KY

発声は、2点Gから上が少しずつ滑らかな頭声を使えるようになってきた。
下顎の力が相変わらず強いが、使い方が判ってきているので、大丈夫だと思う。
後は、低音の声を下から発声する場合も、かなり注意が行き届いてきた。
イタリア古典からPiacer d’amorの高い方。
一か所だけ、2点Fが喉を突っ張らせてしまう箇所に注意。
やはり下顎の使い方に注意。高音だからといって無意識に下顎を下げない方が良さそうである。

「赤とんぼ」これは、やや低音で、地声系統の声が強くなるが、彼女の声は明るくピッチが良いので、気にならない。
ただ、響きを高くしようと思うあまり、にこにこした声になるのが、やや表現とずれる感じがあるので、注意を。
自然に歌ってちょうど良いはずである。
フォーレ「リディア」とても良く歌えていた。
こちらは響きも中庸で、明るすぎず、暗くこもらず、ノーブルな気品のある歌になっていた。
サティ「エンパイアの歌姫」
これも、声の勢い、元気があって、表現にかなった歌になっていた。
18世紀のシャンソンから「エグゾデのメヌエット」「もし私がシダだったら」「若い娘っ子」の3曲を練習。
以前に、本番で出したこともあるし、今も本番を目指しているだけあり、いずれもテンションの高い、密度のある演奏だったので、心配ない。
久しぶりの発表会なので、こちらも楽しみにである。

FT

発声練習の声が、多分前回と同じパターンだったと思う。
どうも、ブレスから喉の準備、そして声を出し始める場所の意識、というところが、確立していないようだった。
何か、声を軽くすることばかりに注意が行き過ぎてしまい、肝心なことがなおざりになってしまっているようであった。
声を軽くする意味は、息を弱くすることではないし、また、喉を締めないこと、あるいは喉を下げて思い切って強い息で出すことではない、という意味である。

以前に、他の生徒に教えたブレスの方法が良くなかったか?
おへそから息が入り、胸を満たし、頭を満たし、頭の天辺から声が出る、という方法を教えたのだが、
多分喉まで一緒に上がってしまったのだろう。

こちらの意図としては、このブレスをすれば、声が頭の天辺から出るときは、喉は充分に下がって開いているはず、なのであった。
が、そこが全く違っていたのだろう・・・・

トスティのInvanoは、今日の発声の方法でみっちり練習をしたが、歌詞が付くと喉が締まるようであった。
母音だけだと、大分開いた感じがつかめるのだが。
母音だけでも、気をつけてほしいのは、喉を開ける、というより、軟口蓋を開く、という面だけを注意すれば良い。
歌詞発音で、喉を開くためには、歯で、指一本分、くわえた状態で発声すると、軟口蓋が開き易い。

カンツォーネはTagliaferriのNun me sceta
高めのフレーズの入りでは、ポジションが上がらないように、最初の声のアタックを少し低めからずり上げる、という
裏技を教えた。ずり上げというのは、アカデミックには良くないとされるが、声のためには、有効な方法である。
音楽として許容出来る、あるいはいかにも音楽的なずり上げという、テクニックはあるものである。

最後にドニゼッティ「愛の妙薬」から「人知れぬ涙」
全体に、喉が上がってしまい、放棄となってしまった。

こちらの教え方で調子を崩してしまったのが、残念。
身体の状態は、最終的には自分にしかわからないわけで、喉が上がってきたな、と思ったら、違うことをやっていたとしても、それに対応する融通を考えよう。
なぜなら、調子を崩して声が出せなくなったら、それで終わりだから、である。
テノールの場合、ぎりぎりのところで声を出す面が強いから、常に、自分の声の調子に敏感になり、声の調子を崩さないポイントだけは外さないで、発声を考えることを常に習慣づけて欲しい。そういうことが本番での調子を維持するテクニックにも通じるからである。

SY

体調を崩したとのことで、軽く発声練習をして、すぐに歌となった。
山田耕筰の「赤とんぼ」そして唱歌から「おぼろ月夜」
いずれも彼女の声は、ピッチの良さが身上であろう。
とてもピッチの良い声で気持ちが良い。
体調のせいで、声量がいま一つであったが、これも体調が復活すれば心配ないので、ほぼ何も言う事がないくらい、良く歌えていると言える。

ドビュッシー「美しい夕べ」
出だしのリズムを教えた、伴奏の3連符に対する、ボーカル部の3拍子のリズム。
逆にいえば、伴奏部が9/8で、ボーカルが3/4の拍子となるので、ボーカルの8分音符は2連符と思えば良い。
また、4分音符は、符点を付けたと仮定して、8分音符3つ数えるように。
そうすれば、下の伴奏との整合性が出しやすいであろう。

「星の夜」は、懸案の高音の発声を上手く対処できていた。
もう少し喉が開けば理想だが、まずは音程よく出せることが目標である。
喉を上げようとしないで、かつ喉が開いて出せるように、うなじでしっかり支えておく姿勢も有効であろう。

後は、全体にフレーズの入りの声のポジションに注意を。
自然に歌うと、ポジションが高くなるため、必然的に高音が苦しくなるのである。
そのために、フレーズの入りのポジションで、低い音を意識してブレスすると、ポジションが低くなって、有効である。
これは、フレーズの入りが高くなればなるほど、有効である。

TK

発声は、低音域で喉を開くように、下顎を下ろすこと。
下降形で、低音に降りるにつれて下顎を下ろして、喉の奥が開くように意識すること。
この発声で、1点Cの声に共鳴が少しでもつけば成功であるのだが。

ベッリーニ「清教徒」からQui la voce
彼女の声では満点に近い出来だが、3点Esの声の響きを何度も練習した。
やはり、どうしても口を横に引いてしまう。
引いた方が音程が出しやすい高音になるのだが、そこまでの声との違和感が強くなってしまう。

そこで、音程が出なくても良いからとにかく口を横に引かないように、縦に、という方法で練習しながら、
鼻腔に入れるように上あごを上げる、上唇を上にする、など工夫をして練習して、良い声に不安定ながら到達出来るようになった。
まだ、3度に1度の成功率なので、更に練習を重ねて、最高音の良い響きを求めたい。

バッハのカンタータ72番のアリア
長いフレーズのブレスポイントなど工夫をして、全体の完成度を高める練習をした。
子音の扱いも良いし、音符も明解に発声出来ているので、曲の表現が高まった。
後は、この曲特有の16分音符4つで表す固有のモチーフの扱いに、こだわりを持ってほしい。
あたかも、笑っているようにすら思える、固有の表現、明るい楽しい表現を、このモチーフにこめてほしい。

最後にバッハのカンタータ78番デュエットの練習。
ソルフェージュ的には、まったく問題ない。よく譜読みが出来ていた。
声としては、このデュエットには申し分がない。
むしろ、ピッチが重要である。
この曲のハモリは3度6度が多く、音程が厳しく問われるので注意が必要である。

HN

少し間が開いたので発声で様子を見てみた。
発声練習の声で、喉を押さない、力まないで出す良い感触が垣間見えていたが、それが今日の好結果を導いていたのだろう。

このところずっと続けている古典歌曲のTu lo saiを今日も採り上げた。
先ず出だしのTuで子音を必要以上に強く出すために、Tの気息音のせいで、喉に力が入るようであった。
ここは、絶対に子音を力ませないこと、丁寧にアタックすることである。
Uの母音であることも意識して欲しい。自然に喉が開くだろう。

大分感じがつかめてきていたが、やはり高音域で苦しくなると、胸声になり過ぎて、音程が出なくなり、叫んでしまう。
これを見ていると、苦しい時のブレスは、金魚のあっぷあっぷと同じで、顎を上げて、口を開けてブレスをしてしまう。

それで、ブレス時に口を絶対に開けないで、鼻だけでブレスして、軟口蓋を開けてもらうように徹底した。
これが抜群に功を奏して、2点F前後の声が、綺麗にチェンジして、音程がはまるようになった。

今回のこの声は、完全なファルセットではなく、微妙に芯が付いているから、息で支えられる声になっているはずである。
まだ、馴れてないのでやらないが、この声の場合は、クレッシェンドが出来ると思う。
完全なファルセットになると、クレッシェンドが出来ないから違いが判るはずである。

調子が良かったので、以前やったLascia ch’io piangaで練習してみた。
これもまた、抜群に調子が良く、高音域が綺麗にソプラノの声になってきているのが判った。
勿論、まだ滑らかさとかふくよかさまでは行かないのだが、基本線がチェンジした細く音程の良い高音、というラインが確保できたのが、
こちらとしても嬉しかった。

先ずは、この声をものにして、確実にしてもらいたい。そこからまた先が始まるだろう。
再び、最後にTu lo saiで様子を見た。気をつけないと、最後の方の高音で、力んでしまうが、大概が口を開けて顎を上げてブレスをした場合である。