SNM

軽く発声練習をやってから、新曲の練習をしました。
順番に、宵待ち草、からたちの花、ラフマニノフのヴォカリーズ、そしてカディスの娘たちと練習をしました。
カディスは、まだ譜読み途上で、母音歌唱での練習に留めました。

今回のレッスンで思ったことは、まず「宵待ち草」の演奏は、出色の出来でした。
テンポ設定によっても微妙なニュアンスが変わりますが、クラシカルな味わいのあるこの曲の良さが出せていました。

この曲は間違うと演歌調になりますが、スタイルはバルカロールで純然たる西洋音楽のスタイルに対して、どことは言えず演歌調のメロディをうまく融合させた作品だと思います。
それだけに、声質、発声法的にも、クラシックな声楽の基礎の確立した声で歌わないと、中途半端な印象が残ってしまうでしょう。
その意味においても、良い演奏が出来ていました。

からたちの花は、これも良く歌えていましたが、2つポイントがあります。
一つは、歌詞朗読のニュアンスを出し過ぎると、テンポ感のない音楽になる点に注意です。
確かに「からたちの花は咲いたよ」という歌詞は一息で、行きたい文節ですが、それは3拍子が積み重なったフレーズである、という条件は
ベーシックな所で守った方が良いと思います。

言葉を語る推進力は持ちながらも、縦のリズムはある程度大事にしないと、音楽的な品位が薄れてしまうように感じるのです。
歌詞を語るリズム感よりも単語のイメージや詩が表現している感情的な要素を重要視すべきでしょう。
その意味で、この曲は2点GのPPPの声が非常に難しいです。

それで2点GのPPPの声のための練習をしました。
まずファルセット的に、喉を脱力してどれだけ換声点から上の発声が出来るかどうか?ということを見ました。
なぜ脱力か?というと、声量で押さずに高音の音程を出すきっかけを作りたいからです。
実声になると、力んで声量を強くしてしまうため、実声でのPPPへの減衰は至難の技だと思います。

それからファルセットでも良いので、ハミングでこの高音区の声の練習が出来るようになると、鼻腔共鳴を作るきっかけにもなると思いました。
ハミングから軟口蓋だけを動かすことで、うまく鼻腔共鳴が働けばもうけもの、という考えです。

そして、ラフマニノフのボカリーズ。
これも良く歌えていましたが、どことはなく声質が暗く重たく重層的な和音の響きの中に埋没してしまう印象でした。
伴奏がきちっと弾ければ、また印象は変わる面もあるかもしれませんが。
そこで、母音をIにして、響きを集めピッチも高く意識してもらって練習しましたが、これが伴奏和音と声の関係が一新されて、音楽の形が明快になる良いものでした。

声のイメージはありますが、テクニックとしてピッチの高い明る声の発声を覚えると、息漏れがなくなりますし、声の通りも倍加します。
これが真の声量につながる要素なので、基礎的なテクニックとして、覚えると良いと考えます。
それからメッザヴォーチェで息が抜けやすい発声傾向でもあるので、なるべく息漏れのない声を覚えてもらいたいこともあります。
高く明るいピッチの声作りをすることで、声帯を細く鋭く使う意識が自然に生まれるのです。

最後にカディスの娘をざっと譜読みして終わりました。
これなども、ジプシー的なメロディの要素に暗く情念的な要素が強くあるので、それをそのまま歌ってしまうことになろうかと思います。
そういう感情から離れた、良い意味で器楽的な声の扱いを覚えることで、声の客観的な表現方法を覚えて行くと思っています。
これも譜読み段階で、母音発声で徹底して高いピッチと明るい声質を練習されてください。