2017年11月4日アトリエムジカCコンサート夜の部講評
このところ、夜の部はレッスン経験の長い方を中心に出演者を構成してきました。
改めて今回のプログラムを見聞して思ったことは、フランス歌曲の演奏が定着し、またその演奏レベルが上がったことです。
自分が蒔いた種が発芽し成長してきたのだ、という本当に嬉しい実感でした。
それは、生徒の演奏を聴いて作曲家の素晴らしさに改に開眼することが出来たからです。
また、年数をかけて発声の進歩が見えてきた方、短期間で成長された方も多くあり、全体にレベルの高い発表会になりました。
これは、ピアニストの力量によることも大きかったと思います。
フランス歌曲に限らず、ピアニストの音楽によって声楽の演奏は成立しているといっても過言ではないでしょう。
ピアニストの皆さんには、昼夜合わせて心からのお礼を申し上げます。
皆さん、おめでとうございました。
イニシャルをクリックすると、各出演者へのコメントにジャンプします。
各出演者の写真をクリックすると、その出演者の動画ページが開きます。
TM HT ST TSS HA FT SM MT NA AC
声楽のレッスンは10年以上の経験がありますので、本番の安定度や声の問題も、その経験に相応しいレベルの安定した演奏が出来ました。
全体には発声が安定し音程も良く、不安感を持たせたず、ブレスも良く伸びていましたね。
今後は、この方向性で、どうしたら余計な力を削いで効率よく発声が出来るか?という点と、弱声をどのようにして発声するか?という点も覚えて行くと良いでしょう。
チマーラ:「郷愁」
モーツアルト:「ドン・ジョヴァンニ」「彼女の幸福こそ私の願い」
こちらに通うようになってから、3年目です。当初はテノールの声質でしたが、徐々に深みを増し、今回の発表会ではバリトンらしい良い声を聴かせてくれました。
発声の可能性は、彼の才能と声質からしてまだまだ伸びるでしょう。
これは、選曲の影響もありますので、今後も、バリトンらしい選曲を考えて行ってください。
発声としては、弱声のテクニックも覚えると歌曲の場合は表現力が倍加するでしょう。
日々忙しく仕事に邁進していますので大変でしょうが、より練習に精を出してもらえれば、と思います。
デュパルク:「前世」「フィディレ」
発声を覚えるのに大変だった時期もありましたが、今回の発表会でようやく声が前に出せるようになったと実感できました。
こちらの教え方と彼女の受け取り方との間の齟齬が大きかったのではないか?と感じています。
響きという概念が、喉をかばって使わないように、というところがあったのではないでしょうか?
より直接的な発想で、今回は臨んで成功したと言えましょう。
今後は、この発声を基礎に、更に共鳴を覚えることで、より滑らかで美しい声の響きを作って行きましょう。
モーツアルト:「フィガロの結婚」より「恋とはどんなものかしか」
プッチーニ:「ジャンニ・スキッキ」「私のお父さん」
今回の結果は、今まで教えて来たことがほぼ反映された素晴らしい出来だったと思います。
発声上は喉が高くならない発声が実現できていたことです。
そして作品の持つ感情的なオーラが彼女の歌声と一致していたことが大きかった。
今後レッジェロとして声域を伸ばして行く場合、更に高いソプラクートを覚えて行く必要がありますので、改めてブレスの身体の使い方を再点検して行くと良いです。
モーツアルト「寂しい森で」
ドニゼッティ「連隊の娘」より「さようなら」
プッチーニ「トゥーランドット」より「氷のような姫君の心も」
長年の舞台経験の積み重ねがあるので、表現力豊かで安定した歌唱でした。
華やかで舞台栄えする印象は、いつもと変わらず、お客様も楽しめたと思います。
私の立場からすると、今後は発声の進化を望みます。
低音から高く響きを集められる様に、そしてそのまま高音域へ進めるように。
換声を意識しないで響きを変えずに高音域まで達することが出来る技巧を手に入れてください。
アーン:「クロリスに」
ヘンデル:「エジプトのジュリアス・シーザー」より「つらい運命に涙はあふれ」
彼も本番前に楽屋で声出しをしっかりやったのでしょう。声の調子が良かったです。
難しい理屈抜きで、声の調子が良いと歌も伸び伸びできます。
彼は喉があまり強くないので、冷えた喉でいきなり歌うと、痰が絡んでしまいます。
この点は、発声を覚えることで回避できますので、今後も発声を覚えることを続けて行ってください。
ステージマナーとして、歌う顔はなるべく目を閉じずに、お客様に顔を見せることも覚えてください。
大中寅二:「椰子の実」
岡野貞一:「児島高徳」
プッチーニ:「トスカ」「たえなる調和」
お詫び・・ビデオ撮影でズームを変更しなかったため、顔の一部が画面に入っていないこと、お詫びします。
歌のスタイルというのがあるとすると、彼女はこちらの教室ではそのスタイルを持った一人だと思いました。
発声あるいは発音に課題は残っていますが、彼女の歌声を聴くと、何か癒されるものがあります。
これは貴重なことだと思います。それが彼女の持つ個性だと思います。
発声や発音というものは、やればやっただけ必ず進歩して行くものですから、今後も精進を怠らずに続けてください。
フォーレ:歌曲集「ある一日の詩」
サンサーンス:「サムソンとデリラ」「私の心はあなたの声に花開く」
このところ、ドビュッシーやラヴェルの晩年の晦渋な作品が続いていますが、そういう作品の良さを理解し、演奏してくれる貴重なキャラクターとなりました。
作品の表現を、必要十分なだけ無駄なく届けられる声を扱う知性と合理性が彼の持つ美点です。
今後も、声域にこだわらず、自身の好きなレパートリーに挑戦して行けば自ずと声も発展していくと思います。
今後の新たなレパートリーも期待しております。
ドビュッシー:「2つのロマンス」より「ロマンス」「ヴェルレーヌの3つの詩」
お詫び・・・ビデオ撮影のズームを変更しなかったため、顔の一部が画面に入っていない事をお詫びします。
しばらくお休みしていましたが、また復活してくれました。
以前に比べると、どこか肩の力が抜けた歌声が、作品表現に繋がる演奏が実現出来るようになったと感じました。
休んでいた間の本番の経験が大きいのでしょうか。
技術的には、フランス語の発音を更に明瞭に出来るようになることと、弱声発声を使えるようになると表現の幅が広がると思いました。
シャブリエ:「マリエットのクープレ」
フォーレ:「月の光」「夕べ」
歌い出しは緊張が感じられましたが、歌い進むに連れ、彼女らしい良い声を発揮していました。
彼女の持ち声で歌ったドビュッシーの歌曲ですが、秀逸なピアノ伴奏にも助けられ素晴らしいドビュッシー歌曲の世界を堪能させてもらうことが出来ました。
ブレスのことと高音発声を含めて、更に発声のテクニックを覚えることで、より歌うことが楽しくなるでしょう。
今後も発声法の進化を忘れず、精進されてください。
ドビュッシー:歌曲集「忘れられし小唄」より「そはやるせなき」「都に雨のふるごとく」「木々の影」「木馬」