歌われるフランス語の発音について
私自身は声楽家として40年以上にわたり、フランス歌曲のステージを経験しました。
このモチヴェーションの根源は、フランス留学時に就いたカミーユ・モラーヌ先生の素晴らしい歌唱に接した事にありました。
大事なことは辞書の発音を正確に表現することよりも、歌として歌詞の語感の美しさと音楽的な表現が伴っていることが重要です。
ここでは、そのモラーヌ氏から教わったフランス語発音による歌唱法の重要点を列挙して行きます。
何回かに分けて書きますが、まず歌われるフランス語の発音において、会話発音(辞書の発音記号)との3つの相違を記します。
- Rの発音はクラシカルな声楽ではイタリア語と同様に巻き舌が基本です。(シャンソンでは会話と同様に有声口蓋摩擦とふるえ音)
- 鼻母音は4種類でなく3種類にまとめること。特にOEの鼻母音はEの鼻母音に変更する。
- 狭いE母音(e)も広く扱う場合があること。
各項目の具体的な意味とコツ
1、Rを強調してを出すのは単語の語頭や強調すべき個所だけ。
単語中の短い発語では、巻き舌を意識する必要はない。
*大事なことは、RよりもLの発音をしっかり意識すること!つまりRとLの違いを明快にすること。
2、OEの鼻母音は実際にやってみると癖が強く、歌唱中では区別する意味もあまり感じられない事、にあると思います。
モラーヌ氏の方法は劇場発音という側面があります。
*4種類の鼻母音の違いを意識するより大事なことは、Eに対してAとOの鼻母音との違いをしっかり出すこと。
3、辞書にも二種類併記されてますが、特に定冠詞(Les)不定冠詞(Des)所有格(Mes)などで使われるEは広い方が歌唱に馴染みやすいでしょう。
*狭いeの発音は、その発音によほど慣れないと難しく鋭く聞こえて強調されがちで美しくありません。
上記3つ以外にもありますが、代表的なものとして必ず覚えておいてください。
何よりも大事なことは、歌われるためにある発音ということです。
言い換えれば歌う発声の技術が伴わないと、発音の勉強は難しいのです。