ラヴェルのピアノ曲中でも好きなものの最右翼。

ラヴェルの作品の印象は、一言で言えば「完璧」です。
どの作品も、きちっと折り目正しく美しく、彼が意図した美の世界が表出されていることが、聴衆に良く判るように出来ている。
ドビュッシーの場合、人によっては良く判らない印象を持たれる部分がある。
何か良く判らない彼の悩みのようなものが、漂っている。

ドビュッシーに比べてラヴェルには悩みがなかったかのようにも思える。
言い換えれば、ドビュッシーの方が人間臭いとも言えるのだが・・。

パリ留学中にラヴェル博物館に行ったことがある。
寝室には、生前に着ていた色とりどりのシャツがきちっと並べられていて、相当なお洒落だったことが伺えたのだった。
驚いたのは室内の壁紙まで彼が自分で作ったものだったとか?

作品もまさにその印象そのもので、一分の隙もない完ぺきな印象を与える。
しかしそれは取りつく島がないという冷たい印象ではなく、豊かな詩情に溢れているのである。

この「夜のガスパール」は、ルイ・ベルトランの詩を題材にしたピアノ組曲である。
楽譜にベルトランの詩の一文が載っているのだが、これを訳して朗読を入れた演奏会をしてみたいと考えている。