YA
ハミングによる発声練習と、ブレスの工夫で良いポイントが出てきました。
一番大きいのはブレスでしょう。
鼻から吸うこと、良い匂いを嗅ぐように吸う、という古典的な声楽のブレスの方法です。
発声の際、無意識に声を張ろうとするため、必要以上の力を下に向けて踏ん張ろうとします。
これが、声楽発声を非音楽的なものにすることが多いです。
例えば、音程が♭になったり、あるいは♭にならなくても、ビブラートが付かない棒のような声になったりします。
良く云われるように微笑んだ顔が良いのは、決してステージマナーのためだけにあるのではなく、具体的に発声に関係する要素だからでしょう。
勿論その意味は単に機械的な発声として良いと言う意味ではなく、本来、音楽というものが、明るい要素である事、
明るい声は声の通りが良い、という必要性が、声の器楽的な用法としても理に適っている、という要素を持っているからです。
声を出そうとすると、どうしても大きな声を出そうという、無意識が勝りますが、これが話を難しくするのだと思います。
力んだ声というのは、意外と声質が暗くなり、こもるのです。
また音程も♭になり易いです。
通る声、明るい声、というものを持っていれば、力まなくても声は良く聞こえますし、歌詞も良く判るのです。
発声は力まないこと、明るい声を出すこと、音程を正しく出すこと、この3つだけに留意すれば、自ずと良い発声になって行きます。
今回もヘンデルのメサイアよりHow beutiful are the feet of them を練習しました。
今回は声の事というよりも、子音の扱いを徹底的に練習しました。
例えばBeutifulの語末のLは、日本語のようにルと発音すると、音節化(母音化)してしまいます。
語末のLは、基本的には無声子音ですから、母音にならないように、舌先を硬口蓋に留めるようにしてください。
同様に、Ofの語末のFは、発音記号がvですから、次のThem(ðém)の語頭の子音に重なって、二重子音になるようにしてください。
語末の子音は、次の語頭の子音側に行くように処理してください。そのことで、母音と音符の関係が明快になるからです。
そうでないと、言葉の発音のせいで、音符が表わしているリズム感自体が違って聞こえてしまうからです。
この考え方は、歌詞は一種の詩であり、1行の母音の数が韻を踏んでいることで、音節数に秩序が存在することで歌う以前からすでに音楽的な状態にある、という前提によるわけです。
詩を歌うということが歌というものにおけるとても大切な要素ですから、それを尊重する基本を身につけてください。
その点を踏まえたうえで、現実的にたとえばホールで歌うと、言葉が聞き取れない、という処理の中で、あえて、子音を有音化処理する、ということは、
ままあることです。
しかし、それは、そうでないセオリーを理解し実行できる前提の上で、ということになります。
それから、発声に大きな影響を与える、子音処理として、語頭の子音も正しい処理の仕方で、明快に発音する基本を身につけられてください。
Beutifulの語頭のbも、明快に破裂音として扱うこと、FeetのFも同じく。また、アクセントのある母音は、アクセントを明快に意識して発音・発声が出来ているかどうか?
このことも、単に言葉の問題としてではなく、一種の発声法の問題として考えるようにしてください。
結果的に声に大きな影響を与えることになると思います。
ST
発声は、母音Aで1点Cから発声を始めました。
最初に気付いたことは、1点Gから上の声が、響きがついて声の共鳴感が出てきたことでした。
ただ、1点Fから下の低音域で息漏れが出るので、ハミングの練習をしました。
ハミングでは、胸に響かせたり、お腹を押して息で吐く発声にしないで、響きを頭だけに集めるようにします。
いかにも息の流れが声になっている、というハミングよりも、響きが密に集まっていることだけに集中して下さい。
ここでも感覚的なイメージ表現としてふさわしいのは、管楽器ではなく弦楽器、と言えるのではないでしょうか。
それが出来た上で母音にすると、低音の声の息漏れがない母音発声になります。
一見して低音の響きとしての深みや声量が感じられないが、ピッチが高く通る声になるはずです。
しかし、実際のホールでは、この声の方が低音としても良く通る深みのある声になります。
自分の声でホールに響く分まで考えないこと、が発声のコツとも言えるでしょう。
ハミングで母音に変えた声で、そのまま高音まで昇って行くと、比較的に自然に高音の声になり、
2点Aまでは、自然な発声が出来ていました。
ここから上は、また少し喉が上がらないようにする工夫が必要でしょう。
曲はコンコーネの5番と6番を再び取り上げました。
5番は、とても良く出来ました。特にオクターブの跳躍が滑らかで引っかかりがなくなったのが、今日の発声の成果です。
低音の1点Cの発声は、響きを落とさないように注意してください。
6番は、ちょっとした音程を歌う難しさがありましたが、音程というより発声の関連だと思われます。
2点Eの声は、綺麗に出ていて、以前の発声の難がなくなっていました。
1点Cから下の低音発声に気を付けると、高音への繋がりもスムーズになります。
最後にドンナ・アンナのCrudele?ah no、mio bene!を譜読みしました。
母音で音取りをしました。かなりな高音まで出せる喉を持っていますから、まず歌いこんで音楽に身体が慣れることに専念しましょう。
SM
母音はIで発声をしました。リラックスした良い声が出ています。
母音をAに変える前に、ハミングを練習しました。
ハミングの声を聴くと、息が流れる声になっています。このこと自体は自然ですが、ハミングで低音発声を練習する際には、
息で流す意識よりも、むしろ響きだけが密に感じられることだけに集中して、発声するようにして下さい。
特に、1点Gから下の領域では、息を極力使わないで響きにするくらいです。
このことで、低音の息漏れ、スカスカの状態になる喉の傾向がなくなるでしょう。
結果的にですが声門閉鎖の行き届いた発声になります。
この練習をした後に、母音に変換すると、実際に声帯の閉じた当った響きが出ます。
しかし、母音発声でこのポイントを出すのはかなりクリティカルなようです。
これはもう訓練、と慣れしかないでしょう。
ひたすら練習して、無意識でそういう状態になるまで、続けるのみです。
現時点での私の結論としては、喉の使い方、の一語に尽きると思います。
彼女の場合は、喉を極力開かないようにすることと、軟口蓋を良く上げること、この2点が、中低音の当たった安定した声を作る要素になるでしょう。
あるいは、喉を引き下げる自然な働き?が強く、放っておくと、喉の重心が低い方に偏り過ぎるために、声門が開いてしまう傾向が強い。
あるいは、合唱時代の発声の傾向として、喉を締めないことだけに偏ったために、声門閉鎖が行い難い声帯になっている。
と思います。
ただし、中低音発声では、地声になるような胸に落とす声ではなく、頭に鳴らすように重心を上に持地上げるように感じつつも、喉自体は、明快に閉じる意識で
中低音を発声すると、クリアではっきり当った声になって行くのではないでしょうか?
IやEになると、中低音の声がクリアに当る事自体が、このことを証明していないでしょうか?
HahnのA chlorisから始めて、Le rossignol des lilasそして、Chanson du printemps
そして、オペラ「カルメン」のミカエラのアリアJe dis que rien ne m’epouvanteを練習しました。
細かいことよりもやはり中低音の声をもう一段、明快にすることだと思います。
以前に比べると、大分進歩していますが、くどいようですがもう後一歩、という感じです。
声量ではなくて、明るさ、声の深みや共鳴よりも、声そのものの質を明るく前に出すよう、更にに留意されてください。
最後に、日本歌曲は新曲、林光の「ねがい」を一回通しました。
音域が全般に低いですから、これも発声を最重要視してください。
深く発声しないで、むしろ喉を浅くすることで、舌根の力みを廃すこと、軟口蓋を良く使うことで、声帯は引っ張ることで、
明るい通った声になるポイントを見つけられるでしょう。
歌わないで、高いトーンではっきり、明快に朗読してみることが、このような曲の発声に大きな効果をもたらすと思います。
MM
YAさんで効果のあった、ハミングの練習と、良い匂いを鼻で吸うというイメージによるブレスの方法を試しました。
彼女の歌声の発声で苦手な面のある、軟口蓋系統の筋群の働きを良くする効果があると思いました。
結果的には、発声練習で効果的で、明るく音程の良い声が2点gまで滑らかに出せていました。
声と言うのは大きく出す、という考え方と、明るく出す、という声質の考え方の2つを持つことで、歌声としてのバランスが取れます。
声量を出すためには、どうしても重心が低くなりますが、これが基本的には声を暗くし音程を♭にする原因になり得ます。
後者は、言語発音と密接につながっています。
ということは、声量に意識しないで、言葉の発音を明快にすることの方に意識を傾けると、ちょうど良いバランスになる、というのが
彼女の発声の、現実的な特徴だと思います。
曲は、このところ続けているベッリーニのPer pieta bel’idol mioから。
この曲は、ソプラノらしい響きになって、一見ドラマティックで男性的なイメージの曲が、違う側面を持っていることに
気付かせてくれました。
特にチェンジ近辺の2点fの響きが、音程も響きの質もとても良くなりました。
後は、この曲に限らないですが、子音を明快に良く出して発音出来れば、完璧です。
HahnのCantiqueは、ひたすら発音、ということになります。
これも、声と関係がありますが、歌いすぎないで歌詞を語るようにすることで、必要な母音と、あまり必要のない母音が、
自然に振り分けられて、無駄のないそぎ落とされた歌になることで、結果的に聴いていて聴きやすい歌になります。
アリアQuando menvoは、高音発声が課題に残っています。
言葉で云えば、発音の際に、喉を上げないように下顎でカバーし、音程を出すために、声を前にではなく首から後頭部にかけて
沿わせて廻すように発声するイメージしてください。
次回やるようでしたら、今度はハミングからファルセットの母音を出して練習する方法を取ってみたいと思います。