ドビュッシーのピアノ作品中もっとも完成されたものは、最晩年に作られた「12の練習曲集」でしょう。
初期のお菓子のように甘い作品群は、サロンのマダムやマドモワゼルたちを意識して作られていたと思う作風であり、食うため感横溢。
中期作品で良く取り上げられる作品群も、実はあまり好きではない。
特に「ピアノのために」「喜びの島」「ベルガマスク組曲」の3作品はどうも今一つの感がぬぐえず、同時代のラヴェルが明らかにドビュッシーを凌駕していると思えるのです。
しかしドビュッシーが明らかに彼の本領を発揮し、他の追随を許さないの作品こそが12の練習曲集というわけ。
この作品を以て、彼の作曲哲学と自身のピアノ技術が完璧といってよいほど見事に合体したといえないでしょうか。
ここにご紹介するポリーニ氏の演奏は、曲集中4番目の「6度のため」です。
聴いていると、前奏曲集の「月の光に映えるテラス」と相通じるものがあります。
誰もいない廃墟のサロンでいつしか亡霊たちが集まり舞踏会が開かれているが、ふと気づくと亡霊たちはいなくなりまた元の誰もいない廃墟に戻っていた・・・。