声の出し始めとその準備

歌声初心者の場合、声の出し始めのやり方はほとんど無意識ではないだろうか?
良く言えば自然である。

しかしクラシックの声楽発声は、器楽奏者が楽器を扱うように喉という楽器を扱うことに大きな意味がある。
そのとき、もっとも大事なのが声の出し始めにある。

具体的な方法論

以下を行う大前提として、横隔膜による呼吸(腹式呼吸)を会得出来ていることが条件。

1、息を吸う→2、息を止める→3、声を出す。

1、息を吸う

横隔膜呼吸が基本だが、同時に次項「息を止める」に影響を与える軟口蓋を上げる事を同時に行う。

2、「息を止める」

前述1、によって腹を膨らめようとする腹圧がかかると同時に、息を止める
この行為によって声帯上の気道部分の気圧が少し低くなる。
結果的に、横隔膜の収縮と声帯の緊張(声門閉鎖)の一致が生まれる。

昔から声楽の指導者たちはブレス時にあくびをするようにと指摘をしている。
このあくびをするという意味の中に、上記の息を止めて気圧の変化を与えるという行為が含まれている。

3、声を出す

ここが初心者の場合、漠然として判らないことが多い。
簡単に理解するには、声が出る場所を明快にすること

1、と2、が正しく行われている前提であれば、声は軟口蓋から上で出始めること。
この理由は中音域までであれば、呼気が声帯の振動に自然に関与できるためである。
つまり声帯に間隙が生じやすい=呼気が流れやすいのである。
この原理を逆に考えると、高音への換声点以降は声門に間隙を持たない方が発声しやすいことが理解できるだろう。
このためには軟口蓋から声を出し始めるのではなく、喉頭よりも下のポジションで声を出し始める意識を持つことに一つの意味が出来る。
また声帯の閉鎖を強くするために、腹圧も強くする必要がある。

まとめ

以上、声の出し始めとそのための準備について簡潔に要点をまとめた。
しかし、音楽のメロディ(フレーズ)の動きは複雑で音域も広い。
少なくとも、上記の方法で無理なく出来るのは、男性ならト音記号で4点(5点)E前後までである。
個々から上の換声点ならびに換声点以上になると喉頭に変化を生じるため、それについては別項の「換声点の発声」で取り上げる予定である。