生徒に教えたこの2曲、中期頃の作品で、とてもシンプルで美しい。
ぼくも勉強し出した頃、良く勉強した曲だけど、その頃はこの曲の良さがわからなかった。
綺麗だとは思ったけれど、なんだか単純過ぎるのと、妙にフォーレ風な甘い香水の匂いが、鼻につくといえば鼻についた。
しかしこの味わいが美しいのだな、と思えるようになったのは収穫だった。
ちょっと見はシャンソンなのだが、それが演奏次第で、いぶし銀の美しい歌曲に生まれ変わる、それがフォーレの真骨頂という趣き。
とても滑らかな和音進行がピアノのラインにはあって、その滑らかさと和音の明るさが、あたかもシスレーなどの印象派の風景絵画を思わせる。
あるいは一見無骨に見えても、良く観察すると、とても優雅なたたずまいであるゴブラン織りにも似たゴージャスな雰囲気もある。
フォーレのこの歌曲のゴージャスさ、というものの秘密は、多分、形をどのように作れば、全体が滑らかで丸くなるのか?というようなことに、物凄く時間がかけられているように思う。
削って削って削り尽くして出来た形の洗練。だろうか。
だから、音域が狭くても女性の声の美しさが際立つし、本質が一番良く見えるのだと思う。
ま、いわばミーハーの対極にある音楽、といえるだろうか。笑
これが、一見判りやすそうに見えながら、実に好き嫌いの激しい作曲家という
存在理由になっているのではないだろうか?
フォーレの歌曲「愛の唄」あるいは「秘密」
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