これまで声楽を40年続けてきて、ようやくいろいろなことが分かってきました。
ばらばらだった点と線がつながり、一つの形のようなものが見えてきたところです。

プロという面からみると遅すぎる理解だったと思います。

40年以上続けて来たといっても始めたのは23歳から。
4~5歳からピアノをやっていた人や中学からブラスバンドをやってきた方たちとは、勝負になりません。

プロになるためには、子供のころから続けていることに大きな意味があると思います。
小さいときに身についた技術が意味する大きさは、良くも悪くも頑強なものなのです。

例えば、歌舞伎役者が4~5歳から舞台に立つ意味は、身体で否応なく覚えなければ出来ない技が歌舞伎には必要だからでしょう。
大人になってからでは身につかないものがある。

あるいは、身につくかもしれないがプロとして舞台に立つには遅すぎるわけです。稼げない。
プロは稼げなければアウトです。

歌舞伎は伝統芸能だから、と思う人も多いでしょう。
クラシック音楽は違う、と。

しかしクラシック音楽と一括りで言っても、趣味でやるならいざ知らずプロレベルで言えばほとんど伝統芸能の世界だと思います。
つまり歩留まりの良いところに技術を平準化し、その中である程度個性を競うものだからです。

最近、動画などでピアノの名人達の演奏を聴いて良く思うのは、レパートリーが広い方ほど演奏が面白くない。
どんなに有名な人でも、私自身としては良い演奏とは思えない演奏がたくさんありました。

それは、恐らく前に書いたように技術の平準化によるからではないでしょうか?
音楽はそれくらい深く広い内容のある芸術だと思うのです。