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声がバリトンらしい立派な声になってきました。
良い方向だと思いますが、シューマンの「詩人の恋」を歌うに際して、
ただ単にバリトンらしい良い声ではなく、表現力のある(抑揚のある)声を目指してほしいです。

具体的には、歌詞の内容を良く把握して音楽と照らし合わせて、ただ単に声を「良く」響かせるだけではなく、
「ほどほどに」したり「密やかに」意識したり、或いは「軽く」と言う具合にです。

その根拠にすることは、歌詞を歌うことではなく、歌詞を朗読してみることです。
朗読するためには、歌詞の意味や詩の背景を判る範囲で把握して、読むことです。
逆に、音楽から類推して、朗読する内容を類推して読むことも出来るでしょう。

例えば、8曲目は、どう考えても公明正大に「読む」内容ではなく、密やかに語る言葉でしょう。
伴奏の音楽からだけでも、それが判ると思うのです。
そういう言い方(語り方)を実際の朗読でもやってみることで、歌う声にその表現が自然に出て来ます。
具体的に発声的にどうこうと考えるよりも、そういう表現を意識することが、必要な歌声を自然に作ってくれるでしょう。
歌曲の場合は、それで十分なのだ、ともいえるでしょう。

今回のレッスンでは、8番~10番でしたが、いずれも苦く辛い、或いはみじめな気持ちを歌った歌ばかりです。
その中で、意識された抑制した声は、喉が硬直しない、いわば浅目の喉のポジションですが、
それが喉の柔軟さを産み出すように思います。
こういう声の使い方を覚えると、結果的に喉がリラックスして楽になり、必要な時に良いフォルテも出せるし、
低音の響きも良く出るようになると思います。