昼の部
この日は見事な日本晴れで、これぞムジカCコンサート!という気持ちの良い朝を迎えられました。
そしてそれに呼応するかのような気持ちの良いマチネコンサートでした。
外光と室内光が混ざったステージだったのです。
大倉山記念館のホールは、音楽専用というほどのこともないのでしょうが、ピアノが予想以上に良い感じで響いてくれたのと
デッドな音響のわりには、声量のあるなしに関わらず、平均した声の響きが聞こえるものでした。
ちょっとスケールが違い過ぎますが、パリのパレギャルニエみたいでした。
あそこも反響は少ないけど、天井桟敷まで声がきちっと届きますね。
木と石を配した室内も良いものです。
生徒の皆さんも、予想以上の安定した演奏をしてくれたので、全体的に安心して聴けました。
リハーサルでは心配な面もあったのですが、良い意味で本番の緊張が良かったのでしょう。
実は生徒のプログラムは時間をきっちり計りませんでしたが、これも見事に時間以内に終了。
快適&スムーズネスな発表会を終えられました。
クラシックの発声は初めてで戸惑いもあったけど、イタリア古典の素朴な歌は彼女の歌心にはストレートに響いたようです。
声もこちらで教えた範囲のことと、彼女の本来のテクニックのちょうど中間みたいな感じでしたが、無理なく収まって成功だったと思います。
かなり緊張して上がっていたけど、歌い進むに連れて徐々に慣れてきたみたいでしたね。
Nel cor piu non mi sentoは、上がりすぎて出だして声がもつれそうでした。
でも、途中の声の伸ばしや、高音も何とか対処。ブレスも短くなってしまいましたが、それも自然に対処出来ていた。
O cessate di piagarmiから少しずつ気持ちが復活して、カロミオベンは気持ちよく歌えていたのではないでしょうか。
けっこう頑張る人なので、気持ちさえ長続きすれば確実に上達するタイプだと思います。
今回がスタートだと思って先ずは1年そして3年と続けてみてください。必ず結果が出ると思います。
今回でムジカCコンサート出演は2回目かな。
高音は思ったような声が出せませんでしたが、前回のcafeアンサンブルよりテノールとしての声の訓練の成果が確実に出ていました。
高音のきつさがあっったとしても、そこに至るまでの声に無理がなく、音程も良かったのが大きいのです。
高音のきついのも、瞬間的な対処を上手くやって、どうにか破綻なくまとめ上げたところを評価したいです。
テノールというのは、調子が悪くて上手く対処しよう、と思ってもどうにもならずに、酷い声を出してしまったり、終いに喉が上がって声が出なくなることも、ままあるのです。
プロ級の歌手、来日するような有名テノールでも、こういうことはあるもの。
私もそういうステージに遭遇したことがあります。
ですから、どうか気にしないで、次回に繋げてほしいです。
姿勢を正すこと、正した姿勢で声を出すにはどこをどう変えたら良いだろうか?
大声を出そうとしないで、響きを作ること。課題はいくらでもありますよ。
発声練習一つとっても、がーがー出して出ればOKというものではないのです。
出し方、方法をもっと冷静に確実に良く考えて、対処してください。
彼女もレッスン回数は多いほうではないですが、こちらに来出してからもう2年くらいになりますね。
か細い声だったのがようやく中低音がしっかりしてきた、と思ったらむしろメゾ系の声になった。
その分、高音が相変わらず喉が締まってしまい開かないのが課題。
また、声のチェンジがまだ綺麗に行ってなく、単にスカスカの状態のままになってしまうのも、高音域の難しさと関係があるでしょう。
この発声は、これからも根気良くやりましょう。
演奏としては去年のムジカーザより一段安心して聞けましたから、あまり難しい曲を狙わないで、発声を確実に伸ばしていける曲をこれからは選んで本番で確実にものにしていくことを、積み上げて行ってほしいです。。
彼女はコンサートは3回目かな。
直前のレッスンが少し心配な状態だったけど、結果的には本番が一番良かったので安心できました。
課題としては、ソプラノ路線を歩み始めて今回がちょど谷底というか、難しい時期に当った感じです。
中音域最低部が声が響き難くなってしまった。
以前はメゾの声を持っていたけど、それが薄くなってきました。
発音も含めて、しっかりした声、明快な発音を併せ持った声は、かなり発声の改定が必要だと思います。
これからはまた発声を中心にやって行きましょう。
シューベルトの歌曲、という彼に合った世界を見つけて、彼の声は磨きがかかってきましたね。自信も少し付いてきて、ステージの風格が出てかっこよくなりました。
これは大したもの。
「冬の旅」はあのホールにピッタリですね。
まるで昔の亡霊が蘇って聞いているような雰囲気が醸し出されて、素晴らしかったです。
高音の響きは少しずつ良くなっていますね。特に「郵便馬車」でそれを感じました。
椿姫のジェルモンとなると、高音の発声にはまだまだ課題が残りますが、お客さんが喜んでくれたと言う面では、この選曲は良かったのでしょう。
これからもマイペースで良いですから楽しく続けてください。
今回のマチネの出演者の中では、努力賞を上げたい一人です。
もちろん発声に課題は残るし、発音もそれに同じです。
ただ一番良かったのは、こちらの助言に対して真摯に答えてくれて、ステージにそれが良く出ていたことです。
パミーナは身体全体で中身を表現しよう、という意志と集中がはっきりと見られました。
フォーレも喉が上がらずに、開いた発声が出来たと思います。
フォーレは先ずは発音はこれからの課題として、曲の美しさは充分出せたと思います。
これからも続けていくためには、発音もとことん大切にしてください。
あきらめないでトライしてください。
発音と発声は対ですから、発音を気をつけることで発声の問題も向上して行ける面もあると思います。
たかはしみかさん
初出場ですね。
今回の本番は、ちょっと上がってしまったようでしたね。
声がきちんとお腹から出ないで、喉から上だけになってしまいました。
これからは、試験であれコンサートであれ、本番に向けての練習量は自分で思った量の2倍くらい考えてみてください。
彼女は良い声質を持っているのだけど、どうも迷いがあるようで、なかなかそれを掴みきれないでいます。
いろいろな情報を取り入れて自分で考えてやって行く事は、自分自身がしっかりしないと迷うだけになりますので、足場を固めてください。それは発声の方法論もあるし、レパートリーもあるでしょう。
いずれにしても、これからは自分の感性に無理のない確実な方法、それはレパートリーもそうだし発声もです。
確実に理解できて歌えるもの、に焦点を合わせて勉強を続けてください。
わきくろまるさん
今回、レッスンで勉強してきたことが一番無理なく出せたのが彼女でしょう。
曲もたくさんやらずに、のんびり勉強したのも彼女には良かったと思います。
モーツアルトを勉強したのは、良い持ち声プラス更に洗練を身に付けてほしかったからです。
個人的に思うのは、ツェルリーナはややもすれば、かまとと風の歌や童謡風みたいなのが日本人歌手に多かったりして、気に入らなかったのも彼女に与えた理由の一つです。
そういう意味では完璧とは行かないまでも、結構お気に入りの雰囲気になったと自負できました。
まだ完全ではないですが、ソプラノらしい音域を滑らかに歌うことで、それが少し開発できたかな。
時々、非常に良い共鳴、響きが出ていました。本人は気づいているでしょうか?
更に高音域はまだまだ発声の訓練が必要ですね。
転がすことも大切だし、ロングトーンも大切。
基本的には声を抑えることをあまり意識しないほうが良いようです。
ただ、開いた喉、というのは覚えて行きたいですね。
よこかわさん
彼女の声は本格的な声楽の持つ良い面を手に入れてますね。
大学生の頃から良い先生に就いて練習した賜物でしょう。
そういうわけで、初出場の彼女は私が教えたことはほとんどありません。
強いて言えばモーツアルトのアリアで彼女の声の持つ難しい面を掘り起こしたくらいでしょうか。
声質の向き不向きというには、まだまだ若いし、ドンナ・アンナくらいはまだまだ上手く歌えるようになるはずです。
今回のステージでは練習時よりも更に上達して、後半の難しいところをそつなくまとめ上げたことには拍手を送ります。
細かいことでは、発声に起因するエの母音の狭さが、気になります。もう少し母音の響きを広く扱ってほしいところです。
多分前に当てたいのは良く分かるのですが、どうも狭いのが気になるのです。
声の基本的なところは良いですから、後は速いテンポ、早く廻すパッセージの習得をされると良いと思います。
たかはしともこさん
全体的な印象は力みがなくさらっとした良い演奏だと思いました。
逆に言えばもう少ししつこさというか、こだわりみたいなものがほしかったです。
シューベルトはテンポの設定までは成功だったけど、もう一歩歌詞の内容を消化した演奏を望みたいところでした。
モーツアルトは声としては問題がないのだけど、発音が少し不明瞭。大分良くなったのですが。
アリアは、よく歌えていましたが、後少しの集中がほしかった。
彼女もレッスンノートでいつも書いていることが課題です。
今回は多分ホールの響きに影響されてしまったのかもしれません。
でも逆に言えば、ホールの響きによっては彼女のナイーブな感性が冴え渡る可能性もあるということです。
今後は、もう少し中高音域から高音域にも胸声区の響きがあると、ホールの響きに依存しなくても歌いやすい面はあるかもしれません。
そのためには、自身の声のイメージや方向性をもう少し変える必要もあるかもしれません。
その辺がこれからの課題であり、一番難しい面かもしれません。
まなべさん
今回はモーツアルトのアリアでした。
難しいテノールアリアを難しそうにではなく歌えてしまうところは彼の美点です。
発声面で言えば、テノールとしてはもっとも核になる部分は、確立できていると思います。
それは音域において言えるでしょう。
これからは、声質をどうしたら更に本格的なテノールのそれに出来るかどうか?が、課題かもしれません。
母音による響きの深みの違い、後は、中高音~高音域の喉の開き感が後一歩欲しい所です。
それは外国語を扱う歌である、という意味においても同義です。
語感を大切にする、という感覚が発声の深みを増していくことと関係があると思います。
ウムラウトの発音、イや深いウの発音の響きはどうか?
高音はどう響きが変わって行くか?
これからは、その辺りをこだわって勉強してみてください。
これは自助努力で手に入ると思います。
バロック以降~ロマン派の曲でテノール歌手の歌をたくさん聴いてみることも良いと思います。
のうじょうさん
全体を通してでは、フローレンスのセレナーデが強く印象に残りました。
細く艶やかで、それでこそイメージ出来る星空と地中海の艶かしいイメージが感じられました。
彼女の歌を効いて、私はゴッホの絵で「夕方のカフェテラス」をイメージしました。
この曲で聴けた声は、彼女がこれから伸ばしていくべき資質の典型なのかもしれないです。
ワーグナーのイゾルデは本来の雰囲気充分で、この曲の美しさが十分に出せていたと思います。
最後の2ページは本当に大きな夕日の沈む美しい感動を呼び覚ましてくれました。
この曲の紹介としては充分役立つ演奏だったといえるでしょう。
「悲しい歌」は、テンポが軽かった分、もう少し落ち着いた印象が欲しかった。
これについては、難しいことだけど言葉(その意味)をどう扱うか?という本人の意思の力が左右するので合わせの設定は難しいです。
いくらこちらで設定しても、その自発的な意志が生まれてこないと、自然なブレスの力も伸びないと思うからです。
単に発声とか肉体機能的なことだけでは片付けられない、奏者自身の表現意図、意欲と密接に関係のあることでしょう。
言葉、そして音楽、それがどう結びついているのか?自分なりの理解を得られるためにも歌の言葉の理解と共感を更に大切にして欲しいです。