同じです。
歌いだしの準備であくびをする意味は、あくびの真似をした声で発声することにあるのではないのです。

そして大事なことは息のコントロールが正しく出来ているための姿勢の維持と、この喉の状態を動かさないような口の動かし方です。
発音に応じて口、特に下あごをバクバクと自由に動かしてしまうと、この発声の状態を維持できなくなります。
この発声を壊さずに歌詞発音を自由に出来るようにする練習方法として、昔から良くやっているのは鉛筆やコルクなどを加えて発声する方法です。

あくびの状態を再現するのは簡単ですが、気を付けるのはやり過ぎないことです。