KT
発声練習は、母音で始めたが途中でハミングに変更した。
しかしいつもの彼の声と違い、高音の換声点で喉が締まり上がってしまう現象が起きていた。
その後母音練習に変換すると、中低音はピッチの良い響きになったが、やはり換声点の発声がいつもと違い喉を締めてしまっていた。
改善方法としてファルセットを練習してみると、これは練習の価値がありそうであった。
思ったよりファルセットの発声は出来ている。
ただ、4点Gでファルセットから実声にクレッシェンドさせてみたが、これは無理であった。
後、全体的に口を開けない発声になっていたことも原因ではないか?
口を開けない発声は、換声点より低い中低音域では有効であるが、発声法に未熟な方は単純に口を開けるように歌った方が楽なはずである。
現実的には、根本的な中高音の発声法会得のために口を開けたハミングでこの領域から高音にかけて練習できると良いだろう。
合わせてファルセットの練習を組み合わせたい。
本人の言によれば、昼間の仕事での会話が多く声を使ったとのこと。
喉の疲労であれば、理由は明快なので問題ないと思うが、練習のし過ぎとか間違った練習法が原因であることが多い。
しかし、今日の問題は基礎を会得していればほとんど回避できたことである。
この発声の基礎の会得は年季が必要で、早く会得する目的を持つのであれば、間を置かずに定期的に通い発声練習を積み重ねる必要があるだろう。
クラシックの歌である声楽は、この基礎を会得しないと本当の意味で楽しく歌えない。
基礎を会得するまではなるべく我慢して、発声と譜読みの技術を会得してほしい。
コンコーネの20番は、おおむね譜面通り歌えた。細部は音程の不明瞭なのを修正程度であった。
曲はイタリア古典のO del mi dolce ardor
これは高音発声を除いて、特に問題なく歌えていた。声の調子次第だろう。
フォーレのApres un reveは、これも譜読みレベルでは出にくい低音域で音程が不明瞭な箇所があったほかは概ね譜面通り歌えていた。
3連符が続く低音域のフレーズは歌詞と音符の関係が、これも不明瞭であった。
このあたりもリズムの正確な把握を会得しておく事が、根本解決になると思う。
新たに持ってきたベッリーニのMa rendi pur contento
譜読みがまだ進んでおらず、今日の発声としても高音において課題があり難易度は高い。
本人からの話になかったことだが、万が一の自己判断の練習で発声上の問題が起きることも多くある。
今の彼のレベルであれば、発声上の独学は絶対にしないようお願いしたい。