夜の部は、昼に比べるとプログラム内容の幅が広く、出演者の熱演とともに、興味深いステージ展開となりました。
技術的には、昼の部は、全体に平均点以上であるが、突出した印象もあまりなく穏やかだったのに比べ、夜はちょっとどっきりするような場面もありました。
声の響きのレベルや、レガートな歌い方について、更に高いレベルに目標を持ちたい、と思わせる演奏が多かったのです。
また、聴いていて一瞬ドキッとすることも昼に比べて多かったです。
ともあれ、皆さんへ心からの感謝と祝辞をこの場を借りて申し上げます。
最後のご挨拶でも喋りましたが、ピアニストによる伴奏、という仕事の貴重さとその素晴らしさに改めて敬意を表すると同時に、心からのお礼を再度申し上げます。
指導することの中には、曲作りに参加させていただく喜びを与えてもらえる、この仕事にも感謝したい気持ちです。
本当にありがとうございました。そして生徒の皆さんへ、おめでとうございました。
SDY
彼女は、本番前に2回ほどレッスンをしましたが、ほとんどが私の妻が教えた生徒です。丁寧に綺麗に歌えるところが美点です。
本番は、レッスンと変わりなく、ステージ本番という緊張もほとんど感じさせずに、素敵な堂々たるステージマナーでした。モーツアルトの高音に、少しばかりの心配がありましたが、心配に反してとても良い声を出してくれました。
元々充実した中低音の声を持っているので、高音も同じくらい出ると良いな、と思うからです。
本番では、教えたことを出来るだけ頑張ってくれて、聴いていて好感が持てました。
ドニゼッティの連隊の娘のアリアは、お見事でした。特に中低音の声の少し暗めの声色は、なかなか魅力的です。
高音も、無理がなく、喉で押さない軽やかな響きで美しい処理だと思います。今後も、丁寧に綺麗に歌うことは大切に続けて下さい。
また、レパートリーはいろいろなものに挑戦して、自分の好き嫌いをはっきり見つけることも勉強になるでしょう。
おめでとうございました。
FT
リハーサルから、痰がからむのが気になっていたようで、心配がありましたが、本番は、その点では問題がなく心のこもった良い歌が歌えていました。
1曲目は、良い声でしたが、音符が見える歌になってしまったのが惜しかったです。歌詞を滑らかに歌う方法を、これからもっと勉強されて下さい。
2曲目はとても良かったです。一番自由に歌えたのではないでしょうか?3曲目は前の曲の流れをそのまま引きずって少し重くなってしまいました。
そのため、低音発声になって、痰がからむような現象が再現してしまいました。
低音の喉の開き方がまだ身に付いていないために、高音を歌った後に、低音に降りた時に痰が絡むような現象になるのだと思います。
声は全体に重さがついて、良い声になりました。ただ、気を付けないと、今度は奥にこもって通らない声になる点に気を付けて下さい。
おめでとうございました。
OM
本番前1週間くらい前から、いろいろなことが重なり、絶不調のなかでの出演となりました。
リハーサルも少々心配ではありましたが、力いっぱい歌ってくれて好感が持てる歌になりました。
特にロッシーニは、彼女のソプラノの女性的な声が、かえってこの男らしい歌を歌うという逆効果の色気が出て良かったです。
目論見通りの結果で良かったと思います。
ラフマニノフは声の調子は基本的に良かったのですが、緊張のせいか?ブレスが短かくなり、繰り返し以降で喉の調子が変わってしまいました。
それにしては最後の高音は良く決まったので、爽快でした。
今回2曲の結果は、伴奏合わせの練習が足りなかった面も大きいです。
その点は、体調の問題もあって出来なかったのですから仕方ないです。またぜひチャレンジしてほしいと思います。
おめでとうございました。
SA
今回の本番は彼女のムジカCコンサート史上1~2を争う良い演奏だ!と思いながら聴いていました。本当に感動しながら聴いていました。
ご主人の良く練れたオルガンのような弱音の響きと、真っすぐに伸びたソプラノらしい響きが見事に調和し、サティらしいアルカイックで美しいメロディがホール一杯にその響きを満たしてくれました。
音楽的に楽しめる演奏が結果的に出来ていたわけですが、その上で(それだけに)発声としてはレッスンでの課題を、あともう一歩クリアしてほしかった、という思いが残っています。
未だ高音域で喉を締める傾向があるのと、低音に降りる際に、喉が一気に緩んで音程が落ちてしまう傾向がありました。
この点はかなりやったと思いますが、これからもこの課題を徹底して身につけてください。
おめでとうございました。
SM
演奏は熱のこもった集中力の高いものであり、ピアニストの助けもあって、無難にステージをこなすことが出来ました。
聴いている方はあまり心配なく聴くことが出来たと思います。
リハーサルから続いて本番も少し緊張が出たのか?理由は判りませんが、ホールの大きさに自分の声の響きが飲まれてしまったと感じたか、気持ちが先走ってしまったのか?
前者については、結果として胸声発声の要素が強くなってしまいました。後者は、その原因となります。
今回の本番を通して思ったことは2点。1点目は彼女に限らずですが、歌詞を扱う歌い方として極力、音符単位、母音単位で歌うのではなく、フレーズを一本の線として声の響きを扱うことを覚えてほしいです。それは、日本語であれ、外国語であれ同じことです。
それから、もっと大きな視点で、集中力の持ち方として、冷徹なまでに、声を楽器のように扱うことだけ、に気持ちを集中してください。
おめでとうございました。
GH
私の間違いで、休憩をアナウンスしてしまい、彼の出鼻をくじいてしまったのでは?と心配しましたが、とても落ち着いた、シューベルトの「冬の旅」らしい、」良い演奏が出来て安心しました。
声は全曲で安定していました。
彼の歌声の美点として、ドイツ語の子音のつぶだちが良いのが今回も磨きがかかりました。
とても上手いと思います。声もバリトンらしさが増してきました。
2曲目後半で、譜読みの乱れが少しだけありましたが、ピアノが上手く処理してくれました。
また、3曲とも、ピアノがとても良い表現をしてくれました。声は中音域の声が素晴らしく綺麗になったと思います。
低音の声は、もう少し喉を開けて柔らかく当てるようにして出す方が良いです。
それから、Iの母音は、もう少し喉が上がらないようにする発声の訓練が必要だと思いました。
おめでとうございました。
MM
リハーサルに比べると少々緊張で上がっていましたが、過去の演奏を聴いた記憶からみても、ベスト3に入る良い演奏だったと思います。
教えて来たことが出来るようになったのが、ここ1カ月くらい。技術が確実になって来たので、後は本番でどうだろうか?ということでした。
リハーサルはその意味において90点、本番は80点というところでしょうか。
2点C~Fの声域の問題は、恐らくほぼクリア出来ていると思います。
あとは、この声域の声を、更に密度のある前に響く声に出来るように、頑張って下さい。
そのことで、歌詞発音も明瞭になってくるでしょう。このことは、逆に言えば、彼女に限れば、歌詞発音をかなり明確に意識することも有用ではないか?と聞きながら思っていました。
とても良かったです。おめでとうございました。
WH
今回は、リハーサルと本番ともに、全曲にわたって、とても良い調子で歌い通せました。
ステージマナーも、上がる様子も見せずに、楽しそうな表情が映えて、聴いてて、見ていて堂々たるステージマナーでした。
声も明るく、かつ芯のある声で、ホールに良く響くソプラノらしい響きでした。
惜しむらくは、歌う姿勢が、顔が少しぐらぐら動くために、声(母音によって)微妙に不安定感が出ることです。
微妙なものですが、見た目も不安定なので、声の響き以上に何となく気になるものです。
ちょっとした意識で治りますから、今後は、顔を動かさないよう、びしっと決めて歌えることを目標にして下さい。
見た目がそのようになるだけで、同じ声だとしても聞こえ方が違うものなのです。
アリアの演技は、短時間でよくまとめましたが、楽譜の捨て方とタイミングが後一歩の感あり、でした。もう少し練習時間がが欲しかった所です。
おめでとうございました。
TK
今回の演奏は、レッスン時と変わらず、実に安定した彼女らしい声の響きが良く通っていました。
レッスンで勉強した、アリアの曲の構成感、声の表情も良く出せていたと思います。
勉強した成果、と言う意味では、ジャンニ・スキッキ「愛しい私のお父様」が、もっとも曲本来の表現にかなった素敵な歌になったと思います。
あまりやらないことですが、1プログラムでミミとムゼッタの両方やってみて、今の彼女に合っているのは、実はムゼッタだったことも良く分かりました。
ミミの演奏で顕著になりましたが、レッスンで勉強した喉を締めないでなるべく緩めて、深い響き、ソフトで良く響く声が、まだ実現出来なかったことが惜しかったです。
なかなかホールで直ぐに実現するのは難しいですが、今後も諦めないで深みのある響きを得ることに挑戦して下さい。
おめでとうございました。
YC
アリアの2曲ともですが、高音の発声が素晴らしかったです。
欲を言えば、中低音の発音でもう少し深みが出れば完璧と思います。
具体的にはもっと唇を使った発音が出来ると良いです。発音の響きがやや浅いです。これは声量のことではありません。
高音発声は、ブレスも長く素晴らしい声でしたが、強いて言えば、もう少し抑制しても良いか?という気もしました。
しかし本番でのことですから、これはないものねだりでしょう。
Vissi d’arteは、中低音の声にもう少し厚みと膨らみ、声量が欲しい感じがしました。
高音の声は素晴らしいだけに、その点が少しだけ物足りなさを感じました。
しかし、2曲合わせてみると、今の彼女には「宝石の歌」の役柄の声がキャラクターは合っていると思います。
また、これから年齢を重ねれば、中低音の声の響きにも自然に厚みが付いて来ることが期待できますので、トスカのアリアも将来が楽しみです。
おめでとうございました。
NA
プーランクの「歌の調べ」は、テンポがとても速い難しい曲ですが、作品コンセプトの的を得た演奏になったと思います。
判りやすいメロディですが、テンポが緩むとこの曲のコンセプトが消えてしまうのです。テンポの速さが身上でしょう。
テンポ、声の使い方の特徴など、私がレッスンで教えた通りに、本番という状況で再現できたことが、見事だと思います。
低音域が多い曲なので、苦労しますが、深みのある響きが出せていました。
欲を言えば、1曲目の声色はもう少し明るくても良かった気がします。
マノンのアリアは、非常に品のある歌声になって、マスネらしい、メロディの甘さやドラマ感が良く出ていました。
惜しいのは、最後の最後に演技を付けたので、出来ればもっと積極的に動いて歌えれば、良かったと思ったことと、喜びと笑いをこらえるような全体の流れが感じられるように、もう少し出せれば良かったです。しかし、1回目ですから、また機会を見て更に深めれば良いのだと思います。
おめでとうございました。