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ドビュッシー2つのロマンスから「鐘」良い声で歌えていましたが、声質の扱いが単一的で表情に乏しいと感じました。
声量は充分あるし、声質も明るいのですが、発声のことだけに終わっているために、音楽や詩の内容と歌声との一致が感じられないのです。

曲を伴奏を弾きながら観察すれば、ドビュッシー初期の歌曲らしい、ベルエポックの流行に乗った、微妙なエスニック感と
ガレやランプミュシャの絵を想わせる、日本的でエスニックな当時のサロンでトレンドだった雰囲気が感じられます。
この曲をベルカントで頑張ってしまうと、少し違う感じだと思います。
ドビュッシーはベルカントのオペラアリア歌唱には背中を向けていたと思いますので。

声量を頑張らないで、軽めに明るく歌うことだけで良いと思います。
特に出だしのフレーズはピッチの高さを大切にされてください。

テンポの遅い速いよりも、In tempoを大切にすべきと思います。
発声を起因とするルバートよりも、刻みのはっきりしたテンポの方が判り易い音楽になります。
ただ、歌詞の内容とフレーズの描き方、というご自身で考える明快な意図があるのであれば、ルバートがあっても構わないと思いますが、発声のために動くのはおかしい、と思います。

フランス語は、私の教わった方法を教えました。ところどころ、発声に起因する癖を矯正して、明快なフランス語発音を指導したつもりです。
どうしても声のことだけを考えると母音発音が不明瞭になるのですが、彼女の場合どうやら脱力を旨とすること自体が、どこか暗い母音の響きというか表現になるようなのでした。

特にAやEなどの開口母音において、良い声ではありますが、どこか悲しいような暗い声の表現に聞こえます。
上唇をもっと使う発声で明るい響きになりますが、単に微笑む顔になるだけでかなり変わるでしょう。
それでも力が入るのは仕方がありません。
慣れないことをすれば、最初はどうしても力は入れてしまいますが、それに慣れないことには新しいことは始まりませんので。

次の「星の夜」も同じ声の表現だと思います。聴いていて幸せな感じの声の表現になるべきでしょう。
明るく歌ってください。
冒頭のフレーズのEtoileの譜割とVoileは同じやり方に統一すべきでしょう。

Defunt parfum など、oeの鼻母音は、Eの鼻母音式に統一してもらいました。

プーランク「愛の小道」テンポですが、冒頭の短調の節は四分音符100くらいで、中間部のワルツは120位が良いと思います。特に中間はワルツのテンポ感が重要ですので、これm声のためのテヌートやルバートは避けるべきでしょう。